MotoE第3戦サンマリノGP:クラッシュ多発、大接戦が展開されるなか、フェラーリが2レースで勝利
2019年9月16日(月)7時21分 AUTOSPORT web

電動バイクによるチャンピオンシップ、FIM Enel MotoE World Cup(FIMエネルMotoEワールドカップ)第3戦が、MotoGP第13戦サンマリノGPと併催でミサノ・ワールド・サーキット・マルコ・シモンチェリにて行われた。今大会は2レースが設定され、ともにマッテオ・フェラーリ(トレンティーノ・グレシーニMotoE)が優勝を飾った。
電動バイク、エネルジカのエゴ・コルセのワンメイクマシンによって争われるMotoE。2レース制のサンマリノGPは、金曜日に2回のフリー走行と予選のE-ポールが行われ、土曜日のMoto2クラス予選後にレース1、日曜日のMoto3クラス決勝レース前にレース2が設定された。
E-ポールでは、開幕戦ウイナーのニキ・トゥーリ(アジョMotoE)と前戦オーストラリアGPのウイナー、マイク・ディ・メリオ(エストレージャ・ガルシア・0,0・マーク・VDS)がクラッシュ。さらにエリック・グラナド(アビンティア・エスポンソラーマ・レーシング)とセテ・ジベルナウ(ジョイン・コントラクト・ポンス40)はトラックリミット超過でアタックタイムが取り消されている。
MotoEの予選方式はひとりずつワンラップアタックによってグリッドを決定するため、今回のようにアタックラップが取り消しとなった場合、セカンドタイムがない。そのため、基本的にタイムを記録できなかったライダーは最後尾スタート。今回は複数のライダーがタイムを記録できなかったが、こうした場合には2回のフリー走行のベストタイムによって最後尾からグリッドが決定される。
第3戦のE-ポールでポールポジションを獲得したのは、母国ライダーのアレックス・デ・アンジェリス(オクト・プラマック・レーシング)。2番手はMoto3参戦歴を持つフェラーリ、3番手は元MotoGPライダーのチャビエル・シメオン(アビンティア・エスポンソラーマ・レーシング)で、フロントロウを獲得した。
ちなみにデ・アンジェリスのポールポジションタイム1分44秒660は、今大会のMoto3クラスのポールシッター鈴木竜生(SIC58 Squadra Corse)が記録した1分42秒844よりも2秒ほど遅い。一方で長いストレートを持つサーキットレイアウトの前戦オーストリアGPではMotoEのポールポジションタイムがMoto3のそれを上回った。260kg以上の車両重量、そして電動バイクの特性が、サーキットによるタイムの差を生んでいるようだ。
■レース1:多重クラッシュが発生もマシンの炎上などはなし
レース1は気温26度、路面温度38度のドライコンディションで行われた。ここまでMotoEの2戦は、開幕戦ドイツGPがダンプコンディション、第2戦オーストラリアGPがウエットコンディションでの開催。完全なドライコンディションでの公式レースは初となる。
また、気温、路面温度ともに、これまでの2戦に比べ高い状況だ。ちなみに路面状況について、2019年のミサノは路面状況が厳しいと軒並みライダーたちがコメントしている。
サンマリノGPのMotoE決勝レースは周回数7周に設定された。スタートから飛び出したのはデ・アンジェリス。そこにフェラーリ、シメオンが続く。数珠つなぎとなっていた2周目8コーナー手前で、多重クラッシュが発生。マッテオ・カサデイ(オンゲッタ・SIC58・スクアドラ・コルセ)、ブラッドリー・スミス(ワン・エナジー・レーシング)、ニキ・トゥーリ(アジョMotoE)の3人が接触して転倒。3人のライダーと3台のエゴ・コルセはアウト側に押し出されていった。
転倒したライダーのなかでも、スミスは素早くマシンを起こしてレースに復帰。トゥーリとカサデイはリタイアとなった。このクラッシュによる炎上などはなく、レースは続行されている。また、マシントラブルによりマイク・ディ・メリオ(エストレージャ・ガルシア・0,0・マーク・VDS)がリタイアとなっている。
そんななか、先頭集団のポジションが変更する。シメオンが2番手、フェラーリが3番手。さらにシメオンは3周目にデ・アンジェリスに仕掛ける。シメオンとデ・アンジェリスはサイド・バイ・サイドでマシンのサイドをぶつけ合う激しい接戦を展開。そこへさらに、フェラーリが加わる三つどもえの戦いを展開する。
