北朝鮮、送還された「裏切者」を50日間も拷問し処刑
2025年2月21日(金)5時2分 デイリーNKジャパン
韓国の聯合ニュースは19日、ロシアに派兵され、ウクライナ軍の捕虜となった北朝鮮兵が韓国への帰順(亡命)を要請した場合、全員を受容するという基本原則と関連法令に基づき、必要な支援を提供するとの韓国政府の立場を伝えた。
ウクライナの捕虜になった北朝鮮兵の1人は韓国紙・朝鮮日報とのインタビューで、「難民申請をし、韓国に行きたい」と語っている。また、「人民軍(北朝鮮軍)では捕虜は変節者(裏切者)と同じ」とも話しており、事実上、彼が生きる道は韓国行きしかないのが現実だ。
こうした状況を受け、韓国外交当局者は聯合の取材に対し、「北の兵士は憲法上わが国民であり、捕虜の送還に関しては個人の意思を尊重することが国際法と慣行に合致するだけでなく、本人の意思に反して迫害される脅威があるところに送還されてはならない」との考えを示した。こうした立場はすでに、ウクライナ政府にも伝えられているという。
韓国憲法の定めに従えば、同国政府が北朝鮮兵捕虜を受け入れるのは当然と思われる。しかし実際には、そうはならなかった事例もある。
文在寅前政権は2019年11月、亡命を求めた脱北漁民2人を北朝鮮に強制送還してしまった。デイリーNKの北朝鮮内部情報筋によれば、北朝鮮当局は彼らを50日間にわたって拷問した後に処刑したという。
文政権は当時、2人が漁船の同僚16人を殺戮した凶悪犯である可能性が高いとして、強制送還を正当化した。その根拠は、漁船を追跡する北朝鮮側の無線交信の傍受記録だとされた。しかし、そうした情報の信ぴょう性を含め、事実を見極めるための調査や捜査はじゅうぶんに行わないまま、わずか数日で送り返してしまった。
前述したとおり、朝鮮半島全体を自国の領土としている韓国の憲法によれば、北朝鮮は国家として認められておらず、北朝鮮国民は韓国の国民ということになる。つまり韓国政府には、ほかの自国民と同様、2人に対して適正な司法手続きを踏む義務があったのだ。
そもそも大韓民国の憲法や各種の法律には、同国に入国した北朝鮮国民を、本人の意思に反して強制的に送還できる規定はない。また、北朝鮮との間に犯罪人の引き渡しに関する取り決めもない。
それにもかかわらず、処刑されると承知で文政権が彼らを強制送還したのは、ひとえに金正恩体制に「忖度」したからだ。仮に今、文政権と同様の性格をもつ政権が韓国に存在したとすれば、捕虜たちに対する政府の立場も、だいぶ違っていた可能性がある。