山本由伸を変えた“スタバ” 「エースの自信」を生んだド軍同僚キケの励まし「何言っているんだ。君は地球上で最高の投手だ」
2025年4月29日(火)6時0分 ココカラネクスト

今季はエース級の働きを見せる山本。その背景には、仲間の支えがあった。(C)Getty Images
「小さなエース」が声価を高めている。ドジャースの山本由伸だ。
メジャーリーグで2年目を迎えた山本はここまで順風満帆だ。去る4月25日に行われたパイレーツ戦では援護に恵まれずに2敗目を喫したが、ここまで6先発で3勝をマーク。防御率は両リーグトップの1.06、WHIP1.90、奪三振率11.38と堂々たるスタッツを残している。
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早くもサイ・ヤング賞候補としても名を挙げられている山本。そんな日本人右腕の進化には、同僚の支えがあった。米紙『Los Angeles Times』は、1年目からの変貌ぶりをリポートした記事内で、昨秋のポストシーズン序盤に苦悩していた舞台裏をまとめている。
山本は思い詰めていた。ポストシーズンを通して先発ローテの一角を任されるなど、チームからの抜群の信頼も得ていたが、「一貫性に欠け、何かが欠けているように感じていた」という。実際、パドレスとのディビジョンシリーズ初戦では3回5失点と大乱調。マウンドで精彩を欠く場面もあった。
そんな山本を目にし、「スターとしての威厳、少なくとも自己主張が欠けている」と見かねたのは、ドジャースのキケ・ヘルナンデスだった。パドレスとの第2戦を終えた直後、山本と通訳を宿泊するホテルのスターバックスに連れ立った33歳の名手は、2時間にわたってミーティングを実施。自信を失いかけていた日本人右腕と面と向かって話し合った。
同紙に対して「俺はヤマの考えが知りたかった。彼自身が投げる球にあまり納得していないように感じた」と語ったK・ヘルナンデスは、「彼がベストを尽くすためには、投げる球種にこだわる必要がある」と判断。山本に相手打線に自分の武器をどう配球するのがベストなのか、そして本人がどれだけ凄い投手であるかを共有した。
それでも、「納得が出来ずに、少し気おされていた」という山本に、こう言葉をかけたという。
「俺は彼に言ったんだ。『何を言ってんだ。君はすでに地球上で最高の投手の一人だ』ってね」
K・ヘルナンデスの熱き思いは、山本に伝染した。パドレスとの第5戦では5回を投げて、被安打2、無失点と好投。そのままワールドシリーズ制覇までのし上がったドジャースの快進撃を支えた。
スターバックスで何気なく開かれた“茶会”で、同僚とのケミストリーを深め、自信を掴んだ。それは米球界を席巻しつつある今季の活躍に繋がっている。もしも、あの時にK・ヘルナンデスが発破をかけていなければ、山本の心は折れていたかもしれない。
メジャー屈指の働きを見せる今季の山本。その快進撃はどこまで続くのかに興味は尽きない。
[文/構成:ココカラネクスト編集部]