介護を続けることも、施設に入れることもできない…うつ病の夫(94)が認知症の妻(89)を殺害する事件も→「介護疲れ」が殺人に発展する日本のヤバさ
2025年5月3日(土)7時0分 文春オンライン
〈 「どこの施設でも、職員が高齢化しています」労働者の平均年齢は50歳…若者がすぐやめてしまう「介護業界」の深刻 〉から続く
「団塊の世代」が全員75歳以上になる2025年は、「介護崩壊元年」とされるが、現場ではすでに崩壊は始まっている…。ここでは老老介護の末に、殺人事件にまで発展した事例を紹介。なぜ長年、連れ添った家族を殺める高齢者が続出するのか? ノンフィクションライターの甚野博則氏の最新刊『 衝撃ルポ 介護大崩壊 お金があっても安心できない! 』(宝島社)より一部抜粋してお届けする。(全2回の2回目/ 最初 から読む)

◆◆◆
89歳の妻を94歳の夫が殺害
問題が山積しているのは施設だけではない。介護をめぐる現場では、自宅で高齢者が高齢者を介護する例が増え、老老介護が引き金となって事件に発展するケースも少なくない。例えばこんな事件が起きている。
北海道札幌市で当時89歳の妻を殺したとして、94歳の夫が逮捕された。事件が起きたのは2023年11月。年下の妻は約4年前から認知症を患っていたという。妻の介護にあたっていた夫は、介護疲れからうつ病を発症。
介護を続けることも、施設に入れることも難しいのではないかと将来を悲観し、妻の首に紐を巻きつけることを選んだ。夫は数分間にわたり妻の首の紐を絞め、その後、自殺を図るが死にきれなかった。翌日、自ら警察に通報し逮捕された。
さらに、こんな事件も起きた。
「母親の首を絞めて殺しました」
そう言って女性が110番通報したのは2024年7月の午前7時前だ。警察が東京都立川市の住宅を訪れると、102歳の母親が寝室のベッドで倒れていたという。通報した娘は当時70歳。母親が自らポータブルトイレに移動することができなくなり、体重が重い母の介助を娘が行うようになっていた。娘は警察の調べに対して「介護がきつくなって殺した」と肩を落とした。
同年9月には、北海道北見市でもこんな事件が起きている。
介護に疲れて94歳の妻を殺害
「妻を殺めてしまいました」
そう言って交番に出頭してきたのは、81歳の男性だ。近くの集合住宅に夫婦で住んでいたこの男性が、94歳になる妻を殺害し逮捕された。妻はベッドに仰向けになったままの状態で見つかり、死後数日間放置されていたという。男性は警察の調べに対して「介護が疲れた」と犯行の動機を話している。
これらは老老介護の末に、最悪な結末を迎えた一例だ。こうした報道は近年、後を絶たない。もちろん事件にまで発展しなくとも、すでに極限まで追い詰められている高齢者が今も多くいることは想像に難くないのだ。
(甚野 博則/Webオリジナル(外部転載))
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