ユニバ代表をかけた男子5000mの戦い、ラストを制した松井は派遣標準記録に届かず、2位に入った鈴木が日本代表に

2025年5月3日(土)6時1分 JBpress

(スポーツライター:酒井 政人)


1年生と2年生が最後の直線勝負

 ワールドユニバーシティゲームズ(以下ユニバ)の代表選考を兼ねた日本学生個人選手権。男子5000mは“箱根駅伝未経験者“が表彰台を占めた。

 レースは鈴木琉胤(早大1)が先頭に立つと、2周目に平松享祐(青学大3)が前に出て、1000mを2分42秒で通過。2000mを過ぎて、先頭集団は4人に絞られる。3000mの通過は8分17秒で鈴木、宇田川瞬矢(青学大4)、大島史也(法大4)、松井海斗(東洋大2)の順で進んだ。

 4000mを前に宇田川と大島が引き離されて、残り2周は鈴木と松井の争いに。ラスト1周の鐘が鳴り、鈴木がペースを上げるも、松井は離れない。ふたりは最後の直線で大接戦を演じて、残り20mで松井が逆転。ともに大会記録(13分45秒20)を上回り、松井が13分44秒59の自己新Vを飾った。2位の鈴木が13分44秒83、3位は大島で13分56秒53だった。

 優勝した松井は、「本当は残り400mで仕掛ける予定だったんですけど、先に(鈴木に)仕掛けられて、残り200mでもう1回動かされて苦しいレースになりました。でも、1年生には負けられない、という気持ちもあったので、ラストスパートで差し切ることができて良かったです」と笑顔を見せた。しかし、ホームストレートの強い向かい風に記録を阻まれ、ユニバの日本代表派遣標準記録(13分40秒00)に届かず、「そこは悔しいですし、課題が残りました」と話した。

 ユニバ代表を逃したが、復活を期する松井にとって順調なシーズンインになったようだ。

「昨季は夏からカラダの状態が良くなくて、首(頚椎椎間板ヘルニア)の手術もしたんです。姿勢の改善をして、12月あたりから練習ができるようになり、良い状態まで持ってくることができました。今年は夏合宿で距離をしっかり踏んで、駅伝シーズンでもしっかり走れるようにしたいです」

 今年の箱根駅伝は5区に登録されたが、当日変更で欠場。チームは主力数人を欠く窮地を乗り越えて、20年連続シードを獲得した。

「走れずに悔しかったですけど、必死につないで9位を確保してくれました。今季はチームに恩返しができるようにという気持ちが強いです。トラックは関東インカレと全日本大学駅伝選考会でチームに貢献する走りをしたい。そして三大駅伝はすべてに出走して、箱根は区間賞を目標にやっていきたいと思います」

 昨年の関東インカレ1部5000mで1年生最上位の5位に食い込んだ松井が“鉄紺の新エース“に駆け上がる。


「大学の洗礼」を受けるもスーパールーキーが2位

 優勝した松井以上にインパクトを残したのが早大のスーパールーキーだ。昨年のインターハイ5000mで日本人歴代最高の13分39秒85をマークして、全国高校駅伝1区でも日本人歴代最高の28分43秒で区間賞。3月29日のモーリー・プラント競技会5000mでU20日本歴代3位の13分25秒59を叩き出した鈴木琉胤が大学デビュー戦で高校時代のスタイルを貫いた。

「大学でも高校でやってきたような積極的なレースは続けようと思ったので、そこは絶対に曲げないつもりでした」

 すぐにトップに立ち、平松が前に出たときは、「タイムが落ちてなければそのままでいいかなと思っていたんですけど、つくのが嫌だったので、途中で我慢できなくなって、パッと出ました」と再び、鈴木がフロントに立ってレースを進めた。

 しかし、最後は松井のキック力にかわされた。

「誰も前に出させないように走っていたんですけど、だんだん体力がなくなってきました。自分が引いていて、ついてこられないかなと思ったんですけど、大学の洗練を受けましたね。でも初戦としては良い経験になったかなという感じです」

 優勝は逃したが、強風のなかでもレースを果敢に引っ張った“強さ“は大物感を漂わせていた。そして鈴木が5000mのユニバ代表(内定)に唯一、選出された。

 スーパールーキーとして大活躍が期待されるが、鈴木は大学4年間の目標を冷静かつ大胆に考えている。

「今シーズンは新しい環境になるので、タメの時期ととらえています。3年目でしっかり記録を出して、4年目にトラックでロス五輪を狙いたい。5000m12分台、10000m26分台を目指しつつ、世界と戦える選手になりたいです」


箱根駅伝を欠場した法大のエースが3位

 ユニバ代表を本気で目指していた大島史也(法大4)は3位に終わり、目を赤くした。

「オリンピックや世界陸上は自分の力ではまだまだ。学生で日の丸を背負うのはユニバしかないので、シーズン始まったばかりですけど、この試合を重要視していました。優勝というかたちで決めたかったのに代表を逃してしまい悔しいです」

 大島は昨季、5000m(13分35秒33)で11年ぶり、10000m(28分10秒01)で24年ぶりに法大記録を更新して注目を浴びた選手だ。しかし、1区を予定していた箱根駅伝はクリスマスイブに「発熱」して、「体調不良」で出場できなかった。

「体調不良は年明けに回復したんですけど、それまでずっと調子が良かった分、ダメージが強くて全然走れなくなったんです。キロ3分ペースで3km走れないくらいの状態が2月まで続きました。でも坪田智夫駅伝監督に『ユニバ代表を目指したい』と伝えると、別メニューを組んでいただきました。まずは土台を作り、3月に入って状態も上がってきて、そこからは右肩上がりで完璧な状態で迎えられたんです」

 自信を持って挑んだレース。「残り4周」で勝負をかけるプランだったが、余力は残っていなかった。ユニバ代表を逃した悔しさをバネに大島は最終学年の活躍を誓っている。

「チームは予選会をふたつ控えています。最上学年と副主将という立場なので絶対に突破したい。個人としては関東インカレの5000mと日本選手権の5000mで結果を残したいと思っています」

 法大の新スピードキングはまず5000mで勝負をかける。

筆者:酒井 政人

JBpress

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