巨人・井上「得意だと思い込んで投げるって杉内さんに教わった」雨中の力投で甲子園初先発初勝利
2025年5月22日(木)5時20分 スポーツ報知
雨に負けず、力投する井上(カメラ・今成 良輔)
◆JERA セ・リーグ 阪神4ー5巨人(21日・甲子園)
井上はしたたり落ちる雨粒を拭い、ポンとグラブをたたいた。4—0の4回。1死二、三塁で大山に左前適時打を浴びたが、崩れなかった。続く前川を投ゴロ、最後は梅野をフォークで空振り三振に仕留めて、勢いよくベンチへ駆けた。
6回84球、6安打2失点で今季3勝目、甲子園ではプロ初勝利。これで8試合に先発し7度目のクオリティースタート(QS=6回以上自責3以内)達成と抜群の安定感でチームをけん引する左腕は「今のところの勝ち星で一番うれしい。自分の中で阪神に勝ててなかったので、すごいうれしい」と屈託なく笑った。
雨にも負けなかった。マウンドはぬかるみ、ユニホームも重くなる中、最速149キロの直球にスライダー、フォークなどを織り交ぜ5回以外毎回となる7K。4回に大山の左前打で1点を失い、6回にも2死二塁から同じく大山に中前適時打を浴び「同じ打者にタイムリーを打たれたことは反省」。それでも「相手の特徴をより頭に入れて臨んだので、これで打たれたらしょうがないと割り切って」と大胆に攻めた。阿部監督も「何とか粘ってナイスピッチングだった」とたたえた。
憧れの地で勝利を挙げた。甲子園では救援での登板はあったが、先発は初めて。前橋商(群馬)時代も出場経験はなく「小さい頃からお父さんの影響で甲子園をテレビで見ていてとても行きたかった」とプロ入り後から登板を楽しみにしていた球場の一つだった。阪神ファンの応援に包まれ、マウンド状態も悪かったが「雨が得意だと思い込んで投げるって杉内さんに教わったので」と、のまれることなく腕を振った。
ともにローテを守る先輩の存在が支えだ。登板前には今季、前後でローテを回る山崎と相手打者の研究を行うのが日課。ともに手術を経験しリハビリ時期もかぶっていた。「定期的に病院に行くんですけど、やっぱり一緒に通ったことが思い出。そういう時期って一緒に誰かと過ごすものではないので特別です」。つらい時期に励まし合ってきた右腕の存在は大きい。「目標にして尊敬していくべき人。成績でも追いかけていく存在ですし、追いつきたい」と背中を追う。
自身の快投で次戦先発の先輩へいい流れでバトンを渡した。「やっぱりやられてばっかりではいけないので、絶対にやり返そうと思って投げていました。次のピッチングにも自信にもつながる大きい1勝だと思います」。たくましい背番号97が雨を吹き飛ばした。(水上 智恵)