北朝鮮社会に現れた「新式の男」と呼ばれる珍しい存在

2025年5月28日(水)17時0分 デイリーNKジャパン

北朝鮮の女性の一日は非常に忙しい。


朝は家族の食事の用意から始まる。インスタント食品などが発達しておらず、すべては手作りだ。洗濯を終えると、今の季節は農場に足を運び、「田植え戦闘」の手伝いをしなければならない。午後2時になれば市場が開くので、商品を持って商売に行く。市場は午後7時に閉場することになっているが、実際は8時過ぎまで商売を続けることも多い。


一方で男性は、国から割り振られた職場に出勤するものの、人によっては特に仕事もなく、ろくに給料ももらえない。妻が働いて儲けているからこそ餓死せずに生きていけるのだ。それにもかかわらず、男尊女卑と亭主関白の風潮が強い中、そんな身の上にあぐらをかいている向きも少なくない。


経済的地位は女性の方が上でも、社会的地位は男性のほうが上という状況が依然として続いているが、徐々に変化が生じつつあると、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が伝えている。


平安北道(ピョンアンブクト)の情報筋は、「新義州(シニジュ)の市場には、夕方になると市場にやってきて、妻の商売道具運びを手伝う夫が増えつつある」と伝えた。


女性たちは午前中、農村で田植えを行い、午後2時からは市場で商売を始める。閉場時間の午後7時になっても帰ろうとせず、一つでも多く商品を売ろうとしていると、あっというまに午後8路を過ぎてしまい、そこからようやく片付けを始めるそうだ。


商品や商売道具を市場に置いておこうとすると保管料を支払わなければならない。大した儲けのない人々は、一切合財自宅に持ち帰るが、中には迎えに来て運ぶのを手伝ってくれる夫もいる。それを見た女性たちの間からは「羨ましい」との声があがる。


咸鏡南道(ハムギョンナムド)の情報筋も、新浦(シンポ)の市場では、重い商売道具を市場まで運び、夜には迎えに来て運ぶのを手伝う男性の姿をしばしば見かけると述べた。


北朝鮮の女性にとってこの時期は最もつらい。午前中は田植えを強いられ、午後からようやく商売を始めて、なんとかして収入を確保し、夜遅くになってようやく帰宅できる。


生活苦の続く北朝鮮の治安は決して良好とは言えない。電力不足で帰り道は真っ暗だ。峠道など、人通りの少ないところで強盗に襲われる女性も少なくない。夫が迎えに来てくれることは、防犯の面でも安心だろう。


妻の商売を手伝う夫の話を妻から聞き、自分も手伝いに行くようになった夫も少なくないとのことだ。それだけでなく、自宅で食事の用意をしてくれる夫もいて、「新式の男」と呼ばれている。


だが、女性の仕事を手伝うのは「沽券に関わる」と考える「旧式の男」も数多くいるようで、妻から「手伝って欲しい」と言われたのに、「恥ずかしくてそんなことできるか」と返してしまい、喧嘩になることもあると情報筋は伝えた。

デイリーNKジャパン

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