井上尚弥戦は「金が目的じゃない」 WBA2位の挑戦者が急転直下で舞い込んだ大一番への心境告白「楽な相手とやりたくない」
2025年3月8日(土)6時0分 ココカラネクスト

スパーリング中の負傷でグッドマンは井上戦を断念せざるを得なかった。(C)Getty Images
世界屈指のビッグネームとの突然の試合
急転直下で舞い込んだチャンスを逃しはいない。軽量階級で成り上がりを目論む挑戦者が、ボクシング界で「最強」と言われる日本人との戦いに意気込んでいる。
「イノウエ戦は確かに大金が生まれる。でも、俺にとってそれは目的じゃない」
【画像】米記者が愕然とした井上尚弥とブルース・リーの比較画像をチェック
そう発信したのは、WBA世界スーパーバンタム級2位のラモン・カルデナス(米国)だ。現地時間3月6日に米誌『The RING』によって、5月4日に同じ階級の4団体統一王者に君臨する井上尚弥(大橋)との対戦が決定的と報じられた29歳は、キャリア最大級とも言える大一番に対する心境を、米ボクシング専門YouTubeチャンネル『210 Boxing TV』で語った。
当初に井上陣営は、業界屈指のビッグマッチが組まれるメキシコの記念日「シンコ・デ・マヨ」の一週間に当たる今回のラスベガスでの興行を彩るべく、WBC同級1位のデビッド・ピカソ(メキシコ)との対戦を計画。しかし、土壇場になって父親を含めた敵陣営が消極姿勢に転じてプランは白紙状態に。そこで白羽の矢が立ったのが、メキシコ系カルデナスだった。
27戦26勝(14KO)1敗の戦績を持つオーソドックススタイルのファイターであるカルデナスは、米メディアで「地獄のパンチ力を持つ男」(米専門サイト『Boxing Scene』より)と評される実力の持ち主だ。守備面の拙さはあるものの、常に好戦的にプレスをかけるスタイルは、アグレッシブな打ち合いが期待できる。
無論、世界屈指のビッグネームとの突然の試合決定に少なからず驚きはあった。井上との対戦合意について意見を求められたカルデナスは「知ったのは2週間ぐらい前のことだった。ロサンゼルスにいた時に、マネージャーから『イノウエとやりたいか』って言われたんだ」と告白。水面下で進められた交渉の内情を明かした。
「最初は冗談かと思ったんだ。だけど、『もちろんだ』と返したら、『5月4日にだけど、問題はないか。とにかく交渉中だから黙っていてくれ』と言われたから『マジか。いいね』と言ったよ。俺は『とにかく受けるよ』って気持ちで即答した。それがついに実現するんだ。今は夢が叶った気分だ」

数多の挑戦者を打ち崩してきた井上だけに、「地獄のパンチ力」を秘めるカルデナスも打倒は容易ではない。(C)Takamoto TOKUHARA/CoCoKARAnext
「噂が出た時点で、これは対戦が決まるなと感じていた」
さらに「噂が出た時点で、これは対戦が決まるなと感じていた」と正直に胸の内を明かしたカルデナス。もっとも、現時点で総合的な実力の面から見ても井上の有利は揺るぎない。メディアやファンの下馬評も“モンスター”の「勝利は堅い」という見方が大半を占めるだろう。
ただ、そうした世間の風潮を理解するチャレンジャーは「俺は偉大になる」と意気込む。一部で“無名”と揶揄されてはいるが、カルデナスにも「地獄のパンチ力」で印象深いKO劇も見せてきた自負がある。
井上という強大な壁に挑む29歳は、こうも続けている。
「とにかく見てればわかるよ。試合を見てくれと言いたい。イノウエとの試合が決まった相手は、『大金が貰えて幸運だ』って感じに思われるけど、俺は金のためだけに試合をするわけじゃない。俺は彼とやるリスクをとって、偉大になるためにここにいるんだ。
俺のキャリアは他の選手たちみたいに万全のサポートを得られたわけじゃない。それでもここまでやってきた。だからこのチャンスは逃せない。自分の価値を証明したいんだ。自分が何者かってことを俺は証明したいからやるんだ」
確かに昨年11月にサウジアラビア・リヤドで同国政府主導のエンターテイメントイベント『Riyadh Season』との推定30億円のスポンサー契約を締結した井上の価値は、軽量級の枠を超えたものとなっている。当然ながら、試合をすれば、ビッグマネーが見込めるのも間違いない。それでもカルデナスにとって何よりも重要だったのは「偉大なるチャンス」だった。
果たして、「楽な相手とはやりたくない。俺は口だけじゃなく、行動で証明する」と豪語する男は、キャリア最高となるであろう井上との試合をいかに戦うのか。いまだ正式発表が待たれるところではあるが、ゴングへの機運は確実に高まっているだけに、ラスベガス決戦の行方をしっかりと見届けたい。
[文/構成:ココカラネクスト編集部]
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