平均寿命が延びても「四十肩」はなくならない?老化による筋力低下を防ぐポイントを整形外科医が解説
2025年2月28日(金)12時30分 婦人公論.jp
(写真提供:Photo AC)
厚生労働省の「令和5年 国民健康・栄養調査」によると、20歳以上の1日の歩数の平均値は男性が6628歩、女性が5659歩で、直近10年間でみると男女ともに減少しているそうです。そのようななか「人生100年時代、健康寿命を延ばすにはいつまでも自分の足で歩けることが一番大切」と話すのは、整形外科医・末梢神経外科医の萩原祐介先生です。そこで今回は、萩原先生の著書『いつまでも自分で歩ける100歳足のつくり方』から、元気に歩き続けるためのポイントの一部をご紹介します。
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老化による筋力の低下がつまずき・転倒につながる
若いうちは足首のゆるみがあっても筋力でカバーできますが、ある程度の年齢になるといろいろと不具合が現れます。
老化は突然やってくるものなので、変化に気づき、対応することが大事です。つまずきや転倒は、老化による不具合の代表例です。
なぜ老化すると転倒するのか。それは、老化によって筋力が低下し、つま先が上がらなくなることに一番の原因があります。ですから意識的につま先を上げましょう。
アキレス腱伸ばしの運動は、つま先を上げるのに有効です。歩くときには大腿を高く上げて、歩幅を大きくすることを意識しましょう。足が上がっていれば、転ぶリスクは低くなります。
人間の体の「耐用年数」
私は、人間の体の「耐用年数」は50年そこそこなのではないかと考えます。長らく「人生50年」と言われてきました。実際に、明治、大正、昭和も戦前までは、平均寿命の統計は40代でした。衛生状態や医療環境が悪く、乳幼児や若者が多く亡くなった時代ですが、大人の多くは50歳そこそこで亡くなっていました。
「初老」が40歳を意味する言葉だったことや、還暦が長寿のお祝いだったことも「人生50年」を裏付けています。織田信長が好んだという『敦盛』も、「人間五十年」という文句で始まりますね。
『いつまでも自分で歩ける100歳足のつくり方』(著:萩原祐介/河出書房新社)
私はこの50歳そこそこというのが、野性的な状況下での人間の寿命なのだと考えます。私たちの体は、60年も70年も生きることを想定してできていません。そのような身体的な進化もしていません。
平均寿命が延びても「四十肩」という言葉がなくならないのはそのためのように思います。筋力低下とも関係があると思います。
できる動きから始める。急ながんばりは、むしろ逆効果
体重を落とすため、運動不足解消のため、強度の高い運動をしようと考える方もいるかもしれません。ですが、まずは、できることから始めましょう。安易な気持ちでケガのリスクがある激しい運動をして、深刻な事態を招かないようにしてください。
●歩けない人は走れない、歩けない人はつづかない
「ウォーキングを30分も40分もやりたくないから、ジョギングを10分だけやろう」「筋トレを5分だけやろう」と考える人は少なくないと思います。ただ、実際に歩けない人がすぐに走れるはずもなく、ケガをしてしまうか、実行・継続ができなくてやめてしまうことがほとんどです。
まず、歩くことから始めましょう。歩行がすべての運動の基本です。歩くのが難しいと思った人は、市民プールでの水中ウォーキングをおすすめします。
●あこがれのスポーツに急にチャレンジしない
「いくつになっても挑戦はできる」——言葉としては美しいのですが、今までやってこなかったスポーツに唐突に本気で取り組むのは考えものです。真剣にそのスポーツに取り組んできた人でも歳を重ねたあとは、ケガをしたり、そのリスクを考慮したりした結果、関わり方を変えています。
「いつかはやってみたかった」という気持ちはわかりますが、高齢になってからなにかを始めるときは、難度の低いことから順序よくやりましょう。ウォーキングができて、体力に自信がついてからでも遅くありません。
長年つづけてきたスポーツは……
●ずっとつづけてきたスポーツについて
若いころからラグビーをつづけている人、毎週の草野球での全力プレーが生きがいという人、趣味のゴルフのために生きているという人など、長年スポーツを愛好している人には「やれるときにやっておきましょうか」と言葉をかけます。
ひょっとしたらケガをしてできなくなるかもしれませんが、もはや人生の価値観で判断するレベルですから。
●筋トレはストレッチとセットで
筋トレはどうしても曲げる動きが多くなり、関節にとっては必ずしも望ましくない部分もあります。ストレッチを取り入れて、伸ばす運動もセットで行いましょう。
※本稿は、『いつまでも自分で歩ける100歳足のつくり方』(河出書房新社)の一部を再編集したものです。