辻発彦氏 魚雷バットで打ってみた!93年首位打者が検証 このバットに合わせた打撃は絶対NG

2025年5月9日(金)5時30分 スポーツニッポン

 また、勝手にやってみました!日米球界で話題沸騰中の「魚雷(トルピード)バット」は実際、どんなものなのか。スポニチ本紙はSSK社の協力で実物を入手。93年に首位打者を獲得した元西武監督の辻発彦氏(66=スポニチ本紙評論家)に埼玉県所沢市の西武の室内練習場「プロスピ トレーニングセンター」で試打してもらい、その正体を分析した。(取材・構成=春川英樹、神田佑)

 【実演】SSK社の協力を得て用意した2本の魚雷バット。どちらも最も太い部分は公認野球規則にある「直径2.61インチ(約6.6センチ)以下」の範囲内の約6.5センチだが、先端にかけて形状が違うもの。1本は先端が直径約5センチで急激に細くなる「魚雷・細」。もう1本は先端の直径が約5.5センチで緩やかに細くなる「魚雷・太」。「うわ、凄い。こんなのあり?ちょっと見た感じ違和感あるなあ」と辻氏。実際に打ち始めると表情が曇る。「あれ?」「なんでだ?」。中堅方向へライナーを打つつもりが打球は遊撃方向へのゴロばかり。通常バットに戻すとひと振り目で奇麗なライナーが飛ぶ。また魚雷を手にしばらく打った後、分析が始まった。

 【分析1 特徴】最初、打球が全然上がらなかった。右打者なら三遊間あたりにボチョ、ボチョというような打球ばかり。重心が手元寄りで、さらに先端が細くて軽い分、ヘッドの返りが速くなるという感じ。だからあれ?あれ?と打球が引っかかった。ただ、確かに、同じ重さのバットなら魚雷の方が軽く振れる感じはする。

 【分析2 特徴】魚雷バットでいい打球を打つためには?と少しずつ試した。ヘッドが遠回りする打ち方だと打球が上がらない。ヘッドを返さないように打てば真っすぐ飛んでいく感じ。メジャーであれだけ本塁打が出たのは、棒みたいにバットのしなりを感じないで打つ打者が多いからかもしれない。そういう打ち方、ヘッドの利きが悪いバッターの方が試す価値があるかもしれない。逆に、大谷(ドジャース)なんかはグッとバットが体に巻き付いてくるタイプだから、合わないんじゃないかな。

 【分析3 特徴】先端が細い分、先に当たった時は力が伝わらない。少しでも先で打つとバットが投球にぐっと押され、負けるような感じ。手はしびれるだろうし、折れちゃうんじゃと不安になる。通常バットならヘッドの重さとしなりで、最後にパチンとバットが返ってボールに力を伝える感じが出るが、それがない。あとは何ミリ勝負という世界で、極端な話だと先が細い分、ファウルで逃げられないことも出てくるかもしれない。

 【総括】人によって全然、合う合わないがあると思う。“詰まってもいいや”というタイプで安心だなと思うバッターは使っていいかもしれない。確かにこのバットにして結果が良くなる選手が現れる可能性は十分あるし試す価値はある。ただ、このバットに合わせた打ち方をしようなんていうのは絶対にやめた方がいい。プロ野球選手は、数え切れないくらい振ってスイングがある程度できている。打率、ホームランの数とかは技術的なもの。バットを替えたからたくさん打てるなんてない。そのスイングで試してみてどうかというのが判断基準。要は、誕生日プレゼントの洋服みたいなもの。気に入ったら着るだろうし、気に入らなかったら着ない。そういう感じ!

 【取材後記】「66歳のおじいちゃんになって、ヨロヨロになるかもしれないけど試してみましょう」と言って始まった検証。そう言いながら辻氏は、150スイング以上いろいろな打ち方を試した。

 途中、1462安打を放った現役時代のようにバットを短く持った。短く持つ分「ヘッドを余計に重くしてもらっていた」という黄金時代の西武を支えたあの打撃フォーム。短く持ってもヘッドの重さを利用して打っていたといい、魚雷との相性は悪そうだった。

 それでも汗をにじませながら、大リーグでなぜ受け入れられたのかを探るべく試行錯誤して検証。「アップもなしに、ろくなスイングができなかったな」と言いつつ「でも、試すのは大事だね」と実体験できたことに満足そうだった。 (野球担当デスク・春川 英樹)

 ▽魚雷(トルピード)バット ミシガン大で物理学の教授を務め、昨季までヤンキースのアナリストだったアーロン・リーンハート氏(現マーリンズフィールドコーディネーター)が開発。バットの先端が細く、魚雷やボウリングのピンのような形状。従来よりも芯が手元側となっている。今季開幕からヤンキースのボルピ、チザムらが使用して本塁打を量産し、一躍話題に。日本プロ野球も4月11日の規則委員会で使用が容認された。

 ≪西武]源田が日本初使用≫日本のプロ野球で魚雷バットを初めて使ったのは西武・源田。4月18日のソフトバンク戦で三ゴロだった。初安打は阪神・大山で、同25日の巨人戦で初回に赤星から外角球を先制右前打した。

 初本塁打は中日の木下で5月5日のDeNA戦の3回に左越えソロを放った。6日には日本ハム・清宮幸がオリックス戦の6回に右越え3号2ラン、さらに先制適時二塁打を放ち7日の同戦でも1安打するなど、2試合で7打数3安打1本塁打3打点をマーク。

 「こんな効果てきめんなことあるのかと思いました。振りやすさはあるし、凄いバットが出てくる」と好感触も、新庄監督は「魚雷バットで打ったってことは、差し込まれてる打ち方だから良くはないよね」としている。

【SSK社の魚雷バット 各選手に届き始めている状況】

 今回の検証企画のために魚雷バットを提供してくれたのがSSK社。担当者によると国内では現在「グリップなどそれぞれのモデルに合わせたバットが徐々に出来上がり、各選手に届き始めている状況」だという。

 国内でも使用可能となった4月上旬の段階では、バット工場でデータを元に試作品を作製。そのサンプルで各選手が試し打ちをしたもののグリップの形状などが自分のモデルと違うことなどから、反応は薄かったという。それでも「スイートスポットが広がってバットコントロールはしやすいという声は多かった」と説明。今後は「各選手に合わせたバットを使ってもらって、バランス、重さ、グリップの太さなどを微調整していくことになる」という。

 一方でシーズン中ということもあり「“今は感覚が変わっちゃうので”と使わない選手も多い」と説明。「シーズンが終わってから来年使うかどうか、改めて検討する選手も出てくると思う」としており、準備を進めていくという。

スポーツニッポン

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