「ボクシングで最悪の決定」前代未聞の膝つき→ノーダウン 絶対王者デービスへの“疑惑の判定”が波紋「奇妙なシーンだ」
2025年3月3日(月)5時30分 ココカラネクスト

ローチの強烈な一打にふらつき、コーナーに戻ろうとするデービス。(C)Getty Images
まさに前代未聞の光景だった。
物議を醸したのは、現地時間3月1日に米ニューヨーク州ブルックリンのバークレイズセンターで行われたボクシングのWBA世界ライト級タイトルマッチでの一幕だ。
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王者ガーボンタ・“タンク”・デービス(米国)が、WBA世界スーパーフェザー級王者のラモント・ローチ(米国)の挑戦を受けた一戦は、判定の末にドローで決着。初の引き分けに持ち込まれた絶対王者が何とか防衛を果たしたのだが、その内容は批判の的となっている。
とりわけ問題視されているのは、9回の攻防だ。ローチの左パンチを浴びた直後に顔を気にしてリングに膝をつくような仕草を見せたデービスはコーナーに直行。セコンドにタオルで頭をふいてもらう異例の振る舞いを見せた。
膝をついたために一度はカウントを始めたレフェリーだったが、最終的にダウン判定は取らず。これにはニューヨークの観客たちも騒然。試合は継続されたが、判定結果を含めて波紋を呼ぶ場面となった。
試合後にブーイングを浴びたデービスはリング上でのフラッシュインタビューで「ブーブー言うなよ。俺は2日前に髪を切ったんだ。そこで彼女(美容師)がヘアグリースを付けたんだけど……な、分かるだろ、髪が(汗で)濡れたときそれが顔まで落ちてきて、目が焼けて痛かったんだ」と説明。あくまで膝つきがダウンではなく、髪に付けた整髪剤が原因であるとした。
ただ、ローチ自身が「あれはダウンだ。ごちゃごちゃ言いたくないけど、俺は勝っていた」と言うように、被弾した直後にふらついたようにも見えたデービス。ダメージは明らかであっただけに、レフェリーのジャッジを含めて批判が殺到した。
注目度の高い一戦だっただけに現役戦士たちからも厳しい声が飛んだ。
現WBA・WBO暫定世界スーパーウェルター級統一王者のテレンス・クロフォード(米国)は自身のXで「膝をついたのに、審判がダウン判定を取らなかったのを俺は観た事がない。審判は今夜のためにルールを忘れたに違いない」と皮肉。また、元WBC世界ライト級暫定王者のライアン・ガルシア(米国)もXで「あのノックダウンをコールしないなんて、ボクシング界で最悪の決定だ。こういうことはボクシングの見栄えを悪くする」と酷評した。
当然ながら鵜の目鷹の目の記者たちからはデービスを断じる意見が相次いだ。
米メディア『BSO』のロバート・リッテル記者は「自分はボクシングを15年も取材している」と前置きした上で「ボクサーが3発もタイムアウトが必要だと自己判断をし、相手に背を向け、コーナーで軽く拭いてから、何もなかったかのように再び戦いに戻るのを見たことがない」と糾弾。
さらに英スポーツ専門ラジオ局『talk SPORT』のジョージ・グリンスキ記者は、9回に起きた問題の場面を「論争を巻き起こす奇妙なシーンだ」と指摘。「審判はダウンと判定することもできたし、そうすべきだった。その判断が全てをひっくり返した」と問題視した。
試合後に「あれがダウンだったら俺の勝利になっていた」と切実に訴えたローチに対して、デービスは「ニューヨークでもう1回やろう」と再戦を要求。それに対しても会場からはブーイングが巻き起こり、王者はすっかり“悪役”と化していた。
[文/構成:ココカラネクスト編集部]