青木さやか「列の目の前でチケットが終了。ショックを受けたが、せっかくなので渋谷、原宿で洋服を買いに出てみると」
2025年4月3日(木)11時0分 婦人公論.jp
写真提供:青木さん 以下すべて
お笑いの仕事だけでなく、俳優・エッセイストとしても忙しい毎日を送る青木さん。この春『Nスタ』ゲストコメンテーターを務めることも決まりました。今回は「古着屋が好きだった人として」を綴ります。
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この世の終わりみたいな表情
先日、人気の舞台の当日券を朝から電話し、予約をしようと張り切って、ようやく1時間後に電話が繋がり、キャンセル待ちで予約ができた。
いそいそと準備し、渋谷へ向かい、キャンセル待ちの列に並び、財布を準備しわくわくしていると、わたしの前の前の前の人でチケット予定枚数が終了し、またよろしくお願いしますとなった。
呆然と立ち尽くし(そもそも電話が繋がったのも奇跡的な日だったから期待過多だったのだ)
だがいつまでも会場前に立ち続けているわけにも行かず、並んでいらした方たちは、悲しみも顔に出さずサーっと帰っていかれて立派。わたしはこの世の終わりみたいな表情をしてしまったのではなかろうか、きっとした、わたしのことだから。
海外旅行に来た雰囲気
外に出ると晴天。さほど混んでもいない昼下がり。次は外苑前にある会社で打ち合わせ。そこまで4時間あるので、映画でも見ようかと思ったが時間合わず。
では歩くかと、久しぶりに、ゆっくりと目的を持たず4時間かけて都会を歩いた。
渋谷、原宿、外苑前 まずは、大好きな植物の店に立ち寄り、お店の人はわたしを覚えていてくれて、久しぶりですねなんて言葉を交わして、花に植物に目と鼻で楽しませてもらう。瓶に入ったクッキーを購入し(スパイスクッキーが最高。会社に行ったらコーヒーと共にいただこう) 渋谷から原宿までの明治通りには、ドアマンがいるブランドのお店もありながらその向かいには300円ショップもあったりして面白い。
本連載から生まれた青木さんの著書『母』
道ゆく人は、日本人はわたしだけなのか?と思うほど海外の人が多く、インバウンドを肌で感じながら、海外旅行に来た雰囲気を味わえるような感覚。
お店に入れば、観光客向けの接客(なんとなくですけど)店員さんたちはわたしのことを外国人だと思っているようだ。
心躍るお洋服
というわけで更に海外旅行に来た感覚。 外苑前に向かう細い通り。会社の近くだからよく歩くのだが、こんなにしっかりとお店を見た事はなかった。古着屋が多かったのか。と、可愛らしいお姉さんがいるお店に入れば、心躍るお洋服が並んでいて、そうだそうだ、わたしは古着屋が好きだったし、アメカジっぽいのが好きだった、と若かりし頃、好きだったものを思い出す。
今や、使い勝手がよい、とかテレビでも着れそうだ、とか、洗える、とか、合わせやすい、とか条件が先にきてしまい、本当に好きなものを、なんだか忘れていたように思い、ノスタルジー、また立ち尽くす。
「お姉さん、わたしは、こういったお洋服が好きです」と、初対面の20代だろう店員さんに謎の告白。「えーよかったですー」「本当によかったです、わたしはわたしを思い出すことができました」「えー嬉しいですーよかったですー」 なんていい子なんだ。最近の若い子は、優しいよ。
あれもこれも、と着させてもらい、写真を撮って、一旦会社へいき、若いオシャレなマネージャーに相談し、お店へ戻ってベージュのジャケットを購入。 すごく、似合う!(と思う) 思わず記したくなる、いい一日である。