「頭のいい子が育つ家庭」はここが違う…東大生の親が子供の勉強に関して絶対に口出ししなかったこと
2025年5月2日(金)16時15分 プレジデント社
※本稿は、西岡壱誠『逆転合格東大生の受験お悩み相談』(星海社新書)の一部を再編集したものです。
写真=iStock.com/takasuu
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/takasuu
■親は子供の勉強にどこまで干渉していいのか
Q 親として、どこまで子供に干渉していいか悩んでいます。「勉強しなさい」とどこまで言っていいのか、テストでもっといい点が取れるように指導していいものなのかどうか、悩んでいます。どこまでならいいというラインはあるのでしょうか。[中学1年生の子を持つお母様]
A 僕は親になったことがないので、自分が親からどう育てられていたのかをお話ししたいと思います。
自分はあんまり出来のいい子供ではなくて、先生から叱られて帰ってくることもあったし、テストが0点だったこともあります。三者面談でずっと怒られていたことだってありました。中学時代のある日、あまりにも僕が勉強しないので、当時の担任の先生が母親を呼んで僕に3時間も説教したんですよ。「どうしてお前はそんなにダメなんだ」ってめちゃくちゃ怒られました。
でも、そのとき母は何も言わなかったんですよね。普通、そんな何時間も先生から怒られたら、「なんであんた勉強しないの、先生の言う通りでしょ!」とか怒ったりしますよね。でも、何も言わなかったんですよ。僕、それが超怖くて、聞いてみたんです。「なんで何も言わないのか」って。
そしたら何と返ってきたと思います?
■だからダメ中学生の僕は東大に行けた
「怒られてたのはあんたでしょ」って言うんですよ。「私が、なぜ息子さんをもっと勉強させないのか、って怒られていたわけじゃないでしょ。あんたが、あんたの責任で怒られた。それだけでしょ」って。
それが逆に怖かったんですよね。3時間怒られたことよりも、そっちの方が怖かった記憶があります。
そんな僕は、高校に上がってから一念発起して東大を目指し、3回東大受験をしましたが、毎年1月になると、母親は家の近くの神社にお参りに行くんですよ。しかも結構な金額を包んで、お祈りしているんです。申し訳ないと思った僕は「毎回、自分の合格を祈願してくれてありがとう」って言ったんですよ。
そしたら母親は「は? あんたの合格なんて祈ったことは一度もないわよ」って言うんです。ええ⁉ と驚いて、「じゃあ何を祈っているんだ」と聞いたら、「あんたが、試験会場まで無事に辿り着けるように」と言うんです。
写真=iStock.com/Sanga Park
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Sanga Park
■成績が悪いのは母親のせいではない
「身体的な不調なく、風邪を引かず、雪で電車が止まったりせずに、試験会場まで無事に辿り着けるようにとは祈っているけど、合格不合格に関しては私は知らないわよ。あんたの人生でしょ。それこそ神様にだってそんなこと頼めないわよ」と。この母親には一生勝てないなあ、と思った記憶があります。
質問者さんの悩みにお答えするなら、干渉するのも、怒ったり叱ったりするのもOKだと思います。
でも、「結果」は子供だけのものにしてあげてください。親が干渉しすぎると、親の受験になってしまう。勉強させなかったことは母親のせい、みたいになってしまう。
部屋の掃除を親がしすぎると、大人になった頃には部屋の掃除が自分でできない大人になってしまう、というジレンマがありますが、それと同じように、勉強でどんな結果だったとしても、子供自身に受け止めてもらう必要があるんじゃないでしょうか。それこそが、親が子供にしてあげられることだと思います。
■子供の進路に対して親がやってはいけないこと
Q 子供の進路相談って、どこまで親が口出ししていいんでしょうか。子供から受験校に関して相談を受けて、「こういう大学がいいんじゃないか」「こんな学部だったらこんな勉強ができるよ」などと伝えたんですが、子供には「自分の大学選択を否定された」と感じられたらしく、最近あまり相談してくれなくなってしまいました。そんなつもりじゃなかったのですが、うるさく口を出しすぎてしまったのかもしれません。[高校1年生女子の子供を持つお母様]
A これ、よくあるご相談です。子供が親に進路の相談をして、うまくいかないパターンはたくさんあって、いろんな人からアドバイスを求められます。悩んでいるのは質問者さんだけじゃないですよ。
はっきり言って、10代の子供が親に相談すると、ほぼすべて「否定」されているように聞こえてしまうんですよね。
例えば、「親に進路のことを相談したら、反対された」と言ってくる子供って多くて、「うーん、君のところのお母さんってそんな人だったっけ?」と思ってお母さんと直接お話ししたら、「反対なんてしてませんよ、進路は子供が決めるべきだと思っています。でも、少し考えが甘いところがあったから、『もうちょっと考えたら?』とは言いましたけど」と言っていました。
