金属探知機でお宝発見!1400年前の金と宝石のカラスの頭と帯状の装飾品を出土

2025年5月11日(日)20時0分 カラパイア


Image credit: Chris Phillips


 イングランド南西部で金属探知機を使ってお宝を探していたアマチュア探知家2人が、アングロ・サクソン時代に作られたとみられる金と宝石のガーネットでできた装飾品を発見した。


 見つかったのは、宝石が埋め込まれた金のカラスの頭部と、同じく宝石が入った金の帯状の装飾品で、これは指輪の一部の可能性があるという。


 現在、専門機関による調査が進められており、発見場所は新たな考古学的調査地として注目されている。


金属探知機で発見された金の装飾品


 このお宝を発見したのは、ポール・グールド氏とクリス・フィリップス氏だ。2人は「第9地域金属探知グループ(Ninth Region Metal Detecting Group)」に所属するアマチュア探知家だ。


 このグループはイギリス各地で金属探知機を使って宝探しを趣味とする愛好家による集まりで、許可を得た土地での発掘活動を行っている。


 ポール・グールド氏は、最近グループに参加したばかりの新米だが、2025年1月8日、イングランド南西部の野原で探知をしていた際に、金属反応を感知した。


 掘り出されたのは、三角形のガーネットがはめ込まれ、金のビーズで縁取られた平たい金の帯。グールド氏は、これがアングロ・サクソン時代の指輪ではないかと考えた。


 アングロ・サクソン時代は、5世紀中頃から11世紀初頭まで続いたイングランドの歴史時代で、ゲルマン系民族による複数の王国が形成され、独自の文化や美術、言語が栄えた時代だ。



Image credit:tinner455 .uk metal detecting[https://www.youtube.com/watch?v=AVWBnCKaJoQ]


カラスをかたどった金の装飾品も発見!


 さらに仲間のクリス・フィリップス氏が見つけたのは、金でできたカラスの頭部をかたどった装飾品だった。


 このカラスの頭部は、赤色の宝石、ガーネットの目と、羽を模した金の球体があしらわれた精巧な細工が施されいた。


 やはりアングロサクソン時代のものとみられており、大きさは8cmほど、重さは約57g(2オンス)だったという。



Image credit:tinner455 .uk metal detecting[https://www.youtube.com/watch?v=AVWBnCKaJoQ]


カラスは神話と深く結びついた存在


 ヨーロッパ初期の歴史書や神話の中で、カラスは「死」や「闇」と結びつけられる象徴としてしばしば登場する。


 特にゲルマン民族やヴァイキング時代の人々は、2羽のカラスを北欧神話に登場する戦争と死の神、オーディンと関連づけていた。


 この神話では、「フギン(思考)」と「ムニン(記憶)」という名のカラスたちが世界中を飛び回り、見聞きしたことをオーディンに報告する役目を担っていた。


 今回発見された装飾品がそうした信仰と関係していたのかは明らかでないが、当時の精神文化を読み解く手がかりになりそうだ。



Image credit:tinner455 .uk metal detecting[https://www.youtube.com/watch?v=AVWBnCKaJoQ]


「遺物発見報告制度」への届け出と宝物審査


 2人は発見後、土地の所有者と連絡を取り、イギリスの「遺物発見報告制度(Portable Antiquities Scheme)」の地域担当官に届け出た。


 この制度は、一般市民が発見した考古学的遺物を専門機関に報告することを促す公的な仕組みで、文化財保護と歴史研究を目的として運用されている。


 現在、この2点の装飾品は「トレジャー法(Treasure Act)」に基づいて、正式な「宝物(トレジャー)」としての審査プロセスに入っている。


 トレジャー法は1996年に施行されたイギリスの法律で、金や銀などの貴金属製で300年以上前の遺物を発見した場合、国に届け出る義務がある。博物館が購入を希望する場合、発見者と土地所有者に報酬が支払われる。



博物館で明かされた精巧なディテール


現在、これらの装飾品はロンドンの大英博物館で専門家による洗浄・調査が進められている。これらの遺物は7世紀ごろのものと推定されている。


カラスの頭部は、右目のガーネットが失われていること、くちばしには彫り込まれた鼻孔があることが判明。


内部からは小さなピンのような構造も確認されており、装飾品が何かに取り付けられていた可能性が高いという。


フィリップス氏は、この装飾が「飲み角(ドリンキング・ホーン)」に付属していたのではないかと推測している。


飲み角は、角や金属で作られた古代の酒器。サフォーク州のサットン・フー(Sutton Hoo)と呼ばれる王族の船葬墓でも、同様の金の装飾が施された飲み角が発見されている。



Image credit:tinner455 .uk metal detecting[https://www.youtube.com/watch?v=AVWBnCKaJoQ]


指輪の正体は未解明、現場は調査対象に


 一方、グールド氏が見つけた金の帯についても洗浄が行われたが、それが実際に指輪だったのか、別の装飾品の一部だったのかはまだ明らかではない。


 ただし、これら2点の発見によって、現場は新たな考古学的調査の対象地として注目されている。


 フィリップス氏は「今後の調査にも関わっていけることを願っている。今後も正しい手続きを守りながら探知を続けていくつもりだ」と語っている。


 2人は博物館を訪れ、その様子を動画で記録している。




References: Metal detectorists unearth dazzling Anglo-Saxon gold-and-garnet raven head and ring:[https://www.livescience.com/archaeology/metal-detectorists-unearth-dazzling-anglo-saxon-gold-and-garnet-raven-head-and-ring-its-unbelievable-im-a-bit-emotional]

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