「この熱狂を外へ」、そして「この情熱を共に」選手とファンが涙で一体となった麻雀「Mリーグ」激動の7年目 業界を見続けたプロ歴39年のレジェンドも「いい涙だね」

2025年5月18日(日)11時30分 ABEMA TIMES

 プロ麻雀リーグ「Mリーグ」の2024-25シーズンは2年連続最下位と低迷していたセガサミーフェニックスが下剋上を果たし、リーグ7年目での初優勝を果たした。リーグ史上稀にみる大接戦となったファイナルシリーズ最終戦では、レギュラーシーズンMVPを獲得した醍醐大(最高位戦)が自らアガリを決めてトップ、チームポイントで逆転し、劇的な初優勝を遂げた。麻雀そのものも劇的ではあったが、この優勝に勝者、敗者、それを見守ってきたファンの多くが涙した。「この熱狂を外へ」をスローガンとするMリーグだが、激動のシーズンの結末は、選手とファンが涙で一体となる「この情熱を共に」した瞬間だった。

【映像】ファンも選手も大号泣の瞬間

 ファイナル最終戦は、直前の試合で首位に立った前年覇者・U-NEXT Pirates、初優勝を目指すセガサミーフェニックス、6年ぶり2度目の頂点を狙う赤坂ドリブンズによる実質的に三つ巴の戦いになった。試合は終盤・南3局1本場に入っても、まだどのチームがトップを取るか全く見えない状況。ここで親番だった醍醐が親の満貫をアガりトップ目に浮上すると、オーラス南4局でも一度はオリを選択するもののこの判断が絶好で、すぐにテンパイし直し、リーチを打っていたU-NEXT Pirates・仲林圭(協会)からこぼれた7筒でロンアガリ。逃げ切りトップを決めるとともに、チームポイントでもU-NEXT Piratesを抜いて逆転優勝を果たした。

 ヒーローとなった醍醐が大号泣することとなったのは試合後のことだ。第1試合で痛恨のラスを引きヒヤヒヤだった浅井堂岐(協会)、チーム唯一のオリジナルメンバー・茅森早香(最高位戦)、1年目から活躍した竹内元太(最高位戦)、そして監督として退任が決まっていた近藤誠一(最高位戦)が大喜びで次々に試合会場に入ってくると、醍醐の目にはみるみる涙が溢れた。さらには普段からクールな茅森も「麻雀プロになって25年目で初めて麻雀で泣きました」と、両手で顔を覆いながらも大粒の涙を流した。これを見た公式実況・日吉辰哉(連盟)も「醍醐が泣いています!茅森が泣いている!いつも冷静な2人の目に涙!」と声を枯らした。

 この日は閉会式が行われる会場で、パブリックビューイングも行われた。優勝決定の瞬間、セガサミーフェニックスのファンたちは一斉に立ち上がり、チームメンバー以上の盛り上がりを見せて歓喜の声をあげていたが、それと同時に醍醐や茅森と同じように涙する者も多かった。選手とファンの心が一体になった瞬間を見て、解説を務めたプロ歴39年のレジェンド・土田浩翔(最高位戦)が「いい涙だね。もらい泣きしそうになりました」と語れば、日吉も「観客の方が拍手するだけじゃなく涙する、そんな時代になりました」と伝えた。

■勝者も敗者もファンも涙

 うれし涙の裏側で、悔し涙が印象的な日でもあった。ファイナル最終日には全チーム、全選手を対象としたシーズン振り返りの囲み取材が恒例になっている。ファイナルを戦った4チームは試合会場から閉会式に直行、終了してから順番に取材を受けることになる。試合終了から2時間近くが経過した後、惜しくも3位に終わった赤坂ドリブンズの取材が始まった。

 鈴木たろう、浅見真紀(いずれも最高位戦)がそれぞれシーズンの感想を述べた後、ポストシーズンでは大苦戦した渡辺太(最高位戦)に順番が回ってきた。“ネット麻雀の神”とも呼ばれる実力者ながら、いつも穏やかな口調と笑顔で人と接することで周囲から「太」と愛される存在だ。「ポストシーズン終盤から相当苦しい結果が続いて、自分の大きいマイナスが結果として響くことになりました。(自身の)最終戦も最悪の結果になってしまって。正直(会場に)来る途中も自然と涙が出たりとか。でも最終戦…」。ここまで語ったところで急に「すいません…」と言葉に詰まると、その場で号泣し始めた。

 渡辺の人となりを知るチーム関係者、報道陣も驚くほどの号泣ぶり。それだけ内に秘めた悔しさ、申し訳なさが大きかった証しでもあり、自ら言葉を発しているうちに堰を切るようにその思いが溢れたのだろう。もう一度語り始めるまで時間を要し「こんなにチームメイトの麻雀で一喜一憂できるのは貴重な経験だったし、悔しい結果でしたがこのチームで戦えたのは本当によかったです」と続けたが、その後もしばらく涙が引かなかった。

 優勝を逃した重さが、周囲の様子を見たことで重くなったのが最終戦に出たリーダー園田賢(最高位戦)だ。試合終了後「会場を出たらチームのみんながいて(浅見)真紀が泣いていた」と明かし、囲み取材で渡辺の涙を見て「大人がこんなに涙を流すんだと思いました」と、いつもの明るい口調とはまるで違うトーンで振り返った。また閉会式では赤坂ドリブンズを応援する多くのファンを目の当たりにした。「実際に目の前にたくさんいて、中には泣いている人がいて、『頑張ったね』と言ってくれる人がいて、泣きそうになりました。同時にこの試合だけは絶対勝たなきゃダメだったなと思いました」。ファンを悔し涙ではなくうれし涙できなかったことが、園田の胸を突いた。その分、ファンのありがたみも身に沁みた。

 麻雀はもともと孤高の戦いだった。試合は個人戦で、プロ団体の戦いも今ほど多くのファンに見届けられる環境はなく、一般のファンの前で試合を披露できるようになったのも、つい最近の話だ。そこに仲間と戦う「団体戦」という要素を入れ、かつファンと接するパブリックビューイングなどのイベントを重要視したMリーグは、従来型の選手とファンとは異なる関係を築きつつある。限られた世界の熱狂をより外に伝えることをテーマにした「この熱狂を外へ」は7年の時を重ねて、外へ広げるだけでなく思いをつなぐこともできるようになった。その形の一つが選手とファンが同時に流した涙だった。
(ABEMA/麻雀チャンネルより)

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