北朝鮮の自走砲、ウクライナ国境近くのロシア基地に配備…前線の戦力不足を補完か

2025年4月20日(日)5時0分 読売新聞

北朝鮮軍の170ミリ自走砲(米陸軍のホームページより)

 ロシアによるウクライナ侵略を巡り、北朝鮮の170ミリ自走砲がウクライナ国境に近いロシア領内の基地に配備されていたことが、読売新聞の衛星画像分析でわかった。北朝鮮は、継続的に露側に兵器を供給しており、前線で武器や弾薬が枯渇する露軍の「継戦能力」を支えている実態が明らかになった。

 人工衛星を運用する米宇宙企業マクサー・テクノロジーズが昨年11月26日に露西部サラトフ州・イワノフスキー基地を撮影した衛星画像を本紙が分析したところ、北朝鮮の自走砲と特徴が一致する2両が確認された。2両の寸法を調べると、米陸軍がホームページで公開している北朝鮮の自走砲(長さ14・9メートル、幅3・27メートル)とほぼ一致。北朝鮮製はロシア製に比べて長い砲身が特徴で、画像の車体と砲身の長さを比較した結果、北朝鮮製だと判断した。

 ロシアの軍事・安全保障政策が専門の小泉悠・東大先端科学技術研究センター准教授も2両について分析したところ、車体や砲身の特徴から、北朝鮮製の可能性が高いと指摘した。

 イワノフスキー基地はウクライナ国境から約450キロ・メートル離れている。自走砲の射程は約40〜60キロ・メートルと推定され、ウクライナ軍が使用している地対地ミサイルなどの射程外にもあることから、2両は砲兵の射撃訓練などに使われているとみられる。自走砲の周囲には移動の際に残った車輪の跡があり、活発な活動の様子もうかがえる。

 ウクライナ政府高官は、北朝鮮の自走砲が既に実戦に投入されたとの見方を示している。米国の軍事オンラインメディア「ザ・ウォー・ゾーン」は今年1月22日、ウクライナ国防省の情報機関トップが、北朝鮮が過去3か月間にロシアに提供した自走砲は120両に上ると述べたと報じた。

 米経済誌フォーブスによると、2022年2月にロシアがウクライナに侵略を開始した時点で2000両あった自走砲は、24年12月頃には戦闘で800両以上を失った。さらに交換用の砲身の不足などから数百両が使用不能だという。

 ウクライナ侵略を巡っては、米露間などで停戦交渉が進んでいるが、戦闘はいまも続く。ロシアは前線で不足する火力を北朝鮮から自走砲の供与を受けることで、補完している模様だ。

 小泉氏は「北朝鮮は砲兵も自前で持ちこんでいるとみられ、丸抱えでこの戦争に参戦している可能性がある」と指摘している。

 ◆170ミリ自走砲=北朝鮮が開発した、自走が可能な車体に口径170ミリの大砲を搭載した兵器。5分間に1〜2発程度の発射が可能で、北朝鮮はソウルや韓国軍、在韓米軍の基地を狙うため、軍事境界線付近に自走砲を多数配置しているとされる。

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