だから「熟年離婚」が止まらない…「言葉にしなくても分かり合える」と思い込む夫、共感できない妻の落とし穴
2025年4月22日(火)6時15分 プレジデント社
写真=iStock.com/yamasan
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/yamasan
■結婚年数が長くなるほど妻は夫への関心が薄れる
熟年離婚とは一般的に20年以上の同居期間のある夫婦の離婚を指すのですが、この熟年離婚をする人が多くなっています。全世帯での離婚数は減少傾向にあるなかで、熟年離婚だけが高止まりしているそうです。
出典=厚生労働省「人口動態調査」より
出典=厚生労働省「人口動態調査」より
ここで、ひとつ疑問がわいてきます。「長い時間をともに過ごすことは、お互いをわかりあうことにならないのか?」ということです。実は、その結論の参考になる研究結果があります。
それは「結婚年数が長くなるほど、女性は相手に対してプラスの態度が減る傾向にある。男性は結婚期間が長くなってもあまり変化がない傾向にある」という研究結果です。ちなみに、プラスの態度とは相手に共感したり、接触したいといった態度です。
つまり、結婚年数が長くなるにつれ妻は夫への共感が薄れ、夫への関心や興味がなくなってくるというのです。もちろんこれはあくまでも全体の傾向なので、個人差はあります。
■「同じ毎日の繰り返し」こそが危険
こうした傾向をわかっていないまま、今日と同じ明日みたいな感覚でいると、ある日突然「離婚してください」と夫が妻からつきつけられることがあるのです。
これはいってみれば二人の間に認知のズレが起きているのに、そのことに気がつかず「コミュニケーションの馴(な)れ合い状態」が続いてしまったのが原因です。
夫婦関係に限らず、職場でも、友人関係でも、同じようなことが起こりえます。長い付き合いは、いい関係につながることもありますが、馴れ合いになってしまうこともあるのです。
・言わなくてもわかっているはず
・ちゃんと伝えなくても理解してくれるはず
こうした感情は、危険です。
では、長い付き合いの相手とどうコミュニケーションをとればいいでしょうか? それは、ここまで出てきたことと同様に、お互いの認知のズレを減らすことです。
長い付き合いだと、すでにできあがっている関係性があります。いきなり初心にかえって出会った頃のようにお互いに気遣いをといっても、現実味がないですよね。
■人間関係に役に立つ「夫婦円満6カ条」
そこで「マンネリの関係を打破する6カ条」をここで紹介します。この6カ条を活用して夫婦であれば熟年離婚の回避を、職場であればいい関係性の維持に結びつけてもらえたらと思います。
【マンネリの関係を打破する6カ条】
1 同じ点を徹底して探す
2 尊敬できるところ(好きなところも含めて)を無理にでも20個挙げる
3 オウムになる
4 成功体験を一緒に喜ぶ
5 夜の議論は避ける
6 メールやLINEなどで問題点を指摘しない
この6つをぜひ実行してみてください。ひとつひとつは小さなことですが、これを組み合わせていくと大きな効果を発揮するはずです。プライベートでも、仕事でも活用できる方法です。
【1 同じ点を徹底して探す】
長い間付き合いが続くのは、過去にはいい関係を築いていたからです。いい関係を構築できていたということは、以前はきっと「同じ点」があったはずです。
価値観が同じ、好きなスポーツが同じ、趣味が同じ……。同じ点があると信頼を感じやすくなるのですが、この「同じ点」という認識が薄れている可能性があります。同じ点が消えてしまったと思っているのかもしれませんし、同じ点を忘れているのかもしれません。
まずは、あらためて「同じ点」を探してみることです。具体的に何かに書き出すと、よりハッキリと同じ点を認知できるはずです。ちょっとしたことですが、効果はあります。ぜひやってみてください。
■忘れがちな長所を全力で思い出す
【2 尊敬できるところ(好きなところも含めて)を無理にでも20個挙げる】
同じ点と同様に、尊敬できる点も、もともとはあったのではないでしょうか。でもいまは、尊敬できる点、好きな点も忘れてしまっていたり、感じ方が変わってしまっていたりするかもしれません。
そこで、あらためて考えてみてください。尊敬できる点、好きな点というのは、いってみれば相手のいい点です。この部分を長い付き合いのなかで見過ごしてしまっていることはよくあります。あまりにあたりまえになってしまっていて、それがいい点であるという認識ができなくなっているのです。
