「気持ちを伝えたら行ってくれると」巨人のサヨナラ呼んだ阿部監督と大勢のベンチでの会話
2025年4月30日(水)5時20分 スポーツ報知
9回、チームの同点にガッツポーズを見せる阿部監督(カメラ・堺 恒志)
◆JERA セ・リーグ 巨人4×—3広島=延長12回=(29日・東京ドーム)
勝利の瞬間、阿部慎之助監督(46)はベンチで両手を上げて喜んだ。12回1死二、三塁、甲斐がサヨナラ犠飛。「追い込まれていたけど素晴らしい打撃だった」と背番号「10」を笑顔でたたえた。敗戦目前の徳俵から逆転して大熱戦を制した。
執念の采配だった。同点の10回、勝利はサヨナラのみとなり、セーブ機会がなくなった後攻チームのセオリー通り、守護神のマルティネスを優先的に投入。11回に7番手の大勢を起用した。打者3人16球で無失点に抑えてベンチに戻った大勢の元に阿部監督は歩み寄り、横に座った。「9連戦だけど頭は絶対に負けたくないって気持ちを伝えたら、行ってくれると」。今季初の回またぎを託した。
この時点で残る投手は西舘、中川、横川。12回の広島は4番・末包から始まる好打順だったこともあり「もう大勢に抑えてもらうしかなかった。大勢よりいい投手は残っていなかったので」。大型連戦初戦だったが、先のことを考えて体力温存ではなく、貪欲に勝利への最善策を選んだ。炎の2回0封が実を結んだ。
9回、同点に追いついた阿部監督はガッツポーズして叫んだ。「野球は何があるか分からない。今日は相手がミスしてくれたんだけど明日は我が身。そこは喜ぶ反面、自分たちにも起き得るってことで、もう一回緊張感を持ってほしいと思った」。まさかのプレーで追いついた。
延長戦は球際の強さが光った。外野の守備力が高いオコエが右肘痛で離脱する中、ユーティリティープレーヤー・増田大の超美技に「増田がスーパープレーしてくれたので勝ったようなもの」と称賛した。12回無死一、二塁では門脇がバントファウルで追い込まれながらスリーバント成功。気迫が相手を上回った。
負ければ球団初の対広島開幕4戦4敗だった。「五分でいければ」と話していたゴールデンウィーク9連戦の大事な初戦。「あと1球」の崖っ縁から息を吹き返し、勝負の大勢2イニングが白星につながった。「とにかく一戦必勝でやっていきたい」。野手で残っていたのは郡と萩尾だけ。劇的勝利を全員でもぎ取った。(片岡 優帆)