【精神科医が教える】「高みを目指す」ことで、知らずにハマる“落とし穴”とは?
2025年4月24日(木)6時10分 ダイヤモンドオンライン
【精神科医が教える】「高みを目指す」ことで、知らずにハマる“落とし穴”とは?
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Photo: Adobe Stock
「高みを目指す」という考え方
よく「高みに登りたい」とか「お互いを高め合いたい」といった表現を耳にすることがあります。私自身も以前はそういった言葉を使っていたことがあります。しかし、どうにもこの考え方がしっくりこないのです。
「高みを目指す」という言葉には、裏を返せば「低い状態」があることを前提とした考え方が含まれています。つまり、自分が高みに登ったときに、それ以外の人を下に見てしまうことにつながるのではないかという疑問が生じるのです。
「そんなことはない」と反論されるかもしれませんが、言葉の裏には無意識のうちにそうした前提が隠れていることが多いのです。
人間に上下はない
私の考えでは、人間に上下はなく、単純に「自分にとって関わると良い人」と「そうでない人」がいるだけです。
シンプルに考えれば、関わりたい人と関わり、関わらないほうがよい人とは距離を置く。ただそれだけのことなのです。
しかし、人はそこに余計な感情を付け加えてしまいます。関わりたくない人に対して批判的な感情を抱いたり、恨んだりすることで、シンプルな関係性が複雑になってしまうのです。“感情の加工”を減らせば、もっと楽に人間関係を考えられるのではないでしょうか。
「高める」よりも「こうなりたい」で考える
「自分を高めたい」という気持ち自体は理解できますが、「高い」「低い」という軸で考えるのではなく、「これができるようになりたい」「こういう気持ちの持ち方をしたい」といった具体的な目標に置き換えたほうが健全です。
人は単純なものではなく、良いところもあれば悪いところもあり、それは環境によって変わることもあります。ある場所では優れていると評価されても、別の場所ではそうではないかもしれません。
価値観が変わることで「高い」「低い」という評価も変わってしまうため、その基準自体があいまいなものなのです。
大切なのは「自分軸」
最も大事なのは、自分自身がどうしたいのかという「自分軸」を持つことです。自分が軸なのだから、高いも低いも関係ありません。
「自分がどうしたいか」「自分が何をすれば楽しく快適に生きられるか」——この視点が重要なのです。
「高みに登る」という考えが浮かぶときは、一種のマウンティングが無意識に働いている可能性があります。マウンティングの思考が生まれる背景には、何らかのストレスや心の疲れがあるのかもしれません。
「高みを目指したくなる」ときは要注意
「もっと高みに行きたい」と思うとき、自分の内面を振り返ることが大切です。もしかすると、本当は別のところにストレスや悩みがあり、それを埋めるために「高みに登りたい」と考えているのかもしれません。
だからこそ、もっとシンプルに、自分のやりたいことを考え、それに向かって進めばいいのです。もし「高み」という発想が浮かんできたら、それは「お疲れのサイン」かもしれません。
※本稿は『精神科医Tomyが教える 1秒で不安が吹き飛ぶ言葉』(ダイヤモンド社)の著者による特別原稿です。