でも、こういうところは、失ったときに初めて気づいたりします。「あの人のこういうところ、好きだったな」とか「尊敬できるところがいろいろあったな」という感じに、失ってから思い返すことはよくあることです。
写真=iStock.com/yamasan
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できれば失う前に気づいておきたいですよね。そこも書き出しましょう。
脳はプラスとマイナスがあったときに、マイナスのほうにフォーカスをしてしまうことがあります。SNSで100のいいコメントがついていても、ひとつ批判的なコメントがあると、そちらに意識が行ってしまう。その日はずっと楽しかったのに、たったひとつの失敗で落ち込んでしまう。
脳は、無意識にその人の認知のクセや好みの影響を受けて、一面しか見ていないことがよくあります。
■ポイントは「無理にでも思い出す」
会社内の人間関係でも、夫婦でも不満点ばかりに目が行ってしまうことはないでしょうか。なので、別の側面を意識的に見ることが、マンネリ関係の打破には必要です。それを20個書き出してみてください。
20個という数字にも理由があります。それは、「そんなにないだろう」と思ってしまう数値だからです。でも、おもしろいことに、書き出したら意外に20個くらいは出てくるものです。私は講演でこの話をするのですが、「20個書き出してみてください」と言うと、ほぼこういう反応が返ってきます。
「絶対に20個もありません! なんならひとつもないくらいです!」
そんなときは、「時間がかかっても大丈夫なので、無理にでもとにかく20個書き出してみてください」とお願いをします。すると不思議なことに、無理と言っていた人が、20個書けてしまうのです。意外と真面目な点があるとか、やさしいとか、出てきます。
20個書き出していくとプラスの側面をより認知するようになるので、相手への印象が変わっていきます。
このワークをやると新婚のときのことを思い出す人もいます。
「変わってしまったと思っていたけど、意外と夫はいまも変わってないんだな、変わってない部分もあるんだな」
そんな気づきを得る人もいます。
事実は変わらないですが、目を向けてないところに目を向けると認知が変わり、認知が変わると相手への印象が変わります。印象が変われば態度が変わり、態度が変わると世界が変わる。まさに、認知は世界を変える第一歩なのです。
ただ、逆にこういったことをしても認知の変化が難しければ、それは相手から離れたほうがいいという合図かもしれません。必ずしも一緒にいることがいいというわけではないので、その見極めのためにもここで紹介する6カ条は役に立つと思います。
写真=iStock.com/AzmanL
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■脳に快感を与える「反射的傾聴法」
【3 オウムになる】
話をしていると、自分のことを受け止めてくれているなという印象の人がいないでしょうか? その人はもしかするとオウムになっているのかもしれません。オウムになるとは、相手の言っていることをオウム返しするということです。これを専門用語で、リフレクティブ・リスニングといいます。
受け止めてくれるような印象を相手に与える聞き方、それがリフレクティブ・リスニングです。「反射的傾聴法」ともいい、学術的にも効果が実証されている方法です。
やり方は超簡単です。「相手が言ったことをそのまま反射して返す」それだけです。
まさにオウム返し。「今日は友だちの佐藤さんと会ってきた」と言われたら、「ふーん、そうなんだ」ではなく、「そうなんだ、佐藤さんと会ってきたんだ」と反応する。たったこれだけです。簡単ですよね。
なぜこんな簡単なことで効果があるかというと、脳が快感を得るからなんです。
脳はそもそも自分のことを話すと、快感を得ます(報酬系が活性化)。相手の脳は、オウム返し(リフレクティブ・リスニング)をされると、「自分のことが話されている」と認識し、脳はまた快感を得るのです。自分のことを話して快感。相手が自分のことを話してくれてさらに快感。快感のダブル効果です。
脳って、やっぱり自分のことが一番気になるんですよね。集合写真を見るときに、自分を真っ先に探しませんか? これも自分が気になるからです。
■薄リアクションはNG
【4 成功体験を一緒に喜ぶ】
