佐藤琢磨、インディ500勝利へ邁進もピットで痛恨のタイムロス「自分のミス。続けられるならこのチャレンジを続けたい」

2025年5月26日(月)12時4分 AUTOSPORT web


 第109回インディアナポリス500マイルレースは、レイホール・レターマン・ラニガン・レーシングの佐藤琢磨が予選2番手のフロントロウを獲得し、日本のファンは大いに注目するレースになっただろう。


 日本だけでなく琢磨のフロントロウ獲得は、アメリカでも頻繁に話題に上り、48歳の史上最年長優勝なるか?という期待と共にベテランがどんなレースを展開をするのかは注目だった。



 チーム・ペンスキーが車両違反で後方に下がったことも琢磨に味方したであろうし、チップ・ガナッシ・レーシングのアレックス・パロウ、スコット・ディクソンをという強豪に対し実力で予選タイムが上回ったことも、琢磨の経験を裏付けるものだった。琢磨のスポット参戦を惜しみレギュラー参戦を望むジャーナリストさえいた。


 そんな中で琢磨はインディ500でどんなレースを見せるのか?



決勝日朝、HRC首脳陣と太田格之進大津弘樹らの表敬訪問を受けた佐藤琢磨とRLLチーム

 インディ500決勝当日はドライバーも忙しく、TVインタビューやスポンサーの訪問などでどんどんと時間が過ぎ、あっという間にレースの支度をする時間になった。


 同時に朝から冷え込んでいたインディアナポリスの空からポツポツと雨が落ち始めた。


 スタート進行は遅れることなく、国歌斉唱やBack home again in Indianaなどのセレモニーは予定通り進行していたが、肝心の“Drivers start your engine!”をコールはホールドされ雨を止むのを待った。


 およそ45分が進行が遅れたが、雨も止みレースをスタート出来る状態となって、33台のマシンに火が入りようやく隊列はスタートした。


 しかし予選10番手ペンスキーのスコット・マクラフランはコールドタイヤのウォームアップでウエービングしている最中にマシンを滑らせウォールにヒット。1周もレースをすることなく、マシンを降りることになった。


 グリーンランプが点く前にイエローコーションとなってしまったが、その後にグリーンとなっても5周めにマルコ・アンドレッティ(アンドレッティ・ハータ)がターン1でウォールにヒットして再びイエローとなってしまった。低い気温と路面温度はレース展開を難しいものにした。


 琢磨は最初のグリーンで3番手にポジションを落としたものの、その後プレマ・レーシングのロベルト・シュワルツマン、アロウ・マクラーレンのパト・オワードをパスして11周目にはトップに立ちリードラップを獲得する。


 今日の琢磨のクルマは速かった。フロントロウスタートから上位でレース展開することを予想した琢磨とチームの読みは当たっていたし、2番手のパト・オワードも琢磨を追い抜く気配は見せなかった。



序盤トップを走る佐藤琢磨

 1度目のピットインも、2度目のピットインも順調にこなし、ラップダウンでステイアウトしているクルマだけが琢磨の前を走っているような状態が続き、47周目には再びトップに返り咲く。


 レースの序盤は完全に琢磨が攻略していた。そう言ってもスピードウエイの30万人の観衆は異論を唱えなかっただろう。


 3度目のピットインとなる86周目。イエローコーションの中でピットに入った琢磨は、冷えたタイヤとブレーキにタイミングを誤りピットボックスをオーバーシュート。クルーが手押しでマシンを戻してすぐにタイヤ交換と給油を行った。


 イエローコーションでライバルたちも同時に大勢ピットに入ったことも災いし、わずかなタイムロスだったとはいえ、17番手までポジションを落とすことになってしまった。



3度目のピットインでオーバーシュート。ライバルがピットアウトするタイミングで取り残される琢磨

 上位以外ではなかなか追い抜きの難しい今のインディカーでは、致命的なポジションロスだった。


 その後の2回のピットインでは何事も起こらなかったが、レース中盤以降は長いコーションも少なく、簡単にポジションを上げることは出来なかった。


 最後にイエローコーションが振られたは、ホワイトフラッグが振られた最後の周だった。アロウ・マクラーレンのノーラン・シーゲルがウォールにヒットしたためにイエローチェッカーとなり、琢磨もポジションをひとつ上げて11位で16回目のインディ500のチェッカーを受けることになった。


「フロントロウからスタートして、前半はペースが良くてピットアウト後もトップのままでいられたのですが、3回目のピットストップでピットボックスに止まれず行き過ぎてしまいました。ライバルも状況は同じなので言い訳にはなりませんが、イエローでタイヤとブレーキが冷えていて止まりきれませんでした」


「自分のミスです。チームはこのインディ500に向けて本当に素晴らしい仕事をしてくれました。感謝したいと思います。それと今日優勝したチップ・ガナッシのチームとアレックス・パロウには心より祝福したいと思います。まだこの後のことは何も決まっていませんが、続けられるならこのチャレンジを続けたいと思います。応援ありがとうございました」


 年に一度のインディ500。年に一度しかない琢磨のレース。それだけに誰もが一喜一憂し、いろいろなドラマが生まれた。今回のレースは3度目の栄冠に大きな期待がかかっていただけに琢磨本人にも、ファンにとっても落胆は大きいだろう。


 大きな喜びと失望の繰り返しこそがインディ500なのだと改めて感じた2025年のインディ500だった。

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