油そばのような斬新「冷やしラー油肉そば」が絶品…! 神保町に爆誕した“黄色い看板”の立ち食いそば屋「梅市」はそば職人の技が光る店だった
2025年5月6日(火)12時0分 文春オンライン
神保町は学生の街、書籍の街である。以前は立ち食いそば屋がたくさんあった。
神保町交差点近くには「かんだ二八屋」(2005年4月閉店)、「利根そば」(2012年10月閉店)、「梅もと」(2015年5月閉店)、利根の後の「いわもとQ」(2023年10月閉店)、九段下方向に進めば「五佰両」(2005年4月閉店)、駿河台下あたりには「三ッ森」(1980年頃閉店)、「六文そば」(閉店年月不明)、すずらん通りには「スタンドそば」(1993年閉店・移転)、錦華通り方面には「六花そば」(2005年頃閉店)など、大激戦地区であった。他にも「天ぷらいもや」の天ぷらそば専門店も人気だった。
神保町に久々の立ち食いそばの新店が誕生
現在は猿楽町「肥後一文字や」、すずらん通りの「小諸そば」、靖国通り沿いの「嵯峨谷 神保町店」とずいぶん寂しい状況である。そんな中、今年の4月19日に、待望の立ち食いそばの新店が誕生した。店名は「立喰いそば梅市」。なんとなく縦書きが似合いそうだ。
開店2日目の日曜日(4月28日より日曜祝日は定休日に変更)の昼過ぎ、さっそく訪問してみることにした。神保町の交差点に降り立つ。意外と人が多い。登山道具の「KANDAHAR 山の店」、生ビールのおいしい洋食屋「ランチョン」、スマトラカレーの「共栄堂」を通過し、駿河台下方向に歩いていく。
そして「マクドナルド」を左折し錦華通りに入る。右手に超人気の讃岐うどん屋「丸香」がみえてくる。その斜め前に店はあった。
黄色い看板の立ち食いそば屋
看板は黄色の背景に、梅の花が咲いている。なかなか奥ゆかしいデザインだ。
店外に同じく黄色い背景でメニューがずらっと並んでいる。「たぬきそば」、「コロッケそば」、「天ぷらそば」などの王道のメニューの他にも、「紅しょうが天そば」、「春菊天そば」、「ゲソかき揚そば」、「肉そば」などのマストアイテム、「ニラ天そば」、「ラー油肉そば」などのユニークメニューが並ぶ。冷しもあって値段は同じ。
サイドメニューは、「いなり」、「カレーライス」、「半カレー」、「かき揚げ丼」の他「ネギとろ丼」、「めんたい丼」などまである。
そばとカレーや丼物のセットメニューは50円引きと良心的だ。
丼の縁をはみ出る春菊天
店は店主と奥さんだろうか2人で回していた。厨房が狭いのでスムーズな動線確保が難しそうだ。
店内は細長い造りで10人は入れる大きさである。入口すぐのカウンターで注文して、お金を払い、出来上がった注文品を受け取って右手側で食べる。

食べ終わった食器は一番奥のコーナーに返して、専用出口から退店するという仕組みだ。
到着した時は2、3人が入口に並んでいて驚いたが、動線の工夫で店内は空いていて安心した。
さっそく列に並び、しばらくして「春菊天そば」と「いなり」1つを注文した。
そばは生麺を見込み数人分茹で、茹でたてを提供している。天ぷらはこまめに揚げているようで、ほぼ揚げたてを提供するか、少し時間がたったものは再度短時間揚げて提供しているのでアツアツである。
しっかりしたつゆがうまい
1分程度で注文品が完成した。春菊天は手のひら型に揚げたタイプで緑の揚げ色が鮮やかだ。つゆをまずひとくち。おっ、鰹節が十分に利いた出汁が香る。返しもキリッとしたタイプで奥行きがある。これはうまい。そして、そばがなかなかユニークだ。丸麺なのだ。茅場町の「がんぎ」の丸麺よりやや太い。茹で立てなのでパツッとした感じのコシのあるそばである。この丸麺はなかなか珍しい。
店主に聞くと、小岩にある岩野製麺所の生そばを使っているという。開店前、たくさんの製麺所を回り、麺を吟味して、最終的にこちらの生麺を採用したという。コシが強いのが特徴で冷しで食べてもうまいという。