しかし5周目、デ・アンジェリスがハイサイドを起こして転倒。さらに5周目には、グラナドがスリップダウンを喫し、転倒が相次ぐレースとなった。グラナドはその後、レースに復帰する。
レースをリードし続けるのはフェラーリ。しかし、その0.2秒後方をシメオンが追走する。残り2周になると2番手のシメオンにエクトル・ガルソ(テック3・Eレーシング)が追いつき、トップ争いは演者を変えて、再び三つどもえの様相を呈する。
迎えたラストラップ、最後にガルソがシメオンをオーバーテイク。2番手に浮上した。フェラーリはそんな接戦のなかでもトップを譲らず、そのままチェッカー。MotoE初優勝を飾った。ガルソが2位、3位はシメオンで、シメオンは2戦連続でポディウムを獲得した。
■MotoE第3戦サンマリノGP レース1順位結果
路面:ドライ
Pos. | No. | Rider | Team | Motorcycle | Time/Gap |
---|---|---|---|---|---|
1 | 11 | M.フェラーリ | トレンティーノ・グレシーニMotoE | エネルジカ | 12’19.694 |
2 | 4 | H.ガルソ | テック3・Eレーシング | エネルジカ | 0.187 |
3 | 10 | X.シメオン | アビンティア・エスポンソラーマ・レーシング | エネルジカ | 0.590 |
4 | 2 | J.ラフィン | ダイナボルト・インタクトGP | エネルジカ | 3.111 |
5 | 7 | N.カネパ | LCR Eチーム | エネルジカ | 3.284 |
6 | 6 | M.エレーラ | オープンバンク・アンヘル・ニエト・チーム | エネルジカ | 6.516 |
7 | 32 | L.サバドーリ | トレンティーノ・グレシーニMotoE | エネルジカ | 6.883 |
8 | 18 | N.テロル | オープンバンク・アンヘル・ニエト・チーム | エネルジカ | 7.276 |
9 | 15 | S.ジベルナウ | ジョイン・コントラクト・ポンス40 | エネルジカ | 14.576 |
10 | 16 | J.フック | オクト・プラマック・レーシング | エネルジカ | 15.568 |
11 | 14 | R.ド・プニエ | LCR Eチーム | エネルジカ | 22.278 |
12 | 38 | B.スミス | ワン・エナジー・レーシング | エネルジカ | 31.146 |
13 | 51 | E.グラナド | アビンティア・エスポンソラーマ・レーシング | エネルジカ | 1’10.405 |
NC | 5 | A.デ・アンジェリス | オクト・プラマック・レーシング | エネルジカ | 4 Laps(リタイア) |
NC | 27 | M.カサデイ | オンゲッタ・SIC58・スクアドラ・コルセ | エネルジカ | 6 Laps(リタイア) |
NC | 66 | N.トゥーリ | アジョMotoE | エネルジカ | 6 Laps(リタイア) |
NC | 78 | K.フォーレイ | テック3・Eレーシング | エネルジカ | 6 Laps(リタイア) |
NC | 63 | M.ディ・メリオ | エストレージャ・ガルシア・0,0・マーク・VDS | エネルジカ | 6 Laps(リタイア) |
■レース2:チェッカーまで展開された2番手争い
翌日の日曜日に行われたレース2は、気温26度、路面温度27度のドライコンディションで行われた。午前中の開催のため、前日よりも路面温度は低め。なお、トゥーリは前日のレース1の転倒によりヘリコプターで近隣の病院に搬送され、左手首と左脚大腿骨の骨折が判明したことからレース2を欠場した。
また、前日のレース1でマシントラブルに見舞われたディ・メリオは、スペアマシンによってレース2に参戦。ワンメイクマシンのエゴ・コルセは、MotoEのピットボックスが詰まるEパドックの一角に、5台のスペアマシンを常備している。こうした状況の際、マシンごと交換するためである。セッティング可能な部分や交換可能な部品が少ないMotoEマシンだからこそできる対処法ともいえる。
