北朝鮮女性、中国から「大量帰国」 外貨収入が大幅減少

2025年5月17日(土)16時2分 デイリーNKジャパン

海外に派遣された北朝鮮労働者の実数を正確に把握するのは困難であるが、国連の北朝鮮専門家パネルが2024年に発表した報告書によれば、中国やロシアを含む40か国で、10万人以上が働いていると推定されている。


このうち、中国・遼寧省で働いていた北朝鮮労働者の相当数が、最近になって帰国したことが明らかとなった。デイリーNKの中国情報筋がこの動きを伝えている。



情報筋によれば、昨年下半期から先月末にかけて、遼寧省で働いていた北朝鮮の女性労働者たちが段階的に帰国しており、それに伴って彼女らを雇用していた中国企業では操業を停止したり、他地域へ移転したりする事例が相次いでいるという。


操業中止に追い込まれた工場の多くは、100人未満の北朝鮮労働者を雇っていた小規模な事業所である。対照的に、100人以上を雇用していた大規模な工場は操業を継続しているが、こちらの労働者も年内には帰国する見通しであるとされる。


労働者たちは不穏な空気の中でも作業を続けており、一方で帰国時に持ち帰るための贈り物の購入など、帰国準備にも追われているという。


帰国が進んでいる背景として、これらの工場が中国の住宅地の近くにあり、労働者の生活実態が外部から比較的詳しく観察されやすかったことが、北朝鮮当局にとって負担となっていた可能性が指摘されている。


このような「秘密主義の代償」として、北朝鮮は多くの外貨収入を失う結果となった。


彼女らの勤務先は、主に衣料品、水産加工、電子部品の工場であり、月収は平均2000元(約4万2000円)から2300元(約4万8300円)であった。このうち半分以上が「忠誠の資金」として当局に上納されていた。


今回の帰国により、北朝鮮当局の外貨収入が減少している可能性があるが、現在のところ、遼寧省への新たな労働者派遣の動きは確認されていない。


一方で、北朝鮮当局は吉林省にある衣料品・水産加工工場には引き続き労働者を派遣しているとされている。吉林省の工場は住宅地と距離があり、一般人の接近が困難であるため、遼寧省の工場よりもセキュリティ上の管理がしやすい環境と評価されている。


ただし、吉林省に新たに派遣された労働者の数は、遼寧省から帰国した労働者の5分の1にも満たない規模にとどまっていると、情報筋は伝えている。


北朝鮮当局は、ロシアへの労働者派遣を拡大する一方で、加工業労働者に代わってIT技術者を中国に派遣するという形で、新たな外貨獲得ルートの確保を模索しているものとみられる。


情報筋は、「中国に派遣されていた女性労働者たちが稼いだ外貨収入は、ロシアに派遣されている男性の建設労働者たちに比べて少額である」とし、「北朝鮮としても中国との関係や経済的利益を考慮し、新たな外貨獲得戦略を立てる必要があると判断しているのだろう」と述べた。

デイリーNKジャパン

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