これはまあ、よくある「行き違い」ですね。親は軽く言ったつもりでも、子供は反対されたと感じた、と。
もう少し具体的に考えていくと、例えば子供が「○○大学を志望したいんだけど」と相談したとして、親としては子供の将来を心配して、「本当にそこでいいの?」「合格できるかどうかはどれくらいの確率なの?」「その大学に行って、将来はどういう道に進もうと思っているの?」などと聞きたくなるでしょう。
■東大生の家庭に共通するルール
しかし、子供にはその質問のすべてが、「否定」のように聞こえてしまうんです。親としてはただ質問しているつもりでも、子供としては「その進路じゃダメなんじゃないの?」と言われているように感じてしまうのです。そりゃ、相談しにくくなりますよね。
我々は東大生の親の習慣も調べていますが、その結果、東大生の家庭には「進路に関しては絶対に否定しない」というルールがあることが多いということがわかりました。
どんなに親として受け入れがたい進路でも、まずは「良く考えたんだね」と言ってあげる。肯定した上で、「どうすればその道に行けるのか?」「その道に進むと仮定した上で、どうすればいいのか?」と、どうすればその進路を進めるのかを一緒に考えるのです。
もしその進路に進む上で問題があるのであれば、本人自身が気付けるように誘導してあげる。決して親の方から子供に「その道は無理なんじゃない?」とは言わず、子供が「ああ、これだと難しいから、こうした方がいいのか」と自分で気付けるように誘導してあげる。東大生の親御さんはそういう人が多いです。
質問に対するお答えとしては、「相談」というよりも相手の報告を受け入れる気持ちで聞くのがいいと思います。そして、詳細をもう少し詰めてもらうために報告に対して「質問」をするイメージですね。だから、一旦今は待ちましょう。そして、子供が報告してくれるタイミングが来たらそれを受け取りましょう。
■受験間近の子供に犬の散歩をさせたワケ
Q 浪人生の子供を持つ母親です。子供はちゃんと勉強しているのですが、今年合格できなかったらと思うと私もすごく不安です。私が子供にしてあげられることは何かあるでしょうか?[浪人生男子の子供を持つお母様]
A 「笑顔でいること」、これ以外にはないと思います。親がとにかく明るい状態でいることは、きっとプラスになるはずです。
例えば僕の場合、浪人中ってめっちゃ暗かったんですよね。浪人して合格するイメージがまったく湧かず、精神的に非常に落ち込んでいる僕に対して、母は朝になると勝手に部屋に入ってきて、カーテンを開けて窓を全開にして、「とにかく日光を浴びなさい」って言ってました。
また、どんなに受験が近付いてきても、犬の散歩に駆り出されました。「僕は勉強しなきゃいけないんだけど……」と愚痴を言っても、「あんただって、家族として犬の世話くらいしなきゃダメでしょ」と怒るんですよ。
西岡壱誠『逆転合格東大生の受験お悩み相談』(星海社新書)
そうやって犬の散歩に一緒に行っても、僕の心はまったく晴れません。ため息をついたり、「もうダメだ」と口にしたりして、どんよりした空気で散歩していました。そんなときには、母に「うるさい」と叱られるのです。
ちょっとでもネガティブなことを口にすると、「私まで気分が悪くなるから、そういうことを言うな」と。
そして、「今度そうやって後ろ向きなことを言ったら、その都度、お小遣い100円ずつ減らすからね」と言うのです。そして散歩中にネガティブなことを言うたびに、これみよがしに「あ、チャリンね」と言っていじってくるんですよ。
今思うと、ああやって親がポジティブに振る舞ってくれていたことが一番良かったと思います。母親が暗い顔をしていると、それが子供にも伝播することだってあります。無理やりにでもポジティブに振る舞って、嫌がられてもいいからぐいぐい子供を外に連れ出すこと。これが一番じゃないでしょうか。
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西岡 壱誠(にしおか・いっせい)
現役東大生 カルペ・ディエム代表
1996年生まれ。偏差値35から東大を目指すものの、2年連続で不合格に。二浪中に開発した独自の勉強術を駆使して東大合格を果たす。2020年に株式会社カルペ・ディエムを設立。全国の高校で高校生に思考法・勉強法を教え、教師に指導法のコンサルティングを行っている。日曜劇場「ドラゴン桜」の監修や漫画「ドラゴン桜2」の編集も担当。著書はシリーズ45万部となる『東大読書』『東大作文』『東大思考』『東大算数』(いずれも東洋経済新報社)ほか多数。
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(現役東大生 カルペ・ディエム代表 西岡 壱誠)
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