諏訪大社「600年前」の鹿肉料理再現…「氏子でハンターの料理人だからこそできた」神事用の3品

2025年4月21日(月)16時0分 読売新聞

再現料理を仕上げた青木さん(長野県茅野市で)

 600年ほど前の室町時代に、諏訪大社(長野県)の神事で振る舞われた鹿肉料理が、氏子によって再現された。郷土研究家の協力を得て、飲食店が4月から特別メニューとして提供している。諏訪地方に伝わる食文化の普及も期待される。(長野支局 丸橋量太)

 再現料理に挑んだのは、長野県茅野市でレストラン「匠亭」を営む青木和夫さん(70)。猟師としても活動するなか、「御柱祭」や「御頭祭」で知られる諏訪大社の食文化を地域振興に生かそうと、地元の商工会議所が17年前に始めた事業に参加し、鹿肉が神事で出されていた史実を知った。

 昨年11月には、自らも出演した諏訪大社の神事を扱ったドキュメンタリー映画「鹿の国」の試写会で、地域の文化や信仰を研究する三好祐司さん(46)と出会った。狩猟による殺生を忌み嫌った時代に、諏訪大社は鹿肉の食用を許す札を授けていたとされ、料理を再現できないか相談した。

 三好さんからは、諏訪大社の神事として1448年(文安5年)に、子どもが「大祝おおほうり」と呼ばれる生き神に即位する祝宴で、鹿肉料理が提供された記録があると教わった。関連の古文書を読み、諏訪市博物館で歴史や文化の知識を深め、3月に再現料理を仕上げた。

 再現したのは鹿肉をゆでた「生鹿」、串刺しで焼いた「焼鹿」、ゆでた鹿肉と脳みそをあえた「脳和のうあえ」の3品。試行錯誤の末に「芯まで火が通って軟らかい状態」に仕上げることに成功した。衛生面を考慮し、脳和の再現には、食感が脳みそに似た豆腐を使った。しょうゆなどで下味を付けたが、当時の味は分からないため、青木さんは「家族に何度も試食してもらった。野生の肉本来の味も楽しんでほしい」と言い、鹿や魚など地元食材を使った料理の普及にもつなげたい考えだ。

 青木さんの店では、この3品を含めて鹿肉料理8品が並ぶ「信州鹿之国御膳」(税込み3500円)を予約制で提供している。

 協力した三好さんは「諏訪大社の氏子で、ハンターにして料理人の青木さんだからこそ再現できた料理。文化や歴史のつながりを感じながら味わってほしい」と語る。

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