アウディの新型「Q4 e-tron」モーター性能が大幅に向上、後輪駆動が本領発揮するSUV

2025年5月9日(金)11時40分 読売新聞

クーペのフォルムを持つハッチバック

 ドイツ・アウディのSUV(スポーツ用多目的車)「Q4スポーツバック45 e-(イー)tron(トロン)」に試乗した。昨年12月に発売された新型車で、前型車にあたる「同40 e-tron」を大幅に改良し、電気モーターの性能向上や航続距離の延長などを施している。

 アウディのモデルは6種類に分類され、アルファベットで表される。例えば、Aはベーシックなモデル、SはAを基にしたスポーツ仕様タイプなどだ。このクルマのQはSUVを示している。また、アルファベットの後の数字が大きいほど、ボディ(車体)やエンジン排気量のサイズが大きくなる。Qシリーズの中でQ4は下から三つ目の車種で、国内市場で人気のコンパクト(小型)SUVのカテゴリーに入る。さらにe-tronは電気自動車(EV)モデル、スポーツバックという名称はクーペのフォルムを持つハッチバックを表している。

Qシリーズ共通のオクタゴン(八角形)グリルを採用

 まず外観から見てみよう。フロントグリルは、アウディ特有のシングルフレームグリルだ。大きな開口部が特徴で、特にQシリーズではオクタゴン(八角形)グリルを採用していて、このクルマもその形状だ。ガソリンエンジンの場合、フロントグリルはエンジン冷却水を冷やすラジエーターへの空気の取り入れ口で、格子状の網などで、飛び石等によるラジエーターの損傷を防ぐ役割がある。このクルマはEVなので、空気を取り込む必要はないため実際は開口していないが、デザインは伝統を継承している。フロントグリルは外観デザインで一番目立つ場所なので、各社とも自社のクルマということが一目でわかるデザインを取り入れている。

最高出力は40%増、トルクも75%増と大幅に性能向上

 後輪駆動の電気モーターは、前型車より最高出力(数値が高いほどスピードを出しやすい)が40%増、トルク(モーターの軸を回転させる力を示し、数値が高いほど加速性能などが向上)は75%増になり、性能は大幅に向上している。

 また、出力が向上したにもかかわらず、1回の充電で走行できる距離は19キロ延びて、613キロ(カタログ数値)となっている。

 アウディというと、ガソリン車では独特の四輪駆動技術「クアトロ」と前輪駆動(FF)が主体だった。しかし、EVでは「クアトロ」に加えて後輪駆動を選択している。FFのメリットは、部品点数が少ないため、室内が広くできるとともに製造コストも抑えられることだ。車体前部にあるエンジンから後輪へ駆動力を伝える部品が必要ないためだ。それにより車体重量も軽くなるから燃費も向上する。このため、小型車を中心に多くの車種でFFが採用されている。

 一方の後輪駆動のメリットは、操縦安定性が高く、瞬発的な加速性能に優れている点だ。クルマは加速時には車体後方に荷重が移動するため、後輪駆動の方が大きい馬力を効率よく伝えることができる。ガソリンエンジンよりモーター性能が向上しているEVの場合、後輪駆動の方がその性能を発揮できると判断したのだろう。

車体重量は2トン超も、後輪駆動により軽々と加速

 実際に運転してみると、後輪駆動のメリットを実感する。スタートでアクセルを軽く踏むだけで軽やかに動き出す。加速もスムーズで、重い電池を積んでいるため車体重量は2トンを超えるのだが、それが軽々とスピードを上げていく。後輪駆動は直進安定性がFFより劣るという指摘もあるが、このクルマは不安定さを感じなかった

 回生ブレーキの強さは、Bモードを含めて4段階に設定することができる。Bモードは回生ブレーキのレベルを最大にしたもので、アクセルペダルだけで速度調整できるワンペダル走行に近い運転が可能だ。ただし、完全に停止するにはブレーキペダルを踏んでの操作が必要になる。

 逆に回生ブレーキのレベルを弱くすれば、ガソリンエンジン車に近い感覚で運転することもでき、ガソリン車からの乗り換え時でも苦にはならないだろう。

EV専用車台「MEB」を採用し、Q5よりも長い室内長に

 プラットフォーム(車台)は、アウディを傘下にするフォルクスワーゲン(VW)のEV専用車台「MEB」を採用している。「MEB」はホイールベース(前輪と後輪の間の空間)を長くとることで、広い室内空間とともに電池を搭載するスペースも確保している。このため、このクルマの室内長はワンサイズ大きいガソリン車のQ5よりも長くなっているほどだ。

 クーペのフォルムなので、後席は屋根部分が低くなるものの、車高も低めに調整されているため、座った場合でも頭の上に十分な余裕がある。ただ、ひとつ気になったのは、後席では風切り音や路面の摩擦音が目立ったことだ。前席ではこれらの音にほとんど気がつかなかった。前席が静かなだけに気になったのかもしれない。もちろん問題になるほどの音ではない。

 EV専用車台と後輪駆動、ともにEVにふさわしい要素だと実感したクルマであった。(デジタル編集部 松崎恵三)

【仕様・主要諸元】
(試乗したグレード「Q4スポーツバック45 e-tron Sライン」の場合)
 ▼全長・全幅・全高(ミリ) 4590・1865・1600
 ▼最高出力(kW)     210
 ▼バッテリー容量(kWh) 82
 ▼価格 767万円(オプションは除く)

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