ダブルヘッダーのモナコE-Prix、第7戦でブエミが6年ぶりに優勝。第6戦はローランドが制し今季3勝目
2025年5月6日(火)18時15分 AUTOSPORT web

5月3〜4日、2024/2025年ABB FIAフォーミュラE世界選手権“シーズン11”の第6&7戦モナコE-Prixがモンテカルロ市街地コースにて開催され、第6戦ではオリバー・ローランド(ニッサン・フォーミュラEチーム)が、第7戦ではセバスチャン・ブエミ(エンビジョン・レーシング)が優勝を飾った。
伝統的な市街地コースが舞台のモナコE-Prixは、シーズン8からF1と同じコースレイアウトで開催されている。基本的には道幅が狭く、追い抜くのが難しいとされるコースだが、昨年のモナコE-Prixでは197回のオーバーテイクが記録されており、フォーミュラEだけは例外のようだ。
今シーズンのモナコE-Prixは、初のダブルヘッダーであるだけでなく、さらに第6戦では第3戦以来となるピットブースト有りのフォーマットで行われる。
午前に行われた第6戦の予選では、テイラー・バーナード(ネオム・マクラーレン・フォーミュラEチーム)とローランドがファイナル進出。今季初ポールを狙うローランドだったが、アタックラップに入った直後の1コーナーでガードレールにヒットしてしまいノータイム。バーナードが2度目のポールポジションを獲得した。3番手にはダン・ティクトゥム(クプラ・キロ)が続いた。
続く29周の決勝レースは、曇天のドライコンディションだ。スタートでは、バーナードが先頭を維持し、後続も大きなアクシデントもなく隊列を形成する。
4周目には、早くもニック・キャシディ(ジャガーTCSレーシング)とゼイン・マローニ(ローラ・ヤマハABTフォーミュラEチーム)がアタックモードを使用する。キャシディは4分間のアタックモードで16番手から6番手に浮上し、戦略的にも大きな鍵となりそうだ。
8周目にアントニオ・フェリックス・ダ・コスタ(タグ・ホイヤー・ポルシェ・フォーミュラEチーム)が最終コーナーでクラッシュしたため、9周目にフルコースイエロー(FCY)が出された。
11周目にFCYが解除され、レース再開直後からローランドは、バーナードに仕掛けていくと、12周目にトップを奪う。ジェイク・デニス(アンドレッティ・フォーミュラE)もFCY解除直後に複数台を抜き、3番手に浮上する。
14周目にはミッチ・エバンス(ジャガーTCSレーシング)がマシントラブルで8コーナー手前でストップし、バーナードがローランドを抜いたタイミングで2度目のFCYが導入された。
翌15周目にFCYが解除後、すぐにアタックモードを使用したローランドが労せずトップを取り戻す。表彰台圏内のバーナードとデニスが16周目に、ローランドはアタックモードを終えた18周目にピットブーストを行う。
全台がピットブーストを完了した20周目。いち早くピットインしていたニコ・ミューラー(アンドレッティ・フォーミュラE)とキャシディがアンダーカットが成功し、トップ2に躍り出る。しかし、エネルギー残量が厳しいミューラーはアタックモードでもペースを出せない。キャシディもエネルギーセーブし、ずるずると後退してしまう。
24周目、6コーナー“グランドホテル・ヘアピン”でバーナードがキャシディと接触してストップ。レースに復帰はできたが、勝負権は失ってしまった。同周回にデ・フリースが先頭を奪うものの、25周目にアタックモードを使用したローランドが5番手から一気に追い抜き、翌26周目にトップを取り戻した。
2度のFCYによりアディショナルラップの1周が追加となるが、巧みなマネジメントでエネルギーを残していたローランドが逃げ切って今季3勝目を飾った。2位にはデ・フリースが続き、2022年のシーズン8以来となる表彰台を獲得。デニスはFCY解除時の違反で5秒ペナルティを科されていたものの、4番手に5秒以上の差を維持して3位となった。
一夜明け、一転して雨模様。第7戦は、今シーズン初のウエットコンディションとなった。午前中の予選は、コース上の水量も多く滑りやすい状況。ローランドとデ・フリーズで争うセミファイナル1では、ふたりとも1コーナー“サン・デボーテ”でコースオフするという珍事が起こるも、ローランドがファイナルへ進出した。
続くセミファイナル2は、ジャン-エリック・ベルニュとマキシミリアン・ギュンターのDSペンスキー同士で対決となったが、ふたりとも10コーナー“ヌーベル・シケイン”をショートカットしてしまい、まさかの両者ノータイムに。その結果、セミファイナル2では両者が脱落となり、唯一ファイナルへ進出したローランドが今季初のポールポジションを獲得した。
午後の決勝レースは、第6戦と違いピットブーストは行われないフォーマットだが、周回数は変わらず29周で争われる。雨は止んだものの、以前路面はウエットだ。
スタートは各車慎重な蹴り出しで、ローランドがホールショットを奪い、2番手にデ・フリーズ、3番手にベルニュが続く。序盤から半数以上のドライバーがアタックモードに入り、そのひとりのベルニュが5周目に先頭に立つ。
トップ10のほとんどが1度目のアタックモードを終えたなか、まだ使用していないローランドは2番手に留める。
7周目、ルーカス・ディ・グラッシ(ローラ・ヤマハABTフォーミュラEチーム)が8コーナー“ポルティエ”で止まりきれずにクラッシュし、FCYが出されたが、翌8周目にレース再開となる。
13周目にミューラーがトラブルで4コーナー“カジノ”でマシンを止めてしまい、セーフティーカー(SC)が導入される。これによりギャップが縮まり、折り返しを迎えた15周目にレース再開となる。
ローランドは、18周目に温存していた1度目のアタックモードを使用すると、1〜3周空けて上位陣も2度目のアタックモードに入り、周ごとにトップが変わる。ブエミは、22周目にトップへ躍り出ると逃げ切りを図り、2番手を3秒以上引き離す。ローランドは2度目のアタックモードで24周目に2番手まで取り戻すものの、ブエミとの差は約4秒先だ。
また、同周回には、アタックモードのタイミングを上手く遅らせることで14番グリッドから追い上げていたキャシディが3番手に浮上。FCYとSCによりアディショナルラップの1周が加わるも、ブエミはペースを落とさずに2番手と4秒以上の差を維持したまま最終ラップへ。
観客の拍手が響き渡るなか、ブエミはトップチェッカーを受けて6年ぶりに表彰台の頂点に立った。そして、自身の持つフォーミュラE最多優勝記録を14勝に更新した。
ローランドは2位と連覇こそ叶わなかったものの、この週末で大量のポイントを獲得し、2位との差を48点に広げてランキング首位をキープしている。3位にはキャシディが続いた。
フォーミュラE“シーズン11”の次戦の舞台は、東京だ。2回目にして、ダブルヘッダーにパワーアップした第8&9戦『東京E-Prix』は、5月17〜18日に江東区有明エリアの特設サーキットで開催される予定だ。