阪神にとって儲けゼロ...それでも独立リーグと交流試合をする狙いとは?
2025年4月17日(木)14時0分 スポーツニッポン
確かに、阪神効果は大きかったようだ。16日に阪神のファームが独立リーグ・四国の高知と高知市内で交流試合をした。ファイティングドッグスによると、平日ナイターで1228人も入ったのは、異例だそうだ。
この日に限っては、阪神が7—1で勝利した試合内容は、それほど大きなみどころではない。当てるべきスポットライトは、独立リーグならではの“手づくり感”。試合前と試合後に、阪神ナインがハイタッチなどでファンと交流するのは、ウエスタン・リーグでは見られない光景。試合中に実施された企画、チャレンジャーがフライ(ハイボール)をキャッチすれば場内のハイボールが半額になるイベントも面白かった。4回には森木—嶋村の高知出身バッテリーが実現し、場内が沸いた。
阪神は今年から球団内に「野球振興室」を新設した。野球ファンと野球人口拡大にかかわる事業を専門にする部署で、今回の交流試合はその流れで実現したものだ。といっても独立リーグとの連携は急に始まったものではなく、これまでにも日本海リーグの石川、富山のほか、四国の徳島とも同じような交流試合をしている。地方で興行を打ってファンを開拓するのではなく、各地域に存在する独立リーグに力を貸すことで共存共栄を図っている。
実際、阪神と手を組むメリットは大きい。ファームとはいえ、虎戦士の知名度は高く、集客材料になった。主催した高知の担当者は「興行として経営的にプラスです。それだけではありません。阪神の同年代の2軍選手と試合ができる。上のレベルを実感できることで、選手はさらなる刺激を受けたと思います。お客さんは県外からも来てくれて、観光面を含めてプラスだと思います」と語った。
野球人口拡大の面では、平日夜のゲームが足かせになったようで、子育て世代層の足は思ったより鈍かったそうだ。ただ、シーズン中のため、開催日ばかりは選べない。昨秋の安芸キャンプ中に実施した阪神—高知の合同野球教室のような野球の魅力発信の場が、この先設けられるだろう。
阪神2軍は5月28日に徳島と、6月10日に石川、11日に富山と敵地で交流試合をする。昨年までの数字が示すように、タイガースが来るとお客さんがものすごく入る。営業的な儲けは、今回の高知戦と同様に、基本的に相手の懐に入る。球団の利益はゼロ。かつ、遠出をしてでも試合をするのは、恐ろしいスピードで進む国内の人口減少への危機感にほかならない。やる人が少なくなれば、見る人も少なくなる。利益度外視の交流試合は、数十年先を見据えた野球界への投資となのだ。(阪神担当・倉世古 洋平)