ウイスキーのトリビア 第9回 サントリー最高峰『響』の魅惑的トリビア5選 - 響き合う時間と味わい
2025年5月5日(月)11時0分 マイナビニュース
サントリーウイスキー『響(ひびき)』は、1989年にサントリーの創業90周年を記念して誕生しました。日本最高峰のブレンデッドウイスキーを目指して開発され、その名の通り「響き合う」ハーモニーのように、複数の蒸留所で作られた多様な原酒が見事に調和した逸品です。
海外でも高い評価を受け、数々の国際的な賞を受賞してきた『響』は、日本のウイスキー文化を世界に知らしめる重要な存在となっています。今回は、この『響』のトリビアを5つ厳選してご紹介します。
『響』は、サントリーが保有する山崎蒸留所と白州蒸留所のモルトウイスキー、そして知多蒸留所のグレーンウイスキーをブレンドして作られています。それぞれの蒸留所が持つ個性が見事に調和し、複雑で奥深い味わいが生まれています。山崎の重厚さ、白州のクリアな味わい、知多の滑らかさ……。それぞれの個性がまさに響き合うようなブレンドなのです。
現在、『響』のラインナップは、ジャパニーズハーモニー、ブレンダーズチョイス、21年、30年という4種類。「響17年」は2018年から販売休止となっています。かつては「響35年」という超限定品も販売されていました。
ブレンデッドのハーモニーを奏でる『響」のトリビア!
【トリビア1】『響』という名前は発売直前に変更された
実は『響』という名前は当初の候補ではありませんでした。発売の直前、サントリーの企業理念として「人と自然に響きあう」というミッションが定められたことを受け、それに合わせて急遽『響』へと変更されたのです。
そのため、ラベルデザインも直前にやり直すという慌ただしいスタートを切りました。偶然から生まれたこの名前は、今やブランドの魂として深く浸透しています。ブランドの哲学を製品名に込めるという強い意志が感じられるエピソードですね。
【トリビア2】24面カットのボトルに秘められた二重の意味
『響』の特徴的な24面カットのボトルには深い意味が込められています。この「24」という数字は、「1日24時間」と日本の伝統的な暦法「二十四節気」という二つの時間概念を表現しています。
長い時間をかけて熟成するウイスキーと日本の四季の移ろいを結びつけるという、日本らしい美意識が反映されているのです。まさに、ウイスキーにとって最も重要な熟成の時間を、視覚的に表現しているボトルと言えるでしょう。
また『響』のラベルには、日本の伝統工芸へのこだわりが詰まっています。越前和紙を用い、和紙デザイナーである堀木エリ子氏のプロデュースによって、一枚一枚手でちぎられて質感を出しました。そのため、初期のボトルは製品によって微妙に表情が異なっていたという、贅沢な仕様だったのです。ラベルに記された『響』の文字は、書家・荻野丹雪氏の揮毫(きごう)によるもの。凛としたたたずまいがブランドにふさわしい風格を添えています。
免税店限定で販売される「意匠ボトル」シリーズもあります。「白鷺」や「富士風雲図」など日本の伝統的な美術をモチーフにしたデザインが特徴で、外国人観光客の憧れの土産物となっています。特に「響21年 意匠ボトル〈富士風雲図〉」は、赤富士の繊細なグラデーションを表現するため、一枚一枚手作業で転写シートを貼り付け、焼成するという高度な技法が用いられました。
【トリビア3】ミズナラ樽がもたらす特別な香り
『響』のキーモルトとして使われているのは、日本固有のオーク「ミズナラ」の樽で熟成したウイスキーです。ミズナラ樽は、白檀(びゃくだん)や伽羅(きゃら)などの香木を思わせる独特の香りを持ち、世界中のウイスキー愛好家から「ジャパニーズオーク」として注目を集めています。樹齢200年以上のミズナラでなければ樽材として使えず、加工も難しいため、非常に希少価値の高い樽です。
実は、現在高く評価されるミズナラ樽熟成のモルトは、かつては味が悪いと、よい評価ではありませんでした。しかし20年以上の長期熟成を経ると、誰もが驚くほどすばらしい原酒へと変貌したのです。
戦時中にオーク材が入手困難だった苦肉の策が、結果的に『響』の特徴的な味わいを生み出す奇跡となりました。困難を乗り越えた末に生まれた成功の象徴とも言えるでしょう。
【トリビア4】世界が認めた『響』の実力
「響21年」は、国際的な酒類コンペティション「インターナショナル・スピリッツ・チャレンジ(ISC)」において、ジャパニーズウイスキー部門の最高賞「トロフィー」を2013年から6連続で受賞するという快挙を成し遂げました。
2017年には「トロフィー」を獲得しただけでなく、全カテゴリーの中から最高のスピリッツに贈られる「シュプリームチャンピオンスピリット」にも選出されています。ウイスキーだけでなく、すべての蒸留酒の頂点に日本のブレンデッドウイスキーが立った瞬間でした。
2016年開催の伊勢志摩サミットでは、夕食会において「響21年」が各国首脳に振る舞われました。日本を代表するウイスキーとして、国際外交の場で認められた格式の高さを示すエピソードです。世界のトップリーダーたちが集う晩餐のテーブルに『響』が選ばれたことは、その品質と評価を象徴しています。
【トリビア5】ハリウッド映画で脚光を浴びた『響』
2003年公開のソフィア・コッポラ監督によるハリウッド映画『ロスト・イン・トランスレーション』には、「響17年」が登場します。ビル・マーレイ演じる主人公が日本でウイスキーのCM撮影をするという設定で、「For relaxing times, make it Suntory time(くつろぎのひとときに、サントリータイム)」というセリフとともに『響』が印象的に描かれました。この映画をきっかけに、『響』の国際的な知名度は一気に高まりました。
ちなみに、『ロスト・イン・トランスレーション』は低予算ながら1億ドル以上の興行収入となり、多数の映画賞を総なめにしています。
■『響』ジャパニーズハーモニーの魅力
現時点で最も親しみやすく、『響』の伝統を受け継ぐ定番のラインナップは「響 ジャパニーズハーモニー」です。年数表記のないノンエイジですが、山崎・白州・知多の個性が見事に調和し、ミズナラ樽熟成モルトならではの特徴的な香りを持っています。公式テイスティングノートは以下の通り。
色:琥珀色
香り:ローズ、ライチ、ほのかなローズマリー、熟成した樽の香り、白檀
味わい:ハチミツの透き通った甘さ、オレンジピールチョコレート
余韻:繊細、やさしく穏やかに続く余韻、ほのかなミズナラ
「響 ジャパニーズハーモニー」は色々な楽しみ方ができることが魅力。まずはストレートで香りと味わいをじっくりと堪能し、少量の水を加えると香りがより華やかに開花します。氷を入れたロックではゆっくりと変化を楽しめ、ソーダで割ったハイボールなら食事との相性も抜群です。次に機会があれば、ぜひ今回紹介したトリビアを思い出しながら『響』のハーモニーを楽しんでください。
柳谷智宣 やなぎや とものり 1972年12月生まれ。1998年からITライターとして活動しており、ガジェットからエンタープライズ向けのプロダクトまで幅広い領域で執筆する。近年は、メタバース、AI領域を追いかけていたが、2022年末からは生成AIに夢中になっている。 他に、2018年からNPO法人デジタルリテラシー向上機構(DLIS)を設立し、ネット詐欺の被害をなくすために活動中。また、お酒が趣味で2012年に原価BARを共同創業。 この著者の記事一覧はこちら