「イギリスは特別」トランプ関税初合意 自動車関税引き下げに鉄鋼・アルミは0% 日本との差はどこに?【サンデーモーニング】

2025年5月11日(日)15時40分 TBS NEWS DIG

トランプ関税をめぐる各国の交渉で、最初に合意にこぎ着けたのはイギリスでした。

そこに日米交渉のヒントはあるのでしょうか?

145%→80%?中国への関税は・・・

アメリカトランプ大統領(9日)
「中国への関税は80%が妥当かな。ベッセント財務長官次第だ」

金曜日、SNSに、こう投稿したトランプ大統領。“145%”にまで引き上げた中国への関税は、80%まで下げるのでしょうか。

ベッセント長官と中国の副首相による初めての協議も昨日から開始。これに先立ち、トランプ関税でいち早く動きがあったのが…

アメリカ・トランプ大統領(8日)
「イギリスとの画期的な貿易協定が合意に至った」

8日、イギリスとの関税交渉がまとまったのです。25%の追加関税を課された自動車については、10%への引き下げで合意。スターマー首相はさっそく、自動車工場で成果をアピールしました。

イギリス・スターマー首相
「歴史的な取り引きの基本部分についての合意に達した。イギリスの企業と数千の雇用を守るものだ」

自動車関税の引き下げは日本にとっても“最大関心事”の一つ。トランプ氏は日本に対しても譲る気はあるのでしょうか。

世界に先駆け、いち早くトランプ関税をめぐる交渉が妥結したイギリス。25%の追加関税が課されていた自動車については、年間10万台までは10%に引き下げられることとなりました。

この10万台は、イギリスからアメリカへの輸出台数とちょうど同じ規模。日本も今後の交渉によっては同様の対応を引き出せるのでしょうか。

しかし、トランプ氏はーー

「特別な関係だ」米英の合意成立を受け日本は・・・

アメリカ・トランプ大統領(8日)
「彼ら(イギリス)とは特別な関係だ。自動車では同じ取引はしない」

イギリスの高級車ロールス・ロイスを例に挙げ、こう続けました。

アメリカ・トランプ大統領(8日)
「非常に特別な車で、生産台数も非常に限られている。数百万台を製造するモンスター級のメーカーではない」

イギリスは他にもジャガーやランドローバーなどを輸出していますが、高額な車種が多くアメリカのメーカーとの競合は限定的だというのです。

一方、幅広い価格帯の車を手掛けるのが日本のメーカー。輸出台数は年137万台に上り、9.6万台のイギリスとは桁が違います。

イギリスが勝ち取った自動車関税の引き下げについて、武藤経産大臣はーー

武藤容治経産大臣(9日)
「我々としても参考になる部分があるか、見極めていかなきゃいけない」

イギリスとの交渉から、日本が参考にできる要素はあるのでしょうか。

赤沢大臣「見直しを求める立場に変わりはない」

膳場貴子キャスター:トランプ関税の交渉で、初めて合意に達したイギリスのケースを改めて押さえていきます。

杉浦みずきキャスター:トランプ関税を巡るイギリスの交渉ですが、元々アメリカが突きつけていたのは、▼自動車の追加関税が25%▼鉄鋼・アルミ関税が25%▼相互関税は一律10%でした。

これに対し、イギリスは▼牛肉などの輸入拡大や、▼ボーイング機100億ドル相当の購入などを提示し、▼自動車関税は「年間10万台まで」という条件付きで、10%に引き下げ▼鉄鋼アルミについては関税0%にすることで合意しました。

相互関税については一律10%のままとなっています。

ここまでスムーズに交渉が進んだ背景と指摘されているのが、アメリカとの貿易収支の状況です。貿易でアメリカはイギリスに対し、1.7兆円の黒字です。一方でアメリカが、10兆円の貿易赤字を抱えるのが日本。相互関税については、イギリスの倍以上の“24%”を突きつけられています。

赤沢大臣は「一連の関税措置について、見直しを求める立場に変わりはない」と話していますが、厳しい交渉が続きそうです。

膳場キャスター:イギリスと日本は、対米貿易の内容がだいぶ違うので状況は違うと思いますが、日本の取るべきスタンスというのは、どうなのでしょうか。

寺島実郎さん:まず見えてきたことを確認していきたいですね。イギリスというのは、アメリカにとって旧宗主国です。つまり「親兄弟でも“ディール”の対象なんだ」ということを世界にまず見せつけた形になります。

2国間で断ち切ることにより、多国間だとか、グローバルなルール形成などに対して「トランプ2.0は関心ない」ことを確認してきている。

世界のリーダーとしてのアメリカが、退場しているシーンを我々は見ている。世界の流れの中で、アメリカがものすごい勢いで孤立そして失望を受けてる。

そういう中で、日本が取るべきスタンスについてです。そのキーワードは「検証」と「構想力」だと思っています。検証というのは、トランプ氏が突きつけてきている対日批判などに関してです。

例えば自動車について「日本には非関税障壁があって、アメリカの車が入れない」と言っていますが、ビッグ3と呼ばれるGMや、フォードが、そんな無能力な会社なのか。

競争力の差で、去っていったというのが本当のところだと思っています。日本としては、ビッグ3が「なぜ自動車分野で日本に入れなかった」と総括しているのかということを、考える必要があると思います。同時に日本のメーカーにも、そのことを問いただし、「それを1つの交渉のベースにしよう」という「検証」についての冷静な対応というのが1つです。

次に構想力についてです。アメリカにとってプラスになることを、日本側がどれだけ「構想力」を持って提示できるか。

「アメリカが潜在的に期待してることは何か」ということを考えて、“日米共同プロジェクト”など、日本にしかできない未来志向のプランを実現していくことです。

例を挙げると…

・造船業に対する日本のサポート
・航空業界、ボーイングなどに対するサポート
・日本の誇るリニアや新幹線の技術について

日本のMRJという中型ジェット旅客機などで蓄積した技術を携え、世界の航空産業に1歩踏み込む提案ができると思います。またアメリカは、自動車と飛行機に交通体系依している部分があります。

例えば、ボストン〜ワシントンまでの高速交通システムなどに参画していけると思います。アメリカとプラスになることに踏み込むことが、今後のカギだと思います。

膳場キャスター:打開策があるということですね。現段階では、日本の自動車産業が置かれた厳しい状況に変わりはなさそうですね。

ジャーナリスト元NHK解説委員山本恵子さん:愛知県には、トヨタ自動車の本社や工場があり、自動車産業の集積地です。今回のトランプ政権による追加関税で、自動車に25%となり本当に厳しい状況になるのではないかという受け止めです。

愛知県の地元の銀行が、トヨタの取引先の部品メーカーに行った「今回の関税についてどれぐらい影響があるか」という調査の報道では▼マイナスの影響があるだろうという方が約16.5%▼現時点で影響が分からないという方が約63.8%ありました。

日々状況が変わるので、3回目の交渉の行方に注目するというところが1点。自動車産業というのは裾野が広いので、今回中小企業にまで賃上げの流れが来た中で、地元の経済への影響というもの、すごく大きいかなというふうに感じています。

TBS NEWS DIG

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