2人退場!9人でも勝利をもぎ取った歴代Jリーグクラブ4選

2025年4月26日(土)18時30分 FOOTBALL TRIBE

Jリーグ 写真:Getty Images

4月20日、AFC U-17アジアカップの決勝が行われ、U-17ウズベキスタン代表が前半のうちに退場者2人を出す展開ながらも、U-17サウジアラビア代表を2-0で破り、2012年以来2度目の優勝を果たした。


同試合、ウズベキスタンは何とかスコアレスで前半を乗り切り、後半4分に相手DFのハンドリングによるPKを決め先制に成功。後半25分にはGKからのキックがFWサドリディン・ハサノフに通ると、そのままドリブルでDFをかわし、最後はGKの股の間を抜いてみせた。決勝点を決めたハサノフは同大会のMVPに輝いたが、この勝利は残された9人が大奮闘して得られた結果だ。


「2人退場」という絶望的な状況から勝利を収めたケースは、非常に少ないながらもJリーグでも前例がある。ここでは2人退場によって「イレブン」から「ナイン」となりながらも勝利をつかんだJクラブを紹介したい。




東京ヴェルディ サポーター 写真:Getty Images

東京ヴェルディ


2005年8月27日:J1第22節鹿島アントラーズ戦/味の素スタジアム2-0


2005シーズンのJ1第22節東京ヴェルディ対鹿島アントラーズは、両軍合わせて警告10枚、退場者3人を出した大荒れの試合となった。先に退場者を出したのは鹿島で、前半17分、37分と立て続けに警告を受けたDF岩政大樹が退場。しかし当時の鹿島トニーニョ・セレーゾ監督は代わりのDFを投入することはせず、MF青木剛を1列下げることで対応した。


しかし後半、東京VのFWワシントンが6分、12分と立て続けに得点すると、セレーゾ監督はFW鈴木隆行、MFリカルジーニョ、FW深井正樹と攻撃のカードを次々と切る。


10人になりながら猛攻を仕掛ける鹿島に対し、受けに回ってしまった東京Vは、後半18分にMF戸田和幸が2枚目の警告で退場となり数的同数に。さらに44分には途中から出場したMF玉乃淳も退場し9人になってしまう。数的不利となったのが終了間際だったため、2点を守り切り完封勝利を収めた。


このシーズンの東京Vは、オズワルド・アルディレス監督が途中解任され、バドン監督(2020年死去)が引き継いだものの、この勝利以降全く勝てなくなる。12戦連続で勝ち星がないままJ2降格してしまった。鹿島にとっては気の毒だが、“最後の徒花”の犠牲となった形だ。




清水エスパルス 写真:Getty Images

清水エスパルス


2012年4月28日:J1第8節FC東京戦/味の素スタジアム1-0


2011年から清水エスパルスの指揮を執ったアフシン・ゴトビ監督2年目のシーズン。元スウェーデン代表MFフレドリック・ユングベリ獲得で話題を振りまいたが、戦力とはなれず、このJ1第8節FC東京戦もベンチ外だった。


清水だけで9枚の警告が出され、後半11分にFWジミー・フランサが、後半28分にはMFアレックスが立て続けに退場してしまう。


この時点でスコアはまだ0-0。現実的には何とか守り切ってスコアレスドローに持ち込めれば御の字の展開だったが、1人少ない後半22分の時点でFW高木俊幸とFW高原直泰を投入してしまっていたことで、ゴトビ監督は思い切った布陣を用いる。


4バックと3トップを維持した上で、中盤を守備的MFの村松大輔に任せた【4-1-3】のフォーメーションにし、意図的に間延びさせ、オープンな展開に持ち込んだのだ。


これに困惑させられたFC東京はマーキングにズレが生じる。その隙を突いた清水は後半32分、ワンチャンスをモノにしカウンターから高木がゴール。直後にDF平岡康裕を投入し、勝ち点3をゲットしてしまった。


ゴトビ監督は「9人以下にならないように願っていた。我々は11人でも10人でも9人でもいいチーム」と胸を張った。広大なスペースを1人でカバーした村松も「人数が減ってもプレスはできていた。人が足りないとは感じなかった」と語った上で、「数的不利になったので、人に付いても仕方がなかった。相手に食いつかずに、スペースを埋めることをみんなで意識していた。DFが粘ってくれていたので、それが大きかった」と振り返った。


FC東京サポーターからすれば、当時直近10戦で6勝4分けの“お得意様”の清水が相手。しかもホームで2人多い状態での敗戦は許されるハズもなく、味スタのゴール裏から特大のブーイングが飛んだことは言うまでもない。


鹿島アントラーズ 写真:Getty Images

鹿島アントラーズ


2007年11月24日:J1第33節浦和レッズ戦/埼玉スタジアム1-0


2007シーズン、5季ぶり5度目のJ1制覇を飾った鹿島アントラーズ。ここから5年もの長期政権を築くことになるオズワルド・オリヴェイラ監督初年度でもある。このJ1第33節浦和レッズ戦は、シーズン終盤11連勝で逆転優勝した勢いを感じさせる試合でもあった。


