前半戦で3連勝も記録した好調ベルが、ロガーノを撃破し“祭典”初優勝/NASCARオールスター

2025年5月20日(火)17時36分 AUTOSPORT web


 伝統に彩られたノースウィルクスボロ・スピードウェイで開催されたNASCARカップシリーズ、年間折り返しの“祭典”こと『NASCARオールスター・レース』は、レース最多の139周をリードした昨年度覇者ジョーイ・ロガーノ(チーム・ペンスキー/フォード・マスタング)を撃破し、フロントロウ発進だったクリストファー・ベル(ジョー・ギブス・レーシング/トヨタ・カムリXSE)がイベント初優勝。今季前半戦で破竹の3連勝も記録した好調さを披露し、決勝終盤でドリフト状態からの“サイド・バイ・サイド・バトル”を制している。



 前週のカンザスで争われた第12戦『アドベントヘルス400』にて、決勝2位を記録したベルとは対照的に、予選でフロントロウを獲得していたクリス・ブッシャー(RFKレーシング/フォード・マスタング)には、週末のお祭り気分に水を差す事態が発生。


 前戦にてRFKの17号車はフロントバンパーカバーの補強のため、許可された接着エリアを越えたとしてペナルティを受け、ブッシャーとチームは60ポイントとプレーオフポイント5ポイントを剥奪されることに。この結果、クルーチーフのスコット・グレイブスも2戦の出場停止処分を受け、指揮官不在のままノーポイントのオールスターを戦うこととなった。


 このペナルティに異議を申し立てるかどうか。週末の走行を前に「まだ検討中で、申請の期限まで組織として社内ですべてを評価し、最善の対処に向け検討を尽くす」としていたチーム共同オーナーでもあるブラッド・ケセロウスキー(RFKレーシング/フォード・マスタング)は、その走行開始から意地の快走を披露することに。


 タイラー・レディック(23XIレーシング/トヨタ・カムリXSE)が最速となった合同プラクティスや、初のカップ戦フルシーズンに挑んでいるシェーン-ヴァン・ギズバーゲン(トラックハウス・レーシング・チーム/シボレー・カマロ)が『オールスター・オープン』のポールポジションを射止めるなか、ピットクルーチャレンジを含む金曜夜の本戦向け予選でトップに立ち、この時点でメインイベントのスタートポジションを確定させた唯一のドライバーとなった。


「本当に最高だよ! オールスターレースでポールポジションを獲得するなんて、今まで一度もやったことがない。キャリアで初めての経験のひとつだ」と喜びを爆発させたケセロウスキー。


「これほどの大差でそれを達成できたのは、チーム全体の努力の賜物だ。クルーの皆が、僕に最高のマシンと最高のピットストップを与えてくれて『さあ、始めよう』と言ってくれたんだ。そこで僕もラップを完璧にこなしたよ。今年初のポールポジション獲得だし、気分は最高さ」



シェーン-ヴァン・ギズバーゲン(シボレー・カマロ)が『オールスター・オープン』のポールポジションを射止める


ブラッド・ケセロウスキー(フォード・マスタング)は予選最速からヒート1を制覇。クリストファー・ベル(トヨタ・カムリXSE)もヒート2で勝利を飾る


いち早くメインイベントのスタートポジションを確定させたケセロウスキーは、アクシデントに沈むことに

 続く土曜夜に開催されたヒートレースでも、ケセロウスキーが最初のヒートで勝利を飾り、賞金総額100万ドル(約1億5000万円)の日曜最終レースに向け勢いを増すことになり、ふたつめのヒートではベルが優勝し、本戦のフロントロウに並ぶことに。


 そして日曜午前の“最終選考”とも言える『オールスター・オープン』では、同じく前半戦好調のカーソン・ホセヴァー(スパイア・モータースポーツ/シボレー・カマロ)と、ジョン・ハンター・ネメチェク(レガシー・モーター・クラブ/トヨタ・カムリXSE)が上位2台に入ってメインイベントへの進出を決め、ノア・グラグソン(フロントロウ・モータースポーツ/フォード・マスタング)はパワーステアリングのトラブルで18台中17位に終わったものの、ファン投票で3年連続最優秀ドライバーに選出された。


 シリーズ生誕の地でもある0.625マイルのショートトラックで迎えた23台による勝負は、この1戦に向け準備された“プロモーターズ・コーション”が勝負の分かれ目に。この日、2列目4番手からスタートしていたロガーノは、そこまで隊列を率いた流れを滞らせまいと、215周目の同イエローの際にステイアウトを選択。これが裏目に出てしまう。


