二所ノ関親方 大の里Vを祝福 「簡単」に届いた最高位...も、横綱を張るのは簡単ではない
2025年5月24日(土)4時30分 スポーツニッポン
◇大相撲夏場所13日目(2025年5月23日 東京・両国国技館)
部屋を持って4年。理念として「横綱から横綱を」を掲げてやってきました。それが現実になろうとしています。師匠としてもうれしい限りです。
今場所の大の里は立ち合いの集中力が素晴らしく、自分の相撲を取ることができました。琴桜との大一番もそれができていたし、心・技・体が少しずつ充実してきた印象を受けました。加えて課題だった序盤戦をクリアして流れをつくれたことが大きかった。常々「横綱は簡単になれるものではないぞ」と大関には言い聞かせていましたが、簡単になってしまいました(笑い)。初土俵から所要13場所、新入幕から9場所。私は73場所(歴代最スロー)かかりましたから大したものです。
場所前は不安もありました。4月末に巡業から帰ってきた時の体つきは寂しさも感じました。加えて体調不良などで5日間も相撲を取ることができず、場所後の昇進は無理だろうと半ば諦めました。しかし、5日間ほどの短期集中講座で万全の態勢に仕上げてきました。場所直前に稽古で胸を合わせた時、立ち合いの圧力、体の寄せ方など別人のように良くなっていた。最近の中では一番の仕上がりだと確信しました。
初めて会った時から素質の高さを感じ、温めておいた「大の里」のしこ名を与えました。何といっても体格に恵まれているのが魅力的でした。現役で1メートル90を超える力士はそういないし元気がいいというかガッツがあった。私も足が長くて背が高い力士でしたので、しっかり自分のやってきたことを伝えていけば角界を背負える存在になれると信じていました。
学生相撲で輝かしい実績を残したとはいえプロは全くの別世界。入門時から「大相撲仕様」にしていこうというテーマで基礎から叩き込みました。
なかなか実にならないこともありましたが、ずっとやり続け、二人三脚で取り組んできたことがようやく身になってきました。積み上げてきたもので少しずつ花が咲き始めています。
まだ場所は終わったわけではありません。誰もが昇進文句なしと言ってもらうためにも内容のある相撲で締めてほしい。横綱を張ることは、なる以上に簡単なものではありません。これからも今以上に口うるさく指導していくつもりです。(元横綱・稀勢の里)
▽師弟横綱の系譜 初代若乃花の弟子である隆の里が独立して稀勢の里を育て、稀勢の里も二所ノ関部屋を復活させて大の里を育てた。師弟横綱が4代続くのは過去に常陸山→栃木山→栃錦→栃ノ海、常ノ花→千代の山→北の富士→千代の富士、北勝海の例がある。