【内田雅也の追球】チームとしての遊撃手

2025年4月23日(水)8時0分 スポーツニッポン

 ◇セ・リーグ 阪神4—2DeNA(2025年4月22日 横浜)

 阪神監督・藤川球児は勝った後、「選手のことは選手に聞いてください」と、あまり質問を受けつけない。この夜も選手の活躍について問うと「その通り」「素晴らしい」を繰り返した。

 指揮官として選手個人ではなく、チーム全体を見ているわけである。

 ならば、この夜の小幡竜平の活躍はどうだろうか。貴重な3点目は小幡の足で奪った。

 2—0の5回表先頭、1ボールからの2球目を三塁線にセーフティーバント、見事に内野安打を決めた。続く投手・才木浩人の送りバントは3球連続のファウルとなって三振。直後、打者・近本光司の初球に走り、二盗を決めた。直前の送りバント失敗を帳消しにする大きな、今季2個目の盗塁だった。

 トレバー・バウアーのフォームもよく研究していたのだろう。迷わず初球からスタートを切っていた。

 さらに、近本が打ち上げた左翼線の飛球に判断よくスタートを切り、ポテン打となって、本塁に滑り込んだのである。

 これが機動力である。

 今季の阪神はこの夜の小幡、近本の2盗塁を加え、チーム盗塁15個はリーグ最多である。ただし「足の威力というのは盗塁だけじゃありません」と外野守備兼走塁チーフコーチの筒井壮が繰り返している。「打球判断や先の塁を奪う走塁、第2リード、偽走スタート……すべてを含めてチームとして取り組んでいます」

 足は小幡にとって売り物にしたい持ち味だ。遊撃を争う木浪聖也は19日広島戦(甲子園)で3失策を犯し、翌20日広島戦から先発遊撃は小幡が務めている。木浪にはない機動力はライバルと差をつける意味でも大きい。

 いや、個人的な話ではなく、チームとして大きい。長いシーズン、負担の大きな遊撃手を1人きりで乗り切るのは大変である。いまは小幡が好調である。いずれ木浪の力が必要になる時は来る。木浪と小幡、さらに若手もいる。各選手の状態を見極めながらの起用はチームにとってもプラス効果をもたらす。

 チーム全体を見ている藤川も考えていることだろう。誰が活躍しようとチームとして勝てばいいのである。

 先発を外れた木浪はこの日も試合前練習中、長く内野守備走塁コーチ・田中秀太のノックを受けていた。試合中はベンチで声を出していた。 =敬称略= (編集委員)

スポーツニッポン

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