米国の和平仲介 ロシアに戦果与えてはならぬ

2025年5月5日(月)5時0分 読売新聞

 ロシアのウクライナ侵略をめぐり、トランプ米大統領が進める和平仲介が難航している。

 ウクライナとの関係を修復する一方で、ロシア寄りの和平案で妥協を図ろうとしている。功を急ぐあまり、ロシアに戦果を与えることがあってはならない。

 米国とウクライナは、ウクライナの鉱物資源を共同開発することを柱とする経済協定に署名した。両国が基金を創設し、ウクライナの復興にあてる。米国は新たな軍事支援に相当する金額を、基金の収益から回収するという。

 協定は当初、2月にトランプ氏とウクライナのゼレンスキー大統領が合意する予定だったが口論となり、署名が見送られていた。

 米国が今回、協定で合意したのは、政権発足から100日が経過する中、外交的な成果を演出する狙いがあったとみられる。

 停戦実現に向けた道筋はなお見えない。米国はウクライナとロシアに早期停戦を呼びかけ、和平案を提示したが、両国ともに受け入れを拒否しているためだ。

 米国は和平案を明らかにしていない。しかし、米欧メディアによると、ロシアが2014年にウクライナから奪ったクリミアをロシア領として承認し、不法占拠するウクライナ東・南部4州についても実効支配を認めるという。

 さらに、ウクライナが将来にわたって北大西洋条約機構(NATO)に加盟しないことを約束する項目もあるとされる。

 これでは、ロシアの侵略行為を容認するに等しい。ウクライナが同意しないのは当然だ。

 ロシアも今のところ和平案に難色を示している。トランプ氏が合意を急いでいると見て、あえて交渉を長引かせ、さらなる譲歩を引き出そうとしているのではないか。相手の弱みにつけこむのがロシアの常套じょうとう手段である。

 国際法を犯してウクライナを侵略したロシアが責任を問われないようでは、力による現状変更のあしき前例となり、国際秩序は崩壊する。米国は、ウクライナの主権や領土の尊重と、ロシアの再侵略を防ぐ方策を追求すべきだ。

 ロシアと北朝鮮は、ロシア西部クルスク州での戦闘に北朝鮮が参戦したと公式に認め、ウクライナ戦争は東アジアの安全保障に直結する問題となった。

 中国は日本周辺で力による威圧を繰り返している。ウクライナの戦闘をどう終わらせるかは、世界の安定と安全を左右することを、トランプ氏は認識すべきだ。

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