原油先物の下落傾向は続くのか?
2025年3月2日(日)8時52分 財経新聞
NY原油先物は、2月25日に70ドルを割り込み、年初来安値を更新した。北海ブレントなども下落傾向が続いている。
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1月にも、トランプ氏が米大統領就任後に石油輸出国機構(OPEC)やサウジアラビアに原油価格引き下げを求めたことで、下落する場面もあった。
ガザ地区でのイスラエルとイスラム組織ハマスとの停戦合意へと協議が進み、3年にも及ぶロシアとウクライナの紛争も早期停戦へと向かっている。
原油高となっていた地政学リスクも軽減されつつあり、原油安へと向かうのだろうか?
●地政学以外の原油を取り巻く環境
トランプ氏が掲げる関税強化が輸入原油にかかっても、それが国内の精製業者と政府の収支に転嫁されるだけで、消費者価格にまで影響を及ぼすかは未知数である。
トランプ氏が就任以来主張してきた米国の原油増産も、原油価格の下落圧力として燻っている。
一方で、2月の米消費者信頼感指数が悪化しており、足元の景気の悪化を示す指標が最近出てきている。
米国の原油在庫が増加すれば、原油先物は下落し、減少すれば上昇するなど、神経質な展開が続いている。
●停戦が進まなければ再び上昇も
やはり、ガザ地区とウクライナの2つの紛争が、原油先物価格を大きく動かす要素であることは間違いない。
ガザ地区の第1段階の停戦合意は、3月1日に設定された期限が延長されるとみられ、恒久的な停戦を目指す第2段階の協議を目指す。
ハマス側は人質の解放、イスラエル側は刑務所に収容されているパレスチナ人の釈放を求めており、交渉は一筋縄ではいかない。
ウクライナ紛争では、トランプ氏とウクライナのゼレンスキー大統領との会談が破たんに終わり、懸念材料が増した。トランプ氏がロシア・プーチン大統領との関係を優先し、ウクライナ抜きの一方的な交渉を進めているとの批判もある。
現状2つの戦争が無事に停戦合意される前提で原油先物が動いている感があるが、その保証はない。
先行きに不透明感が強まれば、WTI原油先物も再び70ドル台、75ドル台へと一気に上昇する可能性もあるだろう。