宿敵の浦和が相手で、しかも浦和も優勝の可能性を残し、加えてアウェイ戦だったこの試合。優勝するためには勝つしかなかった鹿島。この大一番が行われた埼玉スタジアムには62,123人もの大観衆が集った。


しかし気合が空回りしてしまい、DF新井場徹が33分と42分に立て続けに警告を受け、退場してしまう。前半のうちに10人となった鹿島だったが、浦和の猛攻を凌ぎ、FW田代有三のパスを受けたMF野沢拓也が右足でカーブを掛けたコントロールシュートで先制に成功する。


反撃に出たい浦和だったが、前半で負傷したMF平川忠亮に代わってDF細貝萌を投入していた。後半28分にDF相馬崇人に代わってMF小野伸二を入れるが、結果、交代カードを1枚残したまま試合を終えることになる。


鹿島の2人目の退場者は、田代に代わって入ったMF船山祐二だったが、後半44分だったことが不幸中の幸いだった。DFの控え選手がいなかったため、背番号10を背負うMF本山雅志が「サッカー人生で一度も経験がなかった」というDFラインに入り、懸命に守り切った。


試合終了のホイッスルが鳴ると、鹿島ベンチは狂喜乱舞。この勝利はACL(AFCチャンピオンズリーグ)出場を確定させただけではなく、J1初の通算300勝目でもあった。オリベイラ監督は「チームが結束していた。うれしく思う」と喜びをかみしめた。


一時は首位の浦和に2桁もあった勝ち点差は、この勝利で「1」となり、最終節で逆転優勝することになる鹿島。まさに優勝へのキーポイントとなる一戦だった。


しかし、試合後も納得のいかない表情を浮かべていたのは、退場した新井場と船山。新井場は「勝てたからよかったが、判定基準が分かりにくかった」と不満を口にした。ちなみにこの試合で主審を務めたのは、現在、審判委員長を務める扇谷健司氏だった。




ザスパ草津 サポーター 写真:Getty Images

ザスパ草津(現ザスパ群馬)


2004年12月15日:第84回天皇杯5回戦横浜F・マリノス戦/ユアテックスタジアム仙台2-1


関東リーグ1部を飛び級し、2004年からJFL(日本フットボールリーグ)に参加したザスパ草津(現J3ザスパ群馬)。年間順位で3位に入り、翌2005シーズンからJ2に参戦するのだが、Jリーグ参入を前にインパクトを与えたのが、その前年の天皇杯だ。


JFLシードとして2回戦から出場し順当に勝ち上がると、4回戦ではJ1セレッソ大阪を敵地、長居スタジアムで破り(2-1)、早速のジャイアントキリング。そして5回戦で待ち受けていたのは、2003年、2004年とJ1連覇を果たした横浜F・マリノスだった。


前年の2003年大会でも市立船橋高校に大苦戦(2-2 PK戦で勝利)した横浜FM。この頃から天皇杯で“やらかす”チームという有り難くないイメージを持たれ、それは優勝した2013年大会まで続いた。


この試合、横浜FMは浦和レッズとのJ1チャンピオンシップから中3日で迎え、ケガ人も多く、モチベーションを保つのも困難だっただろう。かと言って、2つカテゴリー下のクラブには負けるわけにいかないと、控えメンバー中心ながらも奮闘した。


しかし草津も、元日本代表GKの小島伸幸を中心にゴールを割らせない。試合は草津が前半29分、FW宮川大輔の得点で先制するが、後半29分にMF山口貴之を、後半39分にDF籾谷真弘を立て続けに退場で失ってしまう。


後半38分に横浜FMのMF奥大介の得点で同点にされていた草津は、何とか耐えて延長戦に持ち込む。PK戦狙いかと思いきや、今度は頼みの小島が負傷してしまう。交代枠を使い切っていたため、足を引きずりながらプレーを続ける小島。その姿を見て、草津のメンバーは燃えた。


横浜FMの猛攻に耐えた末にDF依田光正(現清水エスパルスコーチ)が延長前半11分にゴールデンゴールを決め、ベスト8進出を決めた。これで2戦連続のジャイアントキリング。しかも今度はJ王者を倒す大金星だ。


準々決勝の相手は、この大会で優勝することになる東京ヴェルディだった。しかし中3日で、2人が出場停止の草津。さすがに3戦連続ジャイアントキリングを演じる余力はなく敗退したが、この大会は同クラブを有名にした大会として記憶されている。




これらの試合は、圧倒的数的不利という極めて厳しい状況の中でも、チーム一丸となって戦術を変更し、限られた戦力で勝利を掴むという、サッカーの醍醐味を伝える好例と言えるだろう。

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