関本賢太郎氏 阪神のヘルナンデスは令和のマートン 謙虚さと強引さ使い分けていた
2025年5月23日(金)5時15分 スポーツニッポン
◇セ・リーグ 阪神2−3巨人(2025年5月22日 甲子園)
【関本賢太郎 視点】試合の中では1対1の力勝負があれば、スタンドやテレビからでは見えない駆け引きというのもプロ野球にはある。1点リードで迎えた7回、及川がヘルナンデスに許した同点本塁打は、駆け引き次第では、防げた一発だったのではという気がしてならない。
巨人は先発した山崎からの打順。ここで両軍ベンチがどう動くか注目していた。先に藤川監督がデュプランティエから及川への交代を告げ、これを受けて阿部監督は右打者のヘルナンデスを打席に送った。結果論になるが阪神は簡単に7回の守りに入り、代打本塁打を浴びたという印象が残った。
先に動くか、後から動くか。選手交代でもどう動くかで展開が左右されることはある。継投と代打。その勝負に入る前に、阪神は心理的に優位に立ちたかったが、先に交代を告げたことで、その機会を逸した。
こういうことに最も神経を使っていたのが岡田前監督(現オーナー付顧問)だった。ベンチ前でキャッチボールを敢えてさせるなど、デュプランティエ続投があると巨人に思わせる仕掛けをして、左の代打を先に告げさせようとしたと思う。野球規則改正で今年から出来なくなったが、かつては実際にマウンドに行かせてから交代という策も使ったことがある。
巨人は続投でも継投でも代打ヘルナンデスで、結果が変わらなかった可能性はあるが、少なくとも「どう動くのか」「誰が出てくるのか」と相手に考えさせる。その積み重ねはセ・リーグでは大事なのだ。先にこちらの手を見せる必要はなかったと思う。
攻撃では5番・大山が上向きになっただけに、今後の戦いでは6番がポイントになる。前川が抹消され、スタメン起用された高寺も無安打。今後、注目したいのは8回に左前に来日初安打したヘルナンデス。カウントに応じて、謙虚さと強引さを使い分けることもできていた。マートンを思い出させる打撃は交流戦に向けても収穫だと感じた。(スポニチ本紙評論家)