 このコーション中にアウト側2本のタイヤを交換し、コースに留まった5台の後ろ6番手から223周目にリスタートを切ったベルは、すぐさまロス・チャスティン(トラックハウス・レーシング・チーム/シボレー・カマロ)をパスして2番手へと浮上。そのまま22号車ロガーノのテールに迫る。


 そして250周レースの241周目。ボトムへとダイブしたベルの20号車は、サイドパネルを擦り付けるようにして並走ドリフトへ持ち込むと、そのままスルスルと立ち上がりで前へ出ることに成功。決定的なオーバーテイクを実現させて0.744秒差でトップチェッカーをくぐり、トヨタ陣営として2017年のカイル・ブッシュ以来となるオールスター制覇を成し遂げた。


「どうだ? ノースウィルクスボロ! まさに信じられない、今季最高のショートトラックだよ」と、バーンアウトの白煙が残る中で喜びの雄叫びを挙げた勝者ベル。


「本当に素晴らしいレースで、トップ争いにはたくさんのドライバーが参加して2ワイド、3ワイドで争っていた。ここでレースをするのは本当に楽しいし、彼ら(20号車のクルー)はこのマシンで本当に素晴らしい仕事をしてくれた。レース前に彼らに伝えたのは、これは久しぶりの最高のマシンだということさ」



インディ500の予選で21番手となったカイル・ラーソン(シボレー・カマロ)は、一時は首位浮上も214周目にウォールに接触。アレックス・ボウマン(シボレー・カマロ)は4位に喰い込んだ


奮闘のチェイス・エリオットやウイリアム・バイロン(シボレー・カマロ)らも5位、6位に続く


「何周もリードしていてマシンが速かったのに、勝てなかったのは本当に悔しいし、本当に辛い……」とロガーノ。マイケル・ウォルトリップがフラッグマーシャルを務めた

 一方、ステイアウト戦略により最後の勝負で右側タイヤの状態が劣ったロガーノは「その差を埋めるには、あまりにも大変だった」と憤った。


「本当に怒っているよ。チクショウ、俺たちが一番速いマシンを持っていたんだ。コーションの状況については、適切な言葉を選んでいるつもりだ。もちろん、その影響を受けたからイライラしているのはコチラだが……コーションには、ゴマカしは一切いらない。そのとおりだ。ちょっと(プロモーターズ・コーション導入を決断した)マーカス・スミスとは意見が合わないんだ。いいか? 彼と話さないといけない」と、オールスター連覇目前で敗戦を喫したロガーノ。


「彼(ベル)を抑えられると思ったが、20号車はリスタートがうまくいって、あまりにも多くの障害をあまりにも早くクリアしてしまった。彼を止めるために全力を尽くしたのに、彼は僕のボトムに潜り込んでブレーキを離し、僕に選択肢を与えなかったんだ……。まるで壁にぶつけてしまったみたいに、マシンをふたたび(トップスピードで)走らせるのに6〜7周かかった。何周もリードしていてマシンが速かったのに、勝てなかったのは本当に悔しいし、本当に辛い……」


 その当事者であるベルも、置かれた状況から首位を攻め立てるしか選択肢がなかったと、切迫した心境だったことを認めた。


「彼は僕を後ろにつけておくのに素晴らしい仕事をしていた。ターン4を抜けた瞬間『よし、もう少しアグレッシブに走らなきゃ』って思ったんだ。だから彼に頼ってポジションを崩した。リードを奪ったらタイヤのアドバンテージが活き、クルージングできると感じた。そして、そのとおりにうまくいったよ」


 併催されたNASCARクラフツマン・トラック・シリーズ第10戦『ウインドウ・ワールド250』は、僚友レイン・リッグス(フロントロウ・モータースポーツ/フォードF-150)がコーリー・ハイム(トライコン・ガレージ/トヨタ・タンドラTRD-Pro)と絡み、そこをすり抜けてトップに立ったチャンドラー・スミス(フロントロウ・モータースポーツ/フォードF-150)がショートトラックでの初勝利で、今季2勝目を手にしている。



「彼は僕を後ろにつけておくのに素晴らしい仕事をしていた。ターン4を抜けた瞬間『よし、もう少しアグレッシブに走らなきゃ』って思ったんだ」と勝者ベル


最優秀メーカーに送られる、最初のマニュファクチャラー・ショーダウンはシボレーが獲得している


NASCARクラフツマン・トラック・シリーズ第10戦は、チャンドラー・スミス(フォードF-150)が逆転勝利を収めた









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