好スタートを切ったのはポールスタートのデ・アンジェリス。フェラーリ、シメオンなどが続くが、2コーナーでシメオンが転倒を喫する。シメオンは2コーナーのコーナリング中にハイサイドを起こしてコース上に投げ出された。マシンも滑ることなくコース上に留まったが、幸いにも後続のライダーの誰とも接触することはなかった。
2周目にはフェラーリがデ・アンジェリスをオーバーテイク。フェラーリがレースをリードする。フェラーリは4周目を終えるころには2番手に浮上してきたガルソに1秒以上の差を築く、快走を見せる。
5周目、5番手を走行中だったアレックス・デ・アンジェリスが14コーナーで転倒。続いてジベルナウもこのコーナーで転倒を喫した。
トップを独走するフェラーリに対し、2番手争いは終盤に激しく争われた。ガルソ、カサデイ、ニッコロ・カネパ(LCR Eチーム)、マリア・エレーラ(オープンバンク・アンヘル・ニエト・チーム)の4人のライダーによる接戦。最終ラップのコントロールラインにまで持ち越された。
フェラーリは7周という短い周回数のなかで2番手以下に2.6秒以上のアドバンテージを築き、トップでチェッカー。サンマリノGPの2レースで優勝を飾った。
2番手集団は最終コーナーをガルソが先頭で立ち上がり、カネパ、カサデイ、エレーラの3人が集団となってメインストレートを加速する。ガルソが2位でチェッカー。カサデイは前をいくカネパを交わし、3位でコントロールラインに飛び込んだ。カサデイとカネパとの差はわずかに0.055秒だった。
これによって2位はガルソ、3位はカサデイ。4位がカネパで女性ライダーのエレーラは5位でフィニッシュしている。
第3戦の2レースが行われたMotoEは、レースのみならず週末を通じて転倒が相次いだ一方、トップ集団などで接戦が展開された。レースとしても少しずつ成熟を増しているようだ。次戦は2019年シーズンの最終戦バレンシアGP。MotoGPの最終戦と併催で、2レースが予定されている。
■MotoE第3戦サンマリノGP レース2順位結果
天候:晴れ ところどころくもり 路面:ドライ
Pos. | No. | Rider | Team | Motorcycle | Time/Gap |
---|---|---|---|---|---|
1 | 11 | M.フェラーリ | トレンティーノ・グレシーニMotoE | エネルジカ | 12’15.142 |
2 | 4 | H.ガルソ | テック3・Eレーシング | エネルジカ | 2.687 |
3 | 27 | M.カサデイ | オンゲッタ・SIC58・スクアドラ・コルセ | エネルジカ | 2.844 |
4 | 7 | N.カネパ | LCR Eチーム | エネルジカ | 2.899 |
5 | 6 | M.エレーラ | オープンバンク・アンヘル・ニエト・チーム | エネルジカ | 3.022 |
6 | 51 | E.グラナド | アビンティア・エスポンソラーマ・レーシング | エネルジカ | 5.448 |
7 | 2 | J.ラフィン | ダイナボルト・インタクトGP | エネルジカ | 5.740 |
8 | 38 | B.スミス | ワン・エナジー・レーシング | エネルジカ | 7.013 |
9 | 18 | N.テロル | オープンバンク・アンヘル・ニエト・チーム | エネルジカ | 8.072 |
10 | 63 | M.ディ・メリオ | エストレージャ・ガルシア・0,0・マーク・VDS | エネルジカ | 10.405 |
11 | 32 | L.サバドーリ | トレンティーノ・グレシーニMotoE | エネルジカ | 10.559 |
12 | 16 | J.フック | オクト・プラマック・レーシング | エネルジカ | 11.312 |
13 | 14 | R.ド・プニエ | LCR Eチーム | エネルジカ | 24.129 |
14 | 78 | K.フォーレイ | テック3・Eレーシング | エネルジカ | 35.867 |
NC | 5 | A.デ・アンジェリス | オクト・プラマック・レーシング | エネルジカ | 3 Laps(リタイア) |
NC | 15 | S.ジベルナウ | ジョイン・コントラクト・ポンス40 | エネルジカ | 3 Laps(リタイア) |
NF1 | 10 | X.シメオン | アビンティア・エスポンソラーマ・レーシング | エネルジカ | 0 Lap(1周できず) |