夫が80歳になったのを機に免許証を返納。バスで買い物に出かけた帰り道、マイカーのありがたさを痛感しながらひと休みしていると一台の車が…
2025年5月28日(水)12時30分 婦人公論.jp
車で通り過ぎていたら気づけない風景だ…(写真:stock.adobe.com)
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助けてくれたのは
長年、マイカーを運転してきた夫が、80歳になったのを機に免許証を返納した。こうなると、少々重い荷物も人力で運ばなくてはならない。
先日、バスで買い物に出かけた帰り道でのこと。なるべく出かける回数を減らしたい私たちは、たくさんの食材を買い込んだ。夫と手分けして両手に袋を提げ、バス停から自宅に向かって歩みを進める。
しばらくすると、夫婦どちらからともなく「休もうか」と言って、道端の青草の上に荷物を下ろした。
マイカーのありがたさを痛感しながらも、少し高台になっているその場所から見える町の様子は、なんてことはないはずなのに新鮮に感じた。車で通り過ぎていたら気づけない風景だ。不便だけれど、いいこともあるんだなと思い直す。
しばらくそうしていると、そばに乗用車が止まった。中年の男性が運転席から降りてきて、「お運びしますよ」と言うではないか。こちらが恐縮しているうちに、手際よくわれわれの荷物を助手席に積み込んでくださる。
町内でたまに見かける程度で、名前も知らない方だった。お言葉に甘え、われわれ夫婦も後部座席に乗せてもらうことに。
自宅まで送り届けてくれた別れ際、男性は頭を下げながらこう言った。「実は以前うちの母が、あなたさまに家まで送っていただいたことがあるんです」。
そう言われれば、と思い出す。夫の運転で車を走らせていたら、老婦人が、ちょうど今日の私たちのように坂道でひと休みしているのを見つけて、自宅までお送りしたことがあったのだ。
因果はめぐる……。小さな恩返しに、胸があたたかくなった。
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