森永卓郎「老後の資金を投資で増やそうなんて、絶対に考えちゃダメ」ステージIVの膵臓がん。手持ちの株をすべて売り払い、月120万円自由診療の免疫療法に費やす【2024年下半期ベスト】
2025年3月4日(火)12時30分 婦人公論.jp
「治療費のためだけではありませんが、私は最近、手持ちの株をすべて売り払いました」(写真提供:森永さん)
2024年下半期(7月〜12月)に配信したものから、いま読み直したい「ベスト記事」をお届けします。(初公開日:2024年8月9日)
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経済アナリストとして長年活躍し、歯に衣着せぬ弁舌にファンの多い森永卓郎さん。2023年末にがんであることを公表したが、今も病気と闘いながら、使命感をもって仕事を続けている。現在の体調と、仕事への思いを聞いた(構成:山田真理 写真提供:森永さん)
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<前編よりつづく>
最後に本当のことをぶちまけて……
オプジーボはかつて非常に高価な薬だったのですが、数年前から原発不明がんに限って保険適用という扱いになりました。約80万円の3割負担ですから、1回二十数万円を毎月払っています。
さらに血液免疫療法は自由診療ですから、1回50万円弱かかっている。確定申告の医療費控除は年間200万円が限度なのですが、私はもう2月の段階で超えちゃった。
今はすべて自腹で、毎月120万円ずつ貯金がずるずると減っている状態です。
普通のサラリーマンだったらすぐに家計破綻したかもしれませんが、幸い私はフリーになった40代後半からめちゃくちゃに働いて稼いでいた時期があります。テレビやラジオのレギュラー17本、雑誌連載四十数本、大学の講義に毎月20本の講演。秒単位で予定が組まれ、自宅にはまったく戻れませんでした。
それでいて私は「ケチだぬき」とあだ名がつくくらい(笑)、お金にはシビア。都心にマンションを買うわけでもなく、高級車にもグルメにも興味がなく、資産はそれなりに残せていました。
さらに幸か不幸か、現在株式市場は空前のバブル。治療費のためだけではありませんが、私は最近、手持ちの株をすべて売り払いました。しょせんバブルの大儲けなので、自由診療という泡に帰すのも乙なもんじゃないかと思いましてね。(笑)
実は現在もう一冊、「投資はもうやめなさい」という内容で本を書いています。バブルというのは、必ずいつかはじけるもの。特にアメリカを中心とした株式をもとにした投資は、今後ものすごい危険があると私は考えています。
それは専門家もみんなわかっているけれど、金融業界を敵に回したくないから誰もが口をつぐんでいる。
私はもう先がないですし、最後に本当のことをぶちまけて死のうと決めているから正直に言ってしまいます。
特に老後の資金を投資で増やそうなんて、絶対に考えちゃダメ。持っている株も、今すぐ全部売るべきだと提言したいですね。
結婚40年目にして新婚気分に
こういうことを言うと、康平(長男で経済アナリストの森永康平さん)に「意見が極端すぎる」と言われてしまいます(笑)。
彼はすでに私よりテレビのレギュラーも多いですし、非常にうまくやっている。メディアに向けてがんを告白した時もサポートしてくれて、康平のYouTubeチャンネルでは対談にも呼んでもらっているんです。
次男はIT技術者で、入院中に口述した本の内容を文字起こししてくれたのも彼でした。また私が愛蔵するコレクション約12万点を展示した博物館も、「自分が引き継ぐ」と。先日もその「B宝館」のホームページを見やすく刷新してくれました。
彼らが子どもの頃、私は忙しさのピークで、東京の事務所に寝泊まりして週末だけ一瞬帰るような生活。家族と接する機会がほとんどなく、康平などは「うちは母子家庭だ」とまわりに言っていた時期があるくらいです(笑)。
それでも私の背中を見ていたのか、こうして仕事を一緒にできたり、趣味の世界を理解してくれるのは嬉しいことですね。
カミさんとも結婚以来40年、ほとんど接触のない暮らしを続けてきたわけですが、今や風呂から上がって着替えをするにもカミさんの手助けがいる。ほかにも生活のあらゆる場面で依存しているので、たぶんカミさんがいなかったら私はとっくに死んでいたと思います。
これは直接言うとたぶん怒られるだろうけれど、結婚40年目にして初めて新婚みたいな気分なんですよ(笑)。
こないだは、近所の西武園ゆうえんちへデートに行きました。「ウルトラマン・ザ・ライド」というアトラクションが私のお目当てだったのですが、ほかにも昭和レトロを売りにしたゆるい感じの乗り物や催しが案外楽しくてね。
スーパーの買い物も、なるべく一緒についていきます。車で出かけて売り場を軽く一周。そうして無理にでも歩かないと、筋肉が落ちてしまいますから。
現在は週2日、ラジオの生放送や執筆の仕事で電車で都心まで通っていますが、それも半分はトレーニングのため。主治医には「よくその体で東京まで行きますね」と驚かれますが、無理にでも出かけないと家から出なくなってしまいます。
とはいえバリアフリーが行き届いていない場所も多く、階段の上り下りはまさに修行。翌日は疲れ切って15時間以上爆睡することもしばしばです。
ここ最近の生きがいであった農業も、今は隣の畑の人に土づくりから植え付けまで代わりにやってもらっています。私は収穫に行くだけなのですが、30分もしないうちに疲れてしまって大変でした。
食べる量も現在はカミさんの3分の1ほど。それでもやはり収穫したての野菜の味は格別。これから夏に向かい、キュウリやナス、スイカにメロンにブロッコリーと、作物が育っていくのが楽しみでなりません。
そうして季節を重ねながら、毎日を大切に、とにかく行けるところまで頑張ってみたいというのが、今の気持ちです。まだまだ世の中に言いたいこともたくさんありますからね。
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