水曜の午後にはもうしんどい…「5月バテ」の30代サラリーマンの集中力を大復活させた"1枚の紙"

2025年5月14日(水)10時15分 プレジデント社

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/RRice1981

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仕事に集中するにはどうすべきか。新刊『「わかる」から「動ける」まで 言葉の解像度を上げる』がヒット中の浅田すぐる氏は「業務内容やタスクへの親近感・一体感が集中のカギになる。“何のためにこの仕事をやるのか”を紙に書き出してみるのがいい」という――。

■上司のちくちく言葉に悩まされ…


「五月病」と言われる時期になってきました。


以前、私の主宰する社会人向けの学習コミュニティの受講者さん(30代前半の営業職の方。仮にAさんとしておきます)から、次のような相談を受けたことがあります。


Aさんは体力には自信がないというタイプのビジネスパーソンで、毎週水曜の午後くらいから早くもしんどくなってしまい、それでもなんとか金曜まで働いたら、土日はほとんど寝て過ごしているような状態だったそうです。


当然、毎年ゴールデンウイーク明けからお盆までのタイミングが最大の難関で、この時期になると上司から、「最近ちょっと気が緩んでるんじゃないの? しっかりしなよ」「ボーっとしてないで、もっと真剣に取り組んでください」「テキパキ動いて」といった指摘を受けることが多くなっていました。


「上司から“もっと集中しろ”と言われるんですが、いまいち目の前のタスクに専念できなくて……」と、Aさんは悩んでいました。


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もしかするとあなたもつい最近、周囲から「もっと集中したら」「いつまでお休みモードを続けてるの」などと言われたばかりかもしれません。そのくらい、今の時期は注意散漫になりがちです。


■祝日のない2カ月をどう乗り切るか


実は、私もサラリーマン時代、この時期が苦手でした。今は独立起業し、自分のペースで働けるようになったのである程度コントロールもできていますが、会社勤めの頃はAさんと同じく、週の後半になってくると、もうただそれだけで「やっぱり今週も疲れちゃったなあ」とよく感じていました。


そもそも人並み以下の体力しか持ち合わせていない(学生時代、スポーツテストの持久走や踏み台昇降運動の結果はクラスで最下位でした)ところに、ゴールデンウィーク以降は気温や湿度も上がってくるため、うまく適応できずに体調を崩しやすくなります。


また、7月の海の日まで2カ月以上も祝日がなく、精神的にも「しんどいなあ」と感じてしまう場面が多くなってしまいがちです。


私のような人間にとってこの時期の過ごし方は死活問題で、普段から人一倍気をつけてきました。


いったいどうすれば、五月病に陥らずに、目の前の仕事に「もっと集中」できるのか。カンタンな方法をひとつ、あなたに共有したいと思います。


■「集中する」の解像度を上げてみる


といっても、私は医者ではありません。私の仕事は社会人の成長やキャリアアップの支援ですので、仕事に役立つビジネススキル的な観点からお話ししましょう。


「なかなか集中できない」とおっしゃるAさんに、私は次のように投げかけました。


「では、“集中する”という言葉の解像度を上げてみましょう」


「なぜ、集中することができないのか」、あるいは「どうすれば、集中することができるのか」。そもそも、「集中するとは、どういうことなのか」。


あなただったら、こうした問いにどう答えるでしょうか。「そんなこと言われても……」という状態なのであれば、これから紹介する「言葉の解像度を上げる方法」を活用してみてください。


ヒトコトで言えば、「英語に置き換える」アプローチです。


写真=iStock.com/sankai
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/sankai

■英語に置き換えて分解すると理解が深まる


「集中する、集中」は、英語で「コンセントレート、コンセントレーション」です。


この言葉について改めて吟味してみると、「コン」は「一緒に」、「セントレート、セントレーション」は「中心に集める、集まる」といった分解ができます。


したがって、「集中」とは「集中したい対象と集まって一緒になる、一体になる」といった理解をしていけばOKということになるわけですが、これはいったいどういう意味なのか。


■読書における「集中する感覚」とは


たとえば、私の趣味は読書ですが、目の前の本に集中・没入できる時もあれば、数ページ読むだけで他のことばかりが気になり、まったく内容が入ってこない読書になってしまうこともあります。


何がこの差につながっているか考えてみると、集中できている時は、その本や著者と自分が一緒に、一体になっているような感覚があり、自分自身も著者と一緒に、本のメッセージを書いたり、伝えたりしているように読めている。そんな実感があるのです。


一方、まったくといっていいほど集中できない時は、本や著者とのつながりを感じることができません。親近感や一体感がないまま文章を読み進めていかなければならず、しだいにページをめくるのが億劫になってきてしまう……。


まさに、本や著者と一緒に、一体になれていない=集中できていない状態と言えるのではないでしょうか。


写真=iStock.com/patpitchaya
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/patpitchaya

■小林秀雄的「物と親身に交わる」意識


と、ここまで解像度を上げていくなかでひとつ、「ある大切にしている本」と接続できるのではないかという認識がうまれてきました。


考えるヒント』小林秀雄(文藝春秋)という学生時代から愛読している本なのですが、この中で次のような言葉が登場します。


なお、この引用文に出てくる「宣長」とは「本居宣長(もとおりのりなが)」のことです。また、「かんがふ=考える」のことだと捉えて、一通り読んでみてください。


宣長が、この考えるという言葉を、どう弁じたかを言って置く。彼の説によれば、「かんがふ」は、「かむかふ」の音便で、もともと、むかえるという言葉なのである。(中略)それなら、私が物を考える基本的な形では、「私」と「物」とが「あひむかふ」という意になろう。(中略)考えるとは、物に対する単に知的な働きではなく、物と親身に交わる事だ。物を外から知るのではなく、物を身に感じて生きる、そういう経験をいう。

