監督交代が多いJ1クラブ5傑。そろそろ首筋が寒い?

2025年4月30日(水)18時0分 FOOTBALL TRIBE

柏レイソル(左)京都サンガ(右)写真:Getty Images

横浜F・マリノスはAFCチャンピオンズリーグエリート準々決勝で、4月26日にサウジアラビアのアル・ナスルと対戦(プリンス・アブドゥラー・アル・ファイサル・スタジアム)し、1-4で敗退した。


4月18日に就任1年目のスティーブ・ホーランド監督を解任したばかりの横浜FM。暫定的にパトリック・キスノーボ氏が指揮を執っているが、これで監督交代後も2戦2敗。いわゆる“解任ブースト”も効かずにJ1リーグでは最下位に沈んでいる。


横浜FMのシーズン途中の監督交代は2年連続だ。かつて浦和レッズのテクニカルダイレクター(TD)を務め(2019-2024)、2024年にシティ・フットボール・グループ入りし、今年から横浜FMのスポーティングダイレクター(SD)に就任した西野努氏はいきなり試練に直面している。昨2024シーズン途中に解任されたハリー・キューウェル元監督、そしてホーランド前監督とトップリーグの監督としての実績がない指揮官にチームを託し、低迷を招いたフロントの責任も問われてしかるべきだろう。


今2025シーズン、リーグ戦も約3分の1を消化し、J1・J2・J3全てのカテゴリーが混戦状態だ。下位に低迷するクラブもまだ浮上の余地があることで、監督交代は横浜FMのみだが、この先浮上のきっかけが掴めないとなれば大ナタが振るわれるケースもあるだろう。


特に今シーズンで降格してしまうと、来季に予定されている昇降格のない「0.5シーズン」を挟み、秋春制が導入される2026/27シーズンまで下部リーグで戦わなければならなくなる。それだけは避けたいクラブが夏以降、監督交代に踏み切る事態が続出することも十分に考えられる。


ここでは、現在J1に所属するクラブで、Jリーグ参入以来監督をコロコロと変えた過去を持つクラブを挙げ、その“暗黒の歴史”を紹介したい。




ヴィッセル神戸 写真:Getty Images

ヴィッセル神戸(1997シーズン以降のべ32人)


クラブが創設され、初練習当日の朝、阪神・淡路大震災に見舞われるという不運から始まったヴィッセル神戸。震災の影響で運営会社の筆頭株主だったダイエーが撤退する一方、チームは当時デンマーク代表FWミカエル・ラウドルップの活躍もあり、1997シーズンにJリーグに参入する。


しかし経営は苦しく、2003年に運営会社が東京地方裁判所に民事再生法の適用を申請。クラブは存続の危機に立たされると、2004年に楽天CEOの三木谷浩史氏が買収し、解散は何とか免れた。


2度のJ2降格を経験しながらも着実に実力を付け、いまや強豪クラブの1つに数えられるまでになったが、三木谷社長就任以降短期間での監督交代に拍車が掛かり、何とのべ32人。その平均任期は約0.93年と1年にも満たない。


シーズン途中での交代も最多23回にも上る。最初の9年間では7人、シーズン途中の交代が3回だった一方、三木谷氏が買収した2004シーズン以降の18年半でのべ25人、シーズン途中の交代が20回に激増している。


2018年、バルセロナから元スペイン代表MFアンドレス・イニエスタ(2018-2023)を獲得したのを皮切りに、元スペイン代表FWダビド・ビジャ(2019)、MFセルジ・サンペール(2019-2023)、FWボージャン・クルキッチ(2021-2022)、DFトーマス・フェルメーレン(2019-2021)と、次々と元バルセロナ所属選手を獲得。フアン・マヌエル・リージョ監督(2018-2019)の下、“バルサ化”を目指したかと思ったら、成績不振によって方針変更を余儀なくされ、監督人事は迷走に次ぐ迷走を続けた。


皮肉なことに成績が上向いたのは、3度目の就任となる吉田孝行現監督がバルサ化を捨て、欧州を経験したFW大迫勇也やFW武藤嘉紀らを中心とするチーム作りをしてからのこと。その土台作りをした監督もまた日本人の三浦淳寛監督(2020-2022)だった。


三木谷氏は、オーナーを務めるプロ野球・楽天ゴールデンイーグルスでも監督交代を繰り返す。“カネは出すが口も出す”オーナーの典型とあって、昨季J1連覇を果たした吉田監督も、今季の成績次第ではあっさりと更迭される可能性もあるだろう。




セレッソ大阪 写真:Getty Images

セレッソ大阪(1995シーズン以降のべ28人)


今季オーストラリア人指揮官のアーサー・パパス新監督を迎えたセレッソ大阪も、監督交代の多いクラブだ。2017シーズン以降J1に定着しているが、それ以前は降格と昇格を繰り返す“エレベータークラブ”だったことも要因だろう。


1995シーズンのJリーグ参入以来、パパス監督で28人目。シーズン途中の監督交代も11度を数える。加えて、レヴィー・クルピ監督は3度も就任している(1997、2007–2011、2012–2013)。さらにクルピ監督は宿敵ガンバ大阪の監督も務めた(2021)唯一の指揮官でもある。


