東大、リチウムイオン電池に潜む「熱暴走」危険性の高効率な評価手法を開発
2025年4月7日(月)17時12分 マイナビニュース
東京大学(東大)は4月4日、リチウムイオン電池(LIB)の発火や爆発を引き起こし、安全性に深刻な影響を与える「熱暴走」の危険性を効率的かつ低コストに評価する新しい手法を開発したと発表した。
同成果は、東大大学院 工学系研究科の山田淳夫教授、同・コ‐ソンジェ講師、物質・材料研究機構(NIMS) エネルギー・環境材料研究センターの増田卓也センター長(北海道大学大学院 総合化学院 物質化学コース 客員教授兼任)、同・山口祥司特別専門職、同・蓄電池基盤プラットフォーム 大塚裕美エンジニアらの共同研究チームによるもの。詳細は、英科学誌「Nature」系のエネルギーに関する学際的な学術誌「Nature Energy」に掲載された。
現在幅広く用いられているLIBは、他のバッテリーと比較して高い電圧(2.4〜3.8V程度)と高いエネルギー密度を有しており、スマートフォンなどの各種モバイル機器、電気自動車(EV)、大規模な電力貯蔵システムなど、幅広い分野で活用されている。今や、現代文明を支える技術の1つといえるだろう。
一般的なLIBは、リチウムを含む遷移金属酸化物の正極材、リチウムイオンを吸蔵できるグラファイト(黒鉛)やシリコンなどの負極材、そしてそれらを隔てるセパレータと電解液で構成されている。多くのLIBで電解液として採用されているのが、有機溶媒にリチウム塩を溶解させた液体で、これが発火のリスクとなっている。この電解液は引火性が高く、過熱や衝撃、短絡などの異常がLIBに発生した場合、制御不能な急激な温度上昇である熱暴走を起こす危険性があることが理由で、実際に海外では近年EVの出火事故が問題となっている。
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