「3年続けなさい」は無視していい…精神科医が「我慢しないで逃げる人こそツヨツヨ」というワケ

2024年5月1日(水)15時15分 プレジデント社

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/masamasa3

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自分の心に素直に生きている人は何をしているのか。精神科医の藤野智哉さんは「他の人からバカにされようが否定されようが、とにかく逃げたから、今、生きているという人は少なからずいる。自分を守るために逃げられたのなら、むしろ自分を褒めてあげるといい。自分の心を大事に考えるなら、『逃げない』選択が『逃げ』ということもある」という――。

※本稿は、藤野智哉『「そのままの自分」を生きてみる 精神科医が教える心がラクになるコツ』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)の一部を再編集したものです。


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■自分を守るために逃げられたのなら、自分を褒めてあげる


ピンチになったら、「がんばる」ではなく「逃げる」ことも知ってほしいなと思います。


世の中が「逃げグセ」に厳しすぎるせいで、みんな「逃げないグセ」がつきすぎなんですよね。


たとえば、僕ら精神科医のところにこられる患者さんやご家族の中には「転職なんてもってのほか」という人も少なくないのですが、僕らはそれもつねに選択肢の1つに入れていますし、実際にそうしてうまくいった人も見てきています。


仕事の中には「向き・不向き」「合う・合わない」もあります。


企業の中には、「ブラック企業」だってあります。


それなのに「つらいから転職する」を「逃げ」だと思って、罪悪感をもってしまう人も多かったりするんですよね。


「逃げる」。いいじゃないですか。


自分を守るために逃げられたのなら、むしろ自分を褒めてあげてください。


人生を続ける、自分の人生から逃げないために、今逃げる。


そもそも「何を『逃げ』と呼ぶのか」という問題もありますよね。


自分の気持ちがつらいのに、無理して会社に残るのは、自分の気持ちから「逃げてる」ともいえます。


自分の心を大事に考えるなら、「逃げない」選択が「逃げ」だったりするんです。


■今がつらい自分に我慢をさせない


他の人からバカにされようが否定されようが、とにかく逃げたから、今、生きているという人は少なからずいます。


「逃げる」ことを無責任な言葉で邪魔する人は、逃げようとする人の人生の責任をとってくれるわけじゃないですからね。


「3年続けないとどこも雇ってくれないよ」とか「転職ばかりしてると職歴に傷がつくよ」なんていう人もいるかもしれませんが、そんなふんわりした理由で、今がつらい自分に我慢をさせないでくださいね。


自分の人生を好きに生きるのには、誰の許可もいらないのです。


写真=iStock.com/kokouu
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もちろん100%、好きに生きるのが難しい人も多いです。


「子どもがいるから、そんな自由になんて無理です」
「貯金もぜんぜんないし、自分の生活の安定もあるから、そんな自分勝手には生きられません」


その気持ちも状況もわかります。好きに生きるってなかなか難しい部分もありますから。


でも、100%好きに生きるのは無理だったとしても、10%くらいなら好きに生きられると思えませんか?


「子どもがいてなかなか自由にはできないけど、夜30分だけ好きな本を読む時間をつくろう」
「お金に余裕はないけど、週1回だけはカフェで好きなコーヒーを飲もう」


というように「好きに生きる」時間をちょっぴりもてるといいですよね。


時には「逃げる」こと、「好きに生きる」ことも大切なんですよ。


■助けを求めるのは弱いどころか「つよつよ」


何かトラブルがあったとき、がんばろうとしすぎてしまうことがあります。


たとえば、仕事の納期が間に合わないとき、「自分がなんとかしなきゃ」「私ががんばらなきゃ」と自分を追いつめてしまったり。


コミュニケーションの行き違いから親戚ともめてしまったときに、「私が悪いのかも」「もっとこうすべきだったかも」と行動すればするほどこじれたり。


冷静に考えれば、助けを求めたほうがいいのに、自分で抱え込んでしまうのはなぜでしょう。


それは「助けを求める」のに慣れてないからかもしれません。


小さいころからがんばりやさんだった人は、とくに「助けを求める経験」が足りていません。


あるいは助けを求めて叱られたりした経験から「助けて」と言えなくなってしまった人もいるでしょう。


ひょっとしたら、「助けを求めるなんて恥ずかしい」「できない人、弱い人がやること」なんて思い込んでいませんか?


助けを求めるのは弱いからじゃなく、なんとかしようって意志があるから。


あきらめてないんです。逆につよつよでしょ?


だから「自分で抱え込んでしまっているかも」と感じる人は「助けを求める練習」をしてほしいなと思います。


■「ちょっと助けて」を言う練習を


自分でがんばるだけではどこかで限界があるものです。「がんばる練習」をするのは、しんどくなるだけだったりします。


「がんばる練習」よりずっと大切なのは、「助けを求める練習」です。


日々の生活の中で、「ちょっとだけ助けを求める」「ちょっとだけ誰かに頼る」を意識してやってみてください。


なんでもいいです。


「部長から頼まれた書類のコピー、手伝ってもらえませんか?」
「そのお店の予約、代わりにお願いできないかな」
「今、ちょっと体調が悪くて。明日まで待ってもらえると助かります」
「(SNSなどで)○○に詳しい人っていますか? 教えてほしいです」

こんなふうに「ちょっと助けて」を言う練習をしてみてください。



藤野智哉『「そのままの自分」を生きてみる 精神科医が教える心がラクになるコツ』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)

意外と、「わかりました。一緒にやりましょう」「手伝いますよ」「全然、明日で大丈夫です」なんてことがあったりするんですよ。


慣れないうちは「助けて」と言うのは怖いかもしれません。


実際に言ってみたら断られたり、イヤな反応をされることもあるかもしれません。


でも、「助けて」って言わなかったら、どんな反応になるかもわからないですよね。


だから、つらいなーと思ったら「今、思いきって助けを求めるのもありかも?」と発想するクセをつけてほしいですね。


「助けて」と言うのは、全然恥ずかしいことじゃないんですよ。


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藤野 智哉(ふじの・ともや)
精神科医
産業医。公認心理師。1991年愛知県生まれ。秋田大学医学部卒業。幼少期に罹患した川崎病が原因で、心臓に冠動脈瘤という障害が残り、現在も治療を続ける。学生時代から激しい運動を制限されるなどの葛藤と闘うなかで、医者の道を志す。精神鑑定などの司法精神医学分野にも興味を持ち、現在は精神神経科勤務のかたわら、医療刑務所の医師としても勤務。障害とともに生きることで学んできた考え方と、精神科医としての知見を発信しており、X(旧ツイッター)フォロワー9万人。「世界一受けたい授業」や「ノンストップサミットコーナー」などメディアへの出演も多数。著書に3.5万部突破の『「誰かのため」に生きすぎない』(ディスカヴァー)『自分を幸せにする「いい加減」の処方せん』(ワニブックス)、『精神科医が教える 生きるのがラクになる脱力レッスン』(三笠書房)などがある。
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(精神科医 藤野 智哉)

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