要するに、「考えるとは、考える対象と親身に交わる=一緒になる、一体化すること」であり、「思考」も、今回のテーマの「集中」も、その本質は「対象との“つながり”をどれだけ感じられるか」という点に尽きる。このような捉え方をしていきたいのです。


■「やりたくない」から集中できない


以上を踏まえれば、「目の前の業務にどれだけ集中できるか」は、「その仕事への“親近感や一体感、つながり”をどれだけ感じられているか」で決まってくるということになります。


もし、眼前の仕事が自分にとってどうでもよい内容だったり、心の底ではやりたくないと感じたりしている場合、集中して没頭することが難しくて当然です。


「もっと集中する」ためのカギは、「会社や仕事、目の前のタスクへの親近感や一体感、つながり」。


これが本質だとすれば、具体的なアクションも自ずと見えてくるのではないでしょうか。


■紙に書き出して「つながり」を見出す


たとえば、自身の担当業務とのつながりを高めるために、「紙1枚」に書き出してみることが有効です。まず、ノートでもコピー用紙でも構いませんので、図表1のような4×4の枠組みを作成してみてください。


出典=『「わかる」から「動ける」まで 言葉の解像度を上げる

そして、左半分に「会社の理念や方針、ビジョン」といった「仕事の目的」にあたるようなキーワードを書き出していきます。一方、右半分には自身の担当業務のキーワードを書出し、両者を見比べ、ペンで丸をつけたり線でつないだりしながら、まさに「つながり」を見出していくのです。


そうすれば、この「紙1枚」を作成する過程で、「そうか、この目的のためにこの業務、このタスクは存在するのか」という実感を、改めて高めていくことができます。


■プロセスを経て気づくことがある


実際に、Aさんにこの「紙1枚」を作成してもらいました。


当初は「いや、こんなこと書かなくても自明ですが……」という感じだったAさんですが、実際に書き出してみると、「あれ、記憶が曖昧だな……」「わかったつもりになっていただけで、改めて考えてみるとうまく説明できないな……」といった、様々な気づきを得られたようです。


何より、書いている途中で「何のためにこの仕事をやるのか」が改めて明確になり、「仕事への親近感、一体感、つながりを実感できました」「確かに今の心境なら、右往左往せず目の前の仕事に没頭できそうです」とおっしゃってくださいました。


その後、仕事机にこの「紙1枚」を置いておき、ときおり眺めて確認しながら働くことで、Aさんは注意散漫、無気力になりがちなこの時期を無事に乗り切ることができました。


私もかつて同じような悩みを抱えていたので、Aさんからの感謝のメッセージをもらった時は、自分のことのように嬉しかったです。


■「なんでもAI化」が見落とす人間の感情


加えて、Aさんは、「正直、最初はめんどくさいと感じました。でも、書いているうちに心境が変わってくることを体感でき、今回に限らず、もっとこういった面倒な過程を大切にしようと思いました」とも話してくれました。


「なんでもAI化」が叫ばれる現代においては、過程やプロセスが軽視されがちです。しかし、「書き出してみる、線でつないでみる」といったプロセスには、その過程で「心境が変化する」といった効用があります。プロセスカットは効率化をもたらしますが、同時に非人間化も促進します。


どれだけAIが普及しようとも、私たちが感情の伴う人間であることは変わりません。だからこそ1つくらい、こういったリカバリー手段をもっておくことにも意義があるのではないでしょうか。


写真=iStock.com/1shot Production
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/1shot Production

■「ほんの数分、紙1枚」でガラリと変わる



浅田すぐる『「わかる」から「動ける」まで 言葉の解像度を上げる』(プレジデント社)

とはいえ、「とにかく書け」「ひたすら書け」「時間をかけて書け」では確かに面倒なので、“ほんの数分、「紙1枚」書くだけ”という方法を、私は提唱し続けています。


今回は「もっと集中する」という言葉の解像度を上げることを目的に、「紙1枚」を活用しました。実際には、ここで紹介した「英語に置き換えてみる」以外にも、「解像度を上げるアプローチ」は存在します。


こうした技術を一冊の本にまとめたのが、新刊『「わかる」から「動ける」まで言葉の解像度を上げる』です。「もっと集中する」以外にも、多数の“曖昧フレーズ”の解像度を上げています。お役立ていただけましたら幸いです。


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浅田 すぐる(あさだ・すぐる)
「1枚」ワークス株式会社代表取締役、作家・社会人教育のプロフェッショナル
「1枚」アカデミアプリンシパル。動画学習コミュニティ「イチラボ」主宰。名古屋市出身。旭丘高校、立命館大学卒。在学時はカナダ・ブリティッシュ・コロンビア大学留学。トヨタ自動車入社後、海外営業部門に従事。同社の「紙1枚」仕事術を修得・実践。米国勤務などを経験したのち、グロービスへの転職を経て、独立。現在は社会人教育のフィールドで、ビジネスパーソンの学習を支援。研修・講演・独自開講のスクール等、累計受講者数は10000名以上。独立当初から配信し続けているメールマガジンは通算1000号以上。読者数18000人超。
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(「1枚」ワークス株式会社代表取締役、作家・社会人教育のプロフェッショナル 浅田 すぐる)

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