NPO法人『越後妻有里山協働機構』スタッフ・佐藤あゆさんが選ぶ「関係人口を理解する本5冊」
2023年3月18日(土)11時0分 ソトコト
*今回の選書人は、それぞれの分野で関係人口に向き合い、関係人口を理解するうえで大切な活動をされている11名の方々です。これから関係人口を受け入れるみなさんや、今まさに地域と関わり始めた人がよりよいアクションができるように、おすすめの本を選んでいただきました。
選者 category:アート

2000年に新潟県南部の中山間地域を舞台に始まった「大地の芸術祭」は、3年に1度開催され、23年続いています。この芸術祭を、運営や作家とともに支えているのが、作品制作や清掃のお手伝い、作品や建物のメンテナンス、来場者の案内、ツアーガイド、草刈り、雪かき、農作業、祭礼への参加など、多岐にわたる活動を担うボランティアサポーター「こへび隊」です。
「こへび隊」に参加する方々は小学1年生から80歳代まで、地元だけでなく、大都市圏や海外からの参加もあります。人によって1日だけの参加もあれば、短期的に住み込むなどライフスタイルに合わせて関わる時間もさまざま。会期ごとに新規の参加者が加わったり、中心的に動いてくださる方もライフステージの変化に伴い、2、3年で入れ替わる流動性も特徴です。
このように「こへび隊」への参加者が新旧入れ替わる中で、変わらず伝えていかなければいけないことは何か。それを考えさせるのが、「大地の芸術祭」の総合ディレクター・北川フラムさんが、アートによる地域づくりとなる芸術祭がいかに構想され、実施してきたのかを書いた『美術は地域をひらく』です。開催年によって新作も設置されますが、開催当初から地域に残り守られている恒久作品も200点以上あります。それは、芸術祭のコアやコンセプトが23年間変わらないからです。芸術祭が長く続く中で、何が変わり、変わらないのか、そして主催者が何を考え、なぜこの地で芸術祭を実施しているのか、そういったことを掘り下げて知ることができます。
国内外から大勢の人が「こへび隊」として、「大地の芸術祭」に携わっています。「こへび隊」をサポートする『越後妻有里山協働機構』のスタッフは、「こへび隊」のみなさんが活動しやすい環境をつくる必要があります。そのうえで参考になるのが、書籍『サードプレイス』です。第一の家、第二の職場、そして見知らぬ者同士が気楽に混交する第三の場所が「サードプレイス」で、この「サードプレイス」では、居心地のよい新しいコミュニティが形成されます。「こへび隊」には、バックグラウンドも価値観もさまざまな人が集まっています。彼らがどこに住んでいて、どんな職業なのかにとらわれることなく、彼らが一人の人間として活動しやすい環境もコミュニティの一つだと考え、それを設定して整えるのも、私たちの役割だと考えています。
集落の教え100
原 広司著、彰国社刊

うしろめたさの人類学
松村圭一郎著、ミシマ社刊

わかりあえないことから
─コミュニケーション能力とは何か
平田オリザ著、講談社刊


photographs by Jiro Matsushita text by Fumi Itose
記事は雑誌ソトコト2023年3月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。