ERC第3戦:“ロシアン・ロケット”のC3 R5が勝利。オリバー・ソルベルグは無念のクラッシュ

2020年10月9日(金)17時45分 AUTOSPORT web

 2020年ERCヨーロッパ・ラリー選手権第3戦『ラリー・ファフェ・モンテロンゴ』が10月3〜4日にポルトガルで開催され、2018年ERC王者アレクセイ・ルカヤナク(シトロエンC3 R5)がドライ、ダンプ、フルウエットの難コンディションを制して今季2勝目。対抗馬と目されたオリバー・ソルベルグ(フォルクスワーゲン・ポロGTI R5)は初日のシェイクダウンで大クラッシュを喫し、ラリーでもトラブル頻発の厳しい週末となった。


 本来なら9月17〜19日のスケジュールで第3戦『アゾレス・ラリー』が開催される予定だったERCだが、8月15〜16日開催の第2戦『ラリー・リエパヤ』終了後の8月24日に、この風光明媚なアイランドラリーは今季のイベント実施を断念して2021年への大会延期を発表。代わって9月3日に代替戦がアナウンスされ、ポルトガル北部を舞台とするオール・ターマック戦が初のシリーズカレンダー入りを果たすこととなった。


 スムースで滑らかな高速ワインディングと、タイトなヘアピンターンで構成される『ラリー・ファフェ・モンテロンゴ』は、兼ねてから候補地のひとつに数えられていたが、シリーズにエントリーするレギュラー勢にとっても初走行ということで、この週末は誰にとっても等しい“未知の領域”での勝負となった。


 その難しさを印象付けるかのように、レグ1を控えたシェイクダウンでまさかの事態に見舞われたのが、第2戦勝者で先月19歳となったオリバー・ソルベルグ。3.30kmのステージで路面に出ていた砂利に乗りコントロールを失うと、そのままコースサイドの立木に激突。ポロGTI R5の車両前後を大破してしまう。


 2003年WRC世界ラリー選手権王者の父ペターが運営するファミリーチームは、夜通しで懸命の修復作業を続けると、明けたレグ1になんとか形になったマシンはSS1へ。しかし初日から9つも続くターマックステージは負荷が大きかったか、総合3番手につけていたSS8でエキゾーストに不調を抱え6分を失うと、続く最終SS9もその状態のまま走破し、さらに8分を失う厳しい結果となった。


「排気の流れがブロックされれば、こうしたトラブルは当然起こり得る」と振り返ったオリバー。「そのため、タービンのオイルをほとんど失ってしまったんだ」


 この日は3つのSSを3回ループするステージ設定だったが、ミドルループを前に総合2番手にいたオリバーは、ライバル勢とは異なりウエットタイヤを選択。しかしこの判断でもタイムを失い、4番手へと後退していた。


「その点でも、自分が望むものを正確に手に入れるのは難しいということが分かるね。最初のループでもウエットタイヤでリスクを冒したけど、次のループではドライセクションで1kmあたり1秒を失った。100%うまくいくことはないし、僕は今も学んでいる。それこそ、僕がここにいる理由だからね」


 このダンプコンディションはほかの実力派ドライバーたちにも牙を剥き、MRFタイヤの開発を担うクレイグ・ブリーン(ヒュンダイi20 R5)はSS4でシリーズ初のベストタイムをチームMRFにプレゼントする好調さを披露するも、SS8でオイルに乗り左のリヤタイヤを失ってデイリタイアに。


 おなじく僚友で金曜シェイクダウン最速だったエミール・リンドホルム(シュコダ・ファビア R5 EVO2)も、SS3で大クラッシュを喫してマシンが大破。チームは修復が困難として、レグ2での再出走を断念する事態となった。

オリバー・ソルベルグ(フォルクスワーゲン・ポロGTI R5)は初日のシェイクダウンで大クラッシュ。「コーナー出口の砂利が予測できなかった」
初日から不安定な天候をものともせず、大量リードを築くことに成功したアレクセイ・ルカヤナク(シトロエンC3 R5)
今季からMRFタイヤの開発チームで参戦するクレイグ・ブリーン(ヒュンダイi20 R5)も、アクシデントに見舞われる


■レグ2ではルカヤナクがスピンを喫するも、今季2勝目を飾る


 そんな変わりやすい天候を読み切ったのが、ピレリタイヤを装着するSaintéloc Junior Teamのルカヤナクで、かつては“壊し屋”の異名を取った男は、全9SS中6つのステージを制し、2番手のイヴァン・アレス(ヒュンダイi20 R5)に38.3秒ものマージンを築く完璧な初日を過ごした。


「ループステージのなかではときどき苦労もしたけれど、なんのドラマや恐ろしい瞬間もなく、マージンをコントロールすることができた。目まぐるしく変わる天候はクレイジーな経験だったけど、悪い1日ではなかった」と振り返った新生“ロシアン・ロケット”のルカヤナク。


 続く85.65kmのレグ2でも勢いを維持した新たなレインマスターは、この日も9つが設定されたステージのうち3SSで最速を記録する安定感を見せる。最終手前のSS17ではハンドブレーキの不具合からスピンを喫するも、これをきっかけに「さらに集中力が増した」と、2位アレスに対しわずか4.7秒差のギャップで今季2勝目を飾った。


「サイドを引いてターンを開始したけど、最初はロックしなかったのでさらに強く引いたら、突然パチンと効いて回ってしまった。初めてのことで少し奇妙だったが、これは僕のミスだ。でもこれが僕らのやる気を維持してくれたよ」とルカヤナク。


 ERC総合2位アレスのコンマ1秒前には、ERCポイント対象外のフランス人、ヨアン・ボナート(シトロエンC3 R5)が入り大健闘の走りを披露。そして総合3位のグレゴール・ミュンスター(ヒュンダイi20 R5)が、自身初のERC1ジュニア勝利を手にしている。


 一方、前日のSS8で戦列を去っていたブリーンは、この日に再出走を果たして全9ステージを走破し、総合16位までカムバック。難しい天候のターマックでチームMRFのデータ収集に貢献する走りを披露。


 そしてターボトラブルから復活のオリバーも3つのSSでベストタイムをマークして活きの良さをアピールし、ERC1ジュニア3勝目は逃したもののミュンスターに対し7点差のマージンを保っている。


 続く2020年ERC第4戦は11月6〜8日開催の『ラリー・ハンガリー』で、2019年には最終ステージでタイトル決定となった劇的決着の舞台。同国北東部ニーレジュハーザ近郊のターマックは、高速でナローなセクションにコースサイドの泥が混じる、難しいステージ群が待ち受ける。

総合3位のグレゴール・ミュンスター(ヒュンダイi20 R5)が、自身初のERC1ジュニア勝利を手にしている
レグ2ではターボトラブルから復活のオリバーも3つのSSでベストタイムをマークして活きの良さをアピール
最終手前のSS17ではハンドブレーキの不具合からスピンを喫したルカヤナクだが、4.7秒差のギャップで今季2勝目を飾った

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