「ドラ1にふさわしい」仙台育英の名将・須江監督が語る早大・伊藤樹の未来、小宮山監督への感謝
2025年5月19日(月)22時51分 スポーツニッポン
◇東京六大学野球春季リーグ戦 第6週第2日 早大1—0明大(2025年5月19日 神宮)
今秋ドラフト候補の早大の最速152キロ右腕・伊藤樹投手(4年)が19日、明大2回戦でリーグ史上25人目(26度目)の無安打無得点試合を達成した。
負ければリーグ3連覇を逃す崖っ縁で5四死球ながらも打者32人を封じた。0—0の9回に味方がサヨナラ勝ちし、快挙達成で1勝1敗とした。100周年の節目を迎えた東京六大学野球リーグで令和初で、明大から達成は史上初。サヨナラ勝利での達成も史上初めてとなった。
仙台育英(宮城)の系列の秀光中軟式野球部の2年途中まで、そして仙台育英の3年間で伊藤樹を指導した恩師・須江航監督(42)が祝福の言葉を寄せた。(聞き手 アマチュア野球担当キャップ・柳内 遼平)
——教え子の早大・伊藤樹選手の試合は見ていましたか。
「仙台育英の監督室で8回からネット中継を見ていました。最後にレフトに飛んだ時は“あぁー!”とか“捕った、捕ったぁー!”とか言ってファンみたいに騒いでいましたね」
——史上25人目の偉業達成です。
「負けたら終わりの大一番。ここで絶対に勝つ、良いパフォーマンスを発揮するぞ、というところで100点満点に近い投球でした。しかも相手はアマチュア球界で最高レベルの明治大学野球部です。今日をきっかけに大きな自信をつけると思います。仙台育英の後輩たち、僕の励みになりますね」
——中学時代、そして高校時代も指導した伊藤樹投手。どんな子ですか。
「とても心の優しい穏やかな子。野球は上手かったんですけど、中1の時は苦しいことがあると泣いてしまうくらいの感じで、根性を出して頑張ることはちょっと苦手でした。元々、小学校の頃はキャッチャーをやっていましたが、安定したリリースができ、ストレートの質が良く、手先の器用さもあったので“キャッチャーにしておくにはもったいない。君が一番輝けるのはピッチャーだ”ということで投手転向を勧めました」
——“投手伊藤樹”としての成長をどう感じていますか。
「僕らはパフォーマンスを発揮させるためにいろいろな技術、フィジカルに関する知識を丁寧に、焦らずに教えてきました。小宮山監督が、高校時代に僕らが伝えきれなかった打者との向き合い方、スキルや理論を発揮するための根性などを叩き込んでくださったことで(伊藤樹の)プロ入りへの道につながりつつあると感じています。感謝しかありません」
——高卒プロを選択する道はあったのでしょうか。
「結局、高卒でプロから確実に指名をいただけるだけのパフォーマンスはありませんでした。一瞬の輝きみたいなものは当然、世代を代表するくらいの投手だったと思います。例えば、試合終盤でも140キロ後半を投げている日もあれば、140キロ出ない日もあるといったように本当の意味でのスキル、フィジカルが安定していなかった。となれば、育成やギリギリ支配下でプロに行くよりも4年間の時間をいただき、丁寧に自分をつくりあげた方がいい。早い段階で小宮山監督にオファーをいただきましたので、早稲田で修行できるならばその道で自分を磨いた方がいいという結論になりました」
——ドラフトイヤーの今年、伊藤樹投手の出力が上がってきているように見えます。
「プロの1軍で10年以上どんな役割も担うことができそうだ、と見れば今年の大学生の中で樹はかなり上位だと思います。現状のドラフト1位候補には、メジャーリーガーになれるかもみたいなポテンシャルを持っている子、夢のある子がいっぱいいる。それでも樹はケガにさえ気をつけてもらえば、10年、15年とプロでやれるメンタリティ、スキルをバランスよく持っている。“本当に長く活躍したよね”となる選手は樹だと思っている。そういう意味ではドラフト1位にふさわしい選手と思います」
——最後に伊藤樹選手にメッセージを。
「目の前の勝利を追求すること、1つ1つを積み重ねることで今の自分ができてきたと思う。とにかくケガなく、ご縁、仲間を大切にしながら腕を振ってほしいなと思います」