森永卓郎「運は才能や努力を超える力を発揮する」。私自身の体験を振り返ってみても…運がいい人が共通して言う言葉とは
2025年4月14日(月)12時30分 婦人公論.jp
(写真提供:Photo AC)
テレビやラジオなど多くのメディアで活躍した経済アナリストの森永卓郎さん。2023年末にがんであることを公表してからも活動を続けていましたが、2025年1月28日に逝去されました。今回は、森永さんが病と闘いながら書き遺した著書『森永卓郎流「生き抜く技術」ーー31のラストメッセージ』から、森永さん流<生き方の本質>を一部引用、再編集してお届けします。
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運は才能や努力を超える力を発揮する
芸能界をみていると、「幸運が成功者を生み出す」を実感することが多い。
才能もあるし、とてつもない努力を積み重ねていても、売れない芸能人は無数にいる。その一方で、たまたまブームに乗っかり、スターダムへと駆け上がる人もいる。運は才能や努力を超える力を発揮するのだ。
たとえば、私が日本一の歌手だと思う天童よしみさんは、子どものころから誰よりも歌がうまかった。ただ、彼女はヒット曲に恵まれず、一度は引退を考えて地元の大阪に帰っている。両親の説得で歌手を続けたものの、10年を超える低迷が続いた。
その後、1985年にテイチクレコード移籍第1弾シングル「道頓堀人情」が大ヒットし、天童よしみさんはスターとしての地位を確立した。「道頓堀人情」は素晴らしい歌だが、天童さんの歌手としての実力がジャンプアップしたわけではない。天童よしみは、昔から天童よしみだった。大ヒットは幸運にめぐまれたからだと、私は思っている。
私自身の体験を振り返って
私自身の体験を振り返ってみても、私は運がよかったと思う。
専売公社の人事異動で、日本経済研究センターで調査研究の仕事にめぐり合えたこと。講談社の新任副部長研修の講師として呼ばれ、恋愛経済学の講義をすることになり、それが著書の出版に結びついたこと。テレビ神奈川のコメンテーター役が、当初予定していたコメンテーターの拒絶によってお鉢(はち)が回ってきたこと。ニュースステーションのコメンテーターに不倫スキャンダルが発覚して、その後任に滑り込んだことなど……。
すべてが幸運のなせる業だった。
ただし、運が悪いと嘆く必要もない。「自分のいまがあるのは幸運のおかげだ」という著名人は、同時に「運は変えられる」と言っているからだ。北原照久さん、ビートたけしさん、久米宏さんという3人の団塊の世代は、全員が「運は変えられる」と言っていた。
それでは、どうしたら運を変えることができるのか。
「運のよい人と付き合うのが……」
驚くことに、そこでも3人の言葉は一緒だった。
「運のよい人と付き合うのが、いちばん自分の運を変えやすい」
(写真提供:Photo AC)
運がよい人のところにはチャンスが集まってくる。海鳥は、泳ぐ魚を捕獲するために魚群のなかに飛び込む。1匹、1匹の小魚を追いかけても効率が悪いからだ。
では、運のよい人のグループに入るためには、どうしたらよいのか。最も手っ取り早い方法は、運のよい人にかわいがられることだ。
性格が暗くて不平や不満ばかりを言う人は自分の周りに置きたくないし、ベタベタとまとわりついてきて、ご機嫌ばかり伺うような人もわずらわしい。
かわいがられるのは、普段は離れていても必要なときに身近にいて、自分を一生懸命手助けしてくれる人だ。だから、人からかわいがられるためには、全体の動きをよく見て、いま自分に何が要求されているか、相手とどのような距離感を取るべきかを、つかみ取らなければならない。
「かわいい」ということ
その意味で思い出すのは、三井情報開発の総合研究所に勤務していたときの相棒、S君のことだ。
S君は、研究員であると同時に情報処理技術者でもあって、とても高度な職業能力を備えていた。同時に大変な遊び人で、定時になると、さっさとどこかに出かけてしまう。だから私は、いつも終電まで会社に残って、夕方以降に霞が関から突然依頼される業務に対応していた。
普段は、それで仕事が回っていたのだが、年に数回、大きな作業の依頼がやってきた。とても私ひとりでは対応できない量の作業だ。そんなとき、私はすぐにS君に連絡を入れた。まだポケベルの時代だ。
彼が何をしていたのか、私は知らない。ただ、私が連絡をした途端に彼は会社に戻ってきて、一緒に徹夜をしてくれた。それが「かわいい」ということなのだ。
どんな分野でも、成功者の多くが言う言葉は、「自分は運がよかった」ということだ。新しい技術や人との出会い、事業を開始したタイミング、世の中のトレンドなど、さまざまな幸運が成功者を生み出す。
※本稿は、『森永卓郎流「生き抜く技術」ーー31のラストメッセージ』(祥伝社)の一部を再編集したものです。
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