EV初年度最終戦はテスラ同士の争いで“盟主”が脱落。伏兵の勝利で初代電動チャンピオンに/STCC第4戦

2024年9月27日(金)17時43分 AUTOSPORT web

 紆余曲折の変則カレンダーを消化し、9月20〜21日にマントープパークで迎えた新生STCCスカンジナビアン・ツーリングカー選手権の最終戦は、初年度のBEVツーリングカー・シリーズで圧倒的な強さを発揮した『テスラ・モデル3』のブリンク・モータースポーツ陣営でくっきり明暗が分かれる結末に。


 ともに年間3勝を挙げたトビアス・ブリンクとジミー・エリクソンに対し、前戦クヌットストープにて初の電動STCC優勝を果たし、静かにタイトル争いに加わったミカエル・カールソンが大逆転で初代チャンピオンを獲得。一方、チーム運営も担うブリンクはレース1で遭遇したアクシデントにより車両修復で時間との戦いを強いられ、チャンスを逸する展開となってしまった。


 ここまで圧倒的な強さと安定感を誇ってきたブリンクに対し、同じ3勝ながらタイトル候補のなかで唯一2回のリタイアを喫しているエリクソンと、さらに遅れて王座争いの輪に加わったカールソンという3台に対し、シリーズの雄であるロバート・ダールグレン(PWRクプラ・スウェーデン/クプラ・ボーン)がいかに食い下がるか。週末はこの4名の“初代EVチャンピオン”の行方に注目が集まった。


 このSTCCでは2016年以来となるマントープパークのショート版レイアウトで始まった週末は、やはりテスラ勢が主導権を握って進み、FP1ではブリンクがエリクソンに対し0.001秒差で先行。続くFP2では逆襲のエリクソンが歴代最速のトラックレコードを樹立して首位を奪い返す。


 勢いそのまま、迎えた予選でもふたりの攻防が続き、エリクソンはシュートアウトラップでミスを犯し、ターン1でブレーキングが遅れ5番手に留まったものの、Q2で力強く立ち直りブリンクに0.226秒差をつけてのポールを獲得。一方のブリンクも、最初の予選セッションでカールソンを0.125秒差で破り、レース1に向けたポールポジションを射止めた。


 ブリンクとカールソンはレース1最初の数コーナーで並走し、カールソンはターン2で接触しながらなんとかリードを奪っていく。この攻防で2番手にはアクセル・ベングトソン(PWRクプラ・スウェーデン/クプラ・ボーン)が割って入り、ブリンクは3番手からの巻き返しを強いられる。


 しかしブリンクにとって事態は悪化の一途をたどり、ターン3で背後のカッレ・バーグマン(エクシオン・レーシング/BMW i4)から引っ掛けられるようにプッシングを受け、スピンを喫して激しくバリアに衝突。自身はこの事故で無傷だったが、大破したモデル3の助手席側から這い出なければならなかった。


 このアクシデントでセーフティカー(SC)が出動し、リスタートの数周後には最速ラップを記録したエリクソンがターン3でダールグレンを捉え3番手へ。これで元王者は4位でフィニッシュとなり、2024年タイトル獲得のわずかなチャンスを失うことに。


 その前方では背後のベングトソンを抑え切ったカールソンが勝利を挙げ、この時点で選手権首位を奪う結果となった。

シリーズの雄であるロバート・ダールグレン(PWRクプラ・スウェーデン/クプラ・ボーン/上)vsテスラ陣営の構図に
選手権首位で挑んだトビアス・ブリンク(テスラ・モデル3)は、レース1のオープニングで窮地に陥る
自身はこの事故で無傷だったが、大破したモデル3の助手席側から這い出なければならなかった


■ブリンクはクラッシュやアクシデント絡みで失意のランク3位


 ひどく損傷したテスラを、続くレース2までに修復しようとクルーが時間との戦いを繰り広げるなか、懸命の作業を見つめるブリンクは「大丈夫だと思う。クルマは安全だった。でも今はレース2に出場するために時間との戦いが最優先だ」と窮地に陥った現状を冷静に振り返った。


「後ろからぶつけられたことで、その後は『お休み、ねんねしな』さ。このクルマでは後方が何も見えないから、どうしてそうなったのか。映像を見返さない限りまったく分からないね」とブリンク。


 なんとか修復の間に合ったテスラがフロントロウに並び、迎えた現地午後14時半の今季最終ヒート。ポール発進を決めたエリクソンがブリンクに先んじてターン1のホールショットを決め、5番手発進だったカールソンも、この加速勝負で3番手にまで躍進してターン1のポジションを奪う。


 続くターン2では前戦の接触でペナルティ裁定を受けたバーグマンが、僚友のマンツ・タリン(BMW i4)と絡んでサスペンションが壊れ、即リタイアに。オープニングラップの終了前にはさらなるドラマが展開し、修復なったテスラで懸命に戦う意思を見せたブリンクが、最終コーナーに向かう途中でブレーキングが遅れ、ラインがはらんだところでベングトソンのクプラと絡みスピンオフ。これでベングトソンはホイールが破損してリタイアとなり、ブリンクのテスラは最後尾まで下がり実質的に初代EV王者の夢はここで潰えてしまう。


 これでSCが去った後は、首位エリクソンがカールソンを従えトップチェッカーを受け、3位には執念の猛追撃を披露した“4冠”王者ダールグレンの続くトップ3に。この結果、2位カールソンがエリクソンに7ポイント差をつけ、初のSTCCタイトルを獲得した。


「信じられない気分だ! シーズン中からずっと速かったし、チームは素晴らしい仕事をした。彼らとこのタイトルを分かち合えるのは素晴らしいことだ」と望外の喜びであることを明かした新王者カールソン。


「最後のレースは実はかなり穏やかで、楽しみのためにプッシュ・トゥ・パスを使う機会さえあった。2024年のSTCCチャンピオンだと言えるなんて、信じられない気分だよ」


 一方、チームメイトのブリンクは最終戦に選手権首位で臨みながら、クラッシュやアクシデント絡みの2戦を経て失意のランク3位でシーズンを終えた。


「ミッケ(カールソン)の活躍にはとても満足しているが、もちろん自分自身にはがっかりしている」と続けたブリンク。


「シーズン最終戦に臨んだとき、タイトルはほぼ確実だと思っていた。しかしレース1でクラッシュしてしまい、最後のレースに向けマシンを整備するため猛烈に努力した。残念ながらグリップが足りず、タイヤ交換も必要になり勝利を狙うことはできなかったよ」

これでミカエル・カールソン(テスラ・モデル3)がレース1を制し、選手権首位に躍り出る
続くレース2も、痛々しい修復後のブリンクがふたたびの悲運に巻き込まれ、その後方でも最終戦らしいアクシデントが発生する
「自分が2024年のSTCCチャンピオンだと言えるなんて、信じられない気分だよ」と新王者のカールソン(中央)


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