「金正恩のタワマン、いずれぜんぶ崩壊」北朝鮮兵士が証言していた
2025年5月7日(水)4時53分 デイリーNKジャパン
北朝鮮の首都・平壌市中心部に位置するタワマン街「未来科学者通り」の53階建てマンションに、崩壊が生じている件については、デイリーNKジャパンで既報のとおりだ。
米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が先月24日、北朝鮮内部からの証言として伝えたところでは、「壁のところどころにひびが入り、外壁のタイルが剥落しており、マンションが崩れるのではないかという憂慮と不安が広がっている」という。
平壌には近年、このほかにも倉田(チャンジョン)通り、黎明(リョミョン)通りといったタワマン団地が造成され、「金正恩時代」を象徴するランドマークとなっている。
しかし慢性的な経済難に加え、核兵器開発を巡る経済制裁が強まる中で建設されたタワマンには、かねてから様々な問題点が指摘されてきた。そもそも北朝鮮の建築物は、建築資材の盗難や横流しのために手抜き工事が横行し、安全性の面で極めて重大な欠陥があるとされている。
そうした実態について、デイリーNKジャパンはかつて、2016年に脱北した元北朝鮮軍兵士から話を聞いていた。この元兵士は、未来科学者通りの建設に動員された経験があるという。
「未来科学者通りは金正恩が自ら旗を振った事業でもあり、当初は安全管理についても関係当局から厳しく指導されていました。しかし、現場に供給されているはずの資材が足りないといったことが、次第に増えました。現場の監督には、その問題を追及する権限がありません。横流しは、もっと上の方(上層部)がからんでいたのでしょう。しかも、どんどん工期が迫ってくる。セメントと砂の混合比率や鉄筋の使用量が、上層階に行くほどいい加減になっていきました。北朝鮮で地震はほとんど起きませんが、いずれ何かの拍子に、建物がぜんぶ崩壊してもおかしくありません」
平壌では2014年、これと同様の問題が原因となり、完成したばかりのマンションが崩壊。500人が犠牲になる大惨事があった。北朝鮮当局は従来、こうした事故を徹底して隠ぺいするが、このときは犠牲者の多くが朝鮮労働党中央委員会の職員家族だったこともあって、やむをえず公表している。
そのため北朝鮮国民の間では、タワマンへの入居を敬遠する雰囲気が強いとも言われる。
元兵士の証言に基づけば、タワマン群は上層階に行くほど、安全性が脆弱になっているようだ。建物の巨大な重量を支える中・下層は比較的、堅牢なのだろうか。それでも、いずれとんでもない事故が起こらないとも限らない。人命にかかわることでもあり、ここは制裁を脇に置いて、海外の技術者がタワマンの安全性を検証する道は開けないものだろうか。