断捨離提唱者やましたひでこ「モノであふれる原因は『とりあえず』という決断の保留。モノに埋もれて体も心も動かなくなる前に始めるべきは…」
2025年5月22日(木)12時29分 婦人公論.jp
「考えるより、まず行動。一点突破から始めて、リバウンドしてもまた片づければいいのです」(やましたさんの沖縄の家/撮影:高野大(フォトアートたかの))
片づけに悩む多くの人に、断捨離の手ほどきを続けて25年。やましたひでこさんが、これからのモノとの向き合い方や、自己肯定感を上げて人生をよみがえらせる知恵を伝授します(構成:山田真理 撮影:洞澤佐智子)
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<前編よりつづく>
まずは家のなかをぐるっと見回して
断捨離というと、「捨てる」という言葉のインパクトが大きく、抵抗感を持たれることもあります。でも、「とにかくモノを減らす」「必要最低限だけ残して全部捨てる」というのとは違うので、ご安心を。捨てるべきは、「家の空間を圧迫している、必要のないモノ」です。
ここで、なぜ家に不要なモノが増えていくのか、人生を4段階に分けて考えてみましょう。
まず、生まれてから成人するまで、いろいろなモノを手に入れて世界を広げることで学んでいく「散らかし期」。2番めは、結婚・出産・育児などで新たに増えたモノを収納していく「突っ込み期」。
そして、3番めとして、50代以降、収納されたモノがさらにどんどん奥へ入り込む「溜め込み期」。4番めは、70代、80代と、収納にモノが入っていることもすっかり忘れ去られる「埋もれ期」。
これを放っておくと、「忘却グッズ」だらけになり、モノが出ていかない。人生の最後まで、モノに家が乗っ取られている状態になってしまいます。
ご自身が暮らす家のなかをぐるっと見回してみてください。使っていない割箸やプラスチックのスプーン、チラシやお店の紙袋、仕舞い込んだ趣味や健康関連グッズ、来客用のふとん、自立した子どもが置いていったモノ……。ずいぶん自分には不要なモノがあるのでは?
「ゴミ同然のモノ」「生活スタイルの合わないモノ」「壊れているモノ」「過去の思い出」などは手放していい。今の生活に活かせていないなら、不要なモノです。それらを「出す」ことによって、「自分に本当に必要なモノ」を手に入れることができるようになります。
「食事や仕事が終わったテーブルの上は、ゼロに戻すと、次の作業がスムーズ」(やましたさんの沖縄の家/撮影:高野大(フォトアートたかの))
体を動かすと、心も動くように
2018年からはBSのテレビ番組が始まって、より幅広い方々の片づけの悩みに対応するようになりました。片づけについて真剣に考えたことがないという人にも出会う機会が増えて、私自身も楽しく、新鮮な学びがあると感じています。
家がしっちゃかめっちゃかになっている人に共通する口癖があって、それは、「どうしてこうなっちゃったんでしょう」。不思議と皆さん、他人ごとなのです。
理由は何かと考えてみると、「とりあえず」という決断の保留。「とりあえずモノを手にして、とりあえずそのあたりに置いて、とりあえず捨てない」。それを繰り返せばモノが溜まってあふれるのは当然です。この状態をつくっているのは自分、ということに気づいていない。
ではなぜ、今まで気づけなかったのか。モノが空間に詰まって動かなくなると、それを触らなくなり体も動かさなくなります。体を動かさないと、頭が働かないので思考停止に陥る。思考が止まると、心が動かなくなる。
自分のことや周りのことに無感動、無関心だから、家がひどい状態になっても、他人ごとのように感じるのだと思います。
そんな体も心も身動きできない状態の人に、どうやって断捨離を進めていただくのか。モノを溜め込みすぎた人のなかには、断捨離に踏み出すのが「怖い」という方もいらっしゃいます。モノの洪水に溺れて何もできない状態ですから、レスキューが必要だと思いました。
レスキュー隊としての私の役割は、まずその方の「視点」の変化を促すこと。「断捨離=捨てる」というイメージを強くお持ちの方だと、「これを全部捨てるのは絶対に無理だ」とあきらめがちです。
そこで断捨離を体にたとえて、「私たちは食物を体に取り入れて生きていますよね。でも入れるばかりじゃなく、出すことも必要。出さないから詰まっておかしくなるんですよ」とお伝えすると、すんなりとわかっていただけるのです。
さらに質問という形で確認させていただきます。「それは大事なモノなんですね?」と聞くと、「そういわれれば、そうでもない」と答える人はけっこういらっしゃる(笑)。つまり質問されたことで、止まっていた思考や鈍った感性が動き出して、取捨選択ができるようになるわけです。
具体的な方法として、番組でも取り入れているのが、一点突破。引き出し1つからでいいので、まず入っているモノを細かく《分解》します。そうして平面に並べ替えると、俯瞰して眺めることができる。
すると「こんなにモノが詰まっていた」ということが自覚できるし、いる・いらないと《分別》しやすくなります。そうして分解と分別を3回ほど繰り返せば、自分が本当に好きで心地いいモノだけが残っていく。
引き出し1つでも空間の余地ができると、思考にもゆとりが生まれます。それが自分自身を俯瞰することにつながり、片づけを「自分ごと」として実感できるようになっていくのです。
<後編につづく>
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