「先日クライアントとのやり取りで、こちらの対応をほめてもらったんです!」
そんなことをチームメンバーから言われたときに、あなたならどんな反応をしますか? 「へえ、よかったね」スマホを見ながらそんな対応をするか、それとも「それはすごいね! 丁寧にクライアントに対応した結果だね。よかった?」そう対応するかで、チームメンバーとの関係性は大きく変わります。
チームメンバーがうまくいったときに、薄い反応しかしない人は、関係性構築の視点から見たらNGです。人間関係に亀裂が入りやすくなります。夫婦関係でも同じです。このことは、実験でも立証されています。
成功体験やうまくいったことには、一緒になって喜ぶ。さらに、ねぎらったり、感謝を伝えたりする。「ありがとう」をちゃんと言う。ちょっとしたことですが、こういったことは関係性を構築するうえでも大切な方法のひとつです。
写真=iStock.com/recep-bg
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■夜はケンカになりやすく、もめやすい
【5 夜の議論は避ける】
マインドアフターミッドナイトという現象があります。SNSのXを調査した結果からわかったことなのですが、人は夜のほうが感情的になりやすく、朝のほうが論理的になるということなんです。
調査は8億のXでのツイートから、どの時間帯に、どんな言語パターンのツイートがされているかを分析しました。夜になると、感情的で衝動的な言葉が多いことがわかりました。一方で朝のほうが論理的な言葉が多かったそうです。
これは脳の特性の表れです。脳の前頭前野が論理的な働きを担っているのですが、疲れてくるとだんだん弱くなってきます。
前頭前野の活性はストレスで減っていきます。朝に前頭前野の活性が満タンでも、その日一日いろいろな出来事を体験していくと、夕方以降はどんどん目減りしていきます。そのため、朝より夜のほうが小さなことでもイライラしやすくなる傾向にあります。
そこにお酒が入ってしまうと、さらに感情が強くなります。なので、夜の議論はケンカになりやすく、もめやすいのです。
朝に話せば相手がキレないような話でも、夜に話してしまったがためにキレられてしまう。そんなリスクが高まります。夜はあまり相手にとってデリケートなことは話さないほうがベターです。謝罪するのも、夜よりも朝のほうが伝わりやすい傾向にあります。
■愛情や感謝は「文字だけ」でも効果あり
【6 メールやLINEなどで問題点を指摘しない】
「テキスト(文字)で伝える」のと「直接話す」のでは、相手に与えるストレスが違うということをご存じでしょうか。何かマイナスの指摘をするときは、メールやLINEで伝えないほうがいいんです。これはアメリカのブリガム・ヤング大学の研究でわかっています。
西剛志『結局、どうしたら伝わるのか? 脳科学が導き出した本当に伝わるコツ』(アスコム)
メールでは文字だけでのコミュニケーションになるので、ニュアンスがどうしても伝わらない部分があります。文字だけで伝えると、認知のズレが起きやすいのです。
一方で、話すときは口調や表情も情報のひとつとして相手に伝わります。ただし、おもしろいことに、愛情や感謝を伝えるときは文字だけでも伝わります。「愛している」とか「好きだよ」という表現は、文字で十分届くのです。
指摘や非難など、マイナスの印象を与えることに関しては、文字だけで伝えるよりも直接話すほうが、誤解が少なく伝わるのです。
ここで紹介した6カ条を関係性の再構築にぜひ活用してください。
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西 剛志(にし・たけゆき)
脳科学者
1975年生まれ。東京工業大学大学院生命情報専攻卒。博士号を取得後、特許庁を経て、2008年にうまくいく人とそうでない人の違いを研究する会社を設立。テレビやメディアなどにも多数出演。著書に『脳科学者が考案 見るだけで自然と脳が鍛えられる35のすごい写真』『増量版 80歳でも脳が老化しない人がやっていること』『世界一やさしい自分を変える方法』(以上、アスコム)などがある。著書は海外を含めて累計42万部を突破。
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(脳科学者 西 剛志)
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