春菊天はカラッと揚げられていて香りもよい。硬いこともなく、食べやすい春菊天である。そして、いなりはこれも自家製である。薬味のねぎも十分にのる。なかなかよい出来栄えの味である。
あっという間に食べてしまった。そこで店主の「冷しがうまい」という言葉を思い出し、「冷しゲソかき揚そば」を追加注文した。そして待つこと1分ほど、どんぶりが登場した。
「冷しゲソかき揚そば」は抜群の“うまい”そば
ゲソかき揚げは大きめにカットしたゲソがゴロゴロ入っている。揚げ具合も色合いもちょうどよい。
つゆをひとくち。冷しのつゆはさらにキリッとしまっていてよい具合だ。そして、冷たいそばを食べたとき衝撃が走った。温かいそばとは食感が全く違うのだ。
冷たいそばはつるっとしているがそのコシが強く、噛み応えが十二分に楽しめる。ゴワゴワとした感じではなく、はね返る歯ごたえである。このそばは冷し系で食べると本領を発揮するのに違いない。
ちょうどよい揚げ具合と噛み応えの“ゲソかき揚げ”
そして、ゲソかき揚げは秀逸だった。揚げすぎることもなく、ちょうどよい出来栄えである。箸で解していくと、大き目にカットされたゲソが現れる。その歯ごたえが堪らない。
店主に話を聞くと、何軒かのそば屋で働き修業して味の研鑽を積んだという。そして自分で店を持ちたいと立ち食いそば屋にターゲットを絞ってようやく開店にこぎつけたという。
「冷やしラー油肉そば」はイチオシメニュー
実食中に知り合いのボーカリストが来店し、彼は「ラー油肉そば」と「カレーライス」を食べて「うまい」と連発していた。「ラー油肉そば」のラー油はただのラー油ではなく食べるラー油を使っているところがキーポイントだとか。豚バラ肉との相性が抜群だと。また、カレーライスはステンレスの食器で提供される。それだけで萌える方も多いと思う。
そこで最初の訪問の翌週に「冷やしラー油肉そば」を食べてみたのだが、これがまた斬新な味だった。たっぷりの豚バラ肉の上に刻み海苔、食べるラー油、ネギがのる。「冷やしラー油肉そば」のつゆには、少しお酢が加えられている。よく混ぜて食べるとうまいとのこと。食べるラー油がいい仕事をしている。このコシのある冷たい生そばが油そばのようで絶妙な一体感がすばらしい。他店で見ないオリジナルな味である。
神保町に新しくできた「立喰いそば梅市」は生麺を使用し、王道のメニューから斬新なメニューまでそろう、そば職人が立ち上げた素敵な店だった。神保町に新店ができたことも本当にうれしいニュースだ。次回は温かい「ラー油肉そば」か「カレーライス」を食べようと思う。足繁く通ってしまいそうだ。
INFORMATION
「立喰いそば梅市」
住所:東京都千代田区神田神保町1-2-8
営業時間:月〜金 11:00〜15:00/17:00〜20:00
土 10:00〜15:00
定休日:日曜・祝日
(営業時間は変更する場合あり)
(坂崎 仁紀)
関連記事(外部サイト)
- 【画像】 油そばのような味わいが斬新! 神保町に爆誕した“黄色い看板”の立ち食いそば屋で食べた「冷やしラー油肉そば」がコチラ《その他料理写真も》
- 本当にこんなに安い値段でいいのだろうか…「かけそば」まさかの200円! 東京23区で食べられる“安すぎる立ち食いそば”店を一挙紹介!
- なんと25種類の揚げたて天ぷらが...市場から取り寄せた魚介がウリの「立ち食い蕎麦 酒処 稜(かど)」は天丼も豪華だった!
- 高田馬場のスタミナそば、戸越銀座のホルモンそば、板橋の牛肉そば…2025年にブレイク間違いなしの「超人気立ち食いそば」5店
- 〈そびえ立つ肉天のすさまじい迫力〉京急沿線を中心に展開する立ち食いそば店「えきめんや」が“駅”を飛び出した“ステキな理由”とは