2021シーズン途中から就任した小菊昭雄監督(現サガン鳥栖監督)を勇退させた上でパパス監督を招聘し、タイトル奪取を目指し攻撃サッカーを志向したものの、フタを開ければ降格圏もチラつく順位(現時点15位)とあって、またもや“監督ガチャ”の時代に戻ってしまう危険性がある。


京都サンガ 写真:Getty Images

京都サンガ(1996シーズン以降のべ24人)


京都サンガは、1996シーズンからJリーグ入りし、2部制が導入された1999シーズン以降、J1で12シーズン目を戦う。一方、15シーズンにも上るJ2暮らしが長かったことで、なかなか監督人事が安定しないクラブだった。


現在の曺貴裁(チョウ・キジェ)監督は、クラブ最長の5シーズン目を迎え、チームも首位争いを繰り広げるなど絶好調だ(現時点3位)。曺監督自身は、京都でのプレー経験はないが、進学校としても知られる京都府立洛北高校出身とあって、ようやく理想の指揮官に出会えた感が強い。


京都唯一のタイトルである2002年天皇杯優勝時はゲルト・エンゲルス監督だったが、基本的には外国人監督との相性が悪いクラブでもある。曺監督は湘南ベルマーレの監督時代(2012-2019)、パワハラ行為によって1年間のコーチライセンス停止処分を受けた過去があるが、同じ過ちを犯さない限り、長期政権を築く可能性もあるだろう。




清水エスパルス 写真:Getty Images

清水エスパルス(1993シーズン以降のべ24人)


1993年のJリーグ創設から参加している「オリジナル10」の1つで、元々はそれほど監督交代を繰り返すクラブではなかった清水エスパルス。


しかし、長谷川健太監督(2005-2010)、アフシン・ゴトビ監督(2011-2014途中)の後、2シーズン連続で監督交代を繰り返し、J2降格も経験すると、2019シーズンから2023シーズンまで5年連続で監督を途中解任し、方針に一貫性のないクラブというイメージが定着してしまう。


監督途中交代11回という記録は、オリジナル10の中では浦和レッズの10回を超える“不名誉なJ記録”だ。浦和と違う点を挙げれば、サポーターが求める優勝という目標に届かなかった末での監督交代である浦和に対し、清水の場合、いわゆる“尻に火が付いた”状態での監督交代が目立つ点だろうか。


2度目のJ2を戦い、昇格プレーオフで敗れた2023シーズン末、秋葉忠宏監督を続投させた人事には、“解任慣れ”した清水サポーターは驚いただろう。しかし翌2024シーズンにJ2優勝を果たし、J1を戦う今2025シーズンも堂々たる戦いぶりを見せているとあって、その決断は誤っていなかったと感じさせる。


そのキャラクターから“体育会系”の指揮官に見られがちだが、フォーメーションも臨機応変で、可変式システムも多用するなど“隠れた戦術家”の顔も持ち合わせている秋葉監督。サッカーの中身にも厳しい清水サポーターからも支持されていることで、当分は安泰だろう。




柏レイソル 写真:Getty Images

柏レイソル(1995シーズン以降のべ19人)


今2025シーズン、徳島ヴォルティス(2017-2020)、浦和レッズ(2021-2022)の監督を歴任したスペイン人指揮官、リカルド・ロドリゲス監督を新指揮官に迎え、好調な序盤戦を戦っている柏レイソル(現時点2位)。


柏の監督といえばネルシーニョ監督の名が最初に浮かぶが、実際、2度就任し(2009途中-2014、2019-2023途中)、J1(2011)天皇杯(2012)ルヴァン杯(2013)とタイトルをもたらしたとあって、今でもサポーターからは“クラブ史上最高の監督”と認識されている。


問題はその他の監督だ。JFL時代、元ブラジル代表FWカレカとミューレルを獲得し、ブラジル路線をひた走っていた柏だが、ネルシーニョ監督以外のブラジル人監督で成功と呼べるのはニカノール監督(1996-1997)のみ。しかし1998シーズン、ヴェルディ川崎から引き抜かれてしまう。


日本人監督で成功と呼べるのは、クラブ初タイトルとなる1999年のナビスコ杯(現ルヴァン杯)を獲得した西野朗監督(1998-2001途中)と、J2時代の2006シーズンに就任し、1年でのJ1復帰に導いた石崎信弘監督(2006-2008)の2人くらいだ。


内部昇格の形で就任した吉田達磨監督(2015)も下平隆宏監督(2016途中-2018途中)も短期で退任し、皮肉なことに他チームで手腕を発揮した。


シーズン途中での監督交代は9回を数え、未だにネルシーニョ監督時代の“幻影”を追っている感のある柏。徳島時代にはJ2優勝(2020)、浦和時代には天皇杯優勝(2021)に導いたロドリゲス監督が柏にタイトルをもたらせれば、その幻影からサポーターを解放させるだけではなく、次期日本代表監督候補にも名前が挙がる可能性すらある。

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