かつて英軍が開発した「ニワトリ核兵器」の全貌! 10キロトンの超破壊力「ブルーピーコック作戦」の実態に戦慄!

2024年4月20日(土)8時0分 tocana

 冷戦時代、イギリス陸軍が極秘裏に進めていた核兵器使用の軍事作戦があったという。この恐るべき作戦の鍵を握っていたのは「ニワトリ」であったというから驚きだ。


■死蔵している核弾頭を使った“ブルーピーコック”作戦とは


 人類史上初の核兵器の使用が終戦を決定づけた第二次世界大戦だが、終戦後には核兵器を前提にした一触即発の東西冷戦へと突入し、アメリカとソ連の間で熾烈な軍拡競争が始まった。


 アメリカは冷戦中に少なくとも7つの核兵器の設計に着手したということだが、その中にはかなり奇想天外な計画もあったようだ。そしてそれはアメリカだけではなかった。イギリスでもまた核兵器を使用する極秘プロジェクトが進められていたのだ。


 イギリスでは第二次世界大戦終了後の1953年から核兵器の生産が始まっている。このイギリス初の核爆弾が「ブルーダニューブ(Blue Danube)」である。ブルーダニューブは爆撃機から投下することを前提に設計・開発された核爆弾ではあったが、なにぶんにもイギリスが初めて開発した核兵器であっただけに、見込みと食い違う点も少なくなかった。


 その最大の短所はサイズと重量であった。大型の戦略爆撃機・ビッカースヴァリアントが実戦配備されるまでにはブルーダニューブを搭載できる爆撃機はなかったのだ。さらにバッテリーの信頼性にも疑問が残り、事実上は空軍基地に死蔵されていたようだ。そして爆撃機搭載可能の原子爆弾としての役割は、次に開発されたより小型の核爆弾である「レッドベアード」に引き継がれた。


 58発生産されたというブルーダニューブだが、このままお蔵入りにしてしまうのはもったいなかったのかもしれない。そこでイギリス陸軍が考案したブルーダニューブを有効活用するプロジェクトが「ブルーピーコック(Blue Peacock)」作戦であった。


「BBC」によると、ブルーピーコック作戦は冷戦時代の1950年代にイギリスがソ連の西側への侵攻を食い止めるために、西ドイツの国境付近にブルーダニューブの核弾頭を使った核地雷を埋設する計画であった。東側の陸上勢力が西側に侵攻を開始した際に、侵入した勢力に最大のダメージを与えるべく遠隔操作で核爆発させる作戦である。


 


■ニワトリの体温で起爆装置の凍結を防ぐ驚きのアイデア


 しかし、この核地雷には大きな問題があった。寒冷期において地下に埋設した核地雷は、その雷管が核爆発を引き起こすことができなくなるほど冷え切ってしまう可能性を当時の技術水準では排除できなかったのである。


 そして1957年、イギリスの核物理学者たちは解決策を見つけた。驚くべきことにそれはニワトリであった。いったいどういうことなのか。



 なんと核地雷の筐体の中に相当数のニワトリを生きたまま閉じ込めておくという驚愕のプランであった。ニワトリの体温で核地雷内部の温度を相応の高さに保つというアイデアである。餌も一緒に封入され、酸欠で死ぬまでにニワトリたちは1週間ほどは生きながらえている計算になったという。たった1週間ではあるが、厳寒期であっても1週間ほど起爆装置の操作が可能であれば、軍事作戦として成立するのである。


 このようなかなりアナログな解決策でブルーピーコック作戦は現実味を帯びてきたのだが、しかし改めてその効力を分析してみるとプロジェクトチームは戦慄を覚えざるを得なかった。


 アメリカの百科データベース「American Digest」によれば、ブルーピーコック作戦で設計された核地雷は、直径375フィートのクレーターを生成する10キロトンの爆発をもたらすと想定された。しかしこれほどまでに破壊的な核爆発を同盟国である西ドイツの国土で起こすことは、爆風による大量の放射性降下物を考慮に入れると、最終的には却下せざるを得なかったのだ。


 核地雷・ブルーピーコックはプロトタイプが2つだけ製造されるにとどまり、実際には埋設されることなく、1958年にブルーピーコック作戦は中止された。


 すべてが極秘プロジェクトだったブルーピーコック作戦だが、2004年4月1日に関連する文書の機密指定が解除された。ニワトリの体温を利用するというユニーク過ぎる軍事作戦だけに、イギリス国立公文書館の担当者はエイプルフールの冗談ではないことを付け加えなければならなかったという余談もある。冷戦の緊張感の中で考案された奇想天外なニワトリを使った軍事作戦には驚かされるばかりだ。



参考:「Business Insider」、ほか


 


※当記事は2020年の記事を再編集